台所に綺麗にたたんでおいてあった服は、貴族の上流階級のお嬢様が着ているようなぴらぴらしたものではなく、
落ち着いた色の…いわゆる、ちょっと良い質の余所行き服だった。
「…なんだ、案外いい趣味してるじゃないの」
これはちょっと売るのが勿体ないかもしれない。
なんて思っていたらコンコン、と扉を叩く音が聞こえた。
「お妙ちゃん、神楽ちゃん!」
「ふふ、丁度良いくらい…だったかしら?」
「うん、ナイスタイミング!」
がちゃりと扉をあけると、いつもより少し良い服を着たお妙ちゃんと神楽ちゃんがいた。
「!どーしたアルその服!すごく可愛いヨ!」
「うーん、なんか親切なのかよくわかんない魔法使いさんがくれたんだよー」
ぴょんぴょんと私の周りを跳ねる神楽ちゃんは私以上に可愛い。
ふわふわのスカートがよく似合っている。
「ほんと。凄く可愛いわ」
貴族のお嬢様顔負けの素敵な微笑を浮かべるお妙ちゃん。
お妙ちゃんの服も、シックな感じで落ち着いた大人っぽいものでまとまっている。さすが、だなぁ。
「そんなことないって…私よりも、2人の方が物凄く可愛いし綺麗だよ!」
綺麗な服を着たって、私たちは私達。
いつものように会話をしながらお城へ向かう。
…今度魔法使いさん…総悟さんに会ったら、ちゃんとお礼してあげなきゃなぁ。
空の色は夕焼けに変わっていた。
今日は時間がたつのが早いな、と、私は感じていた。
「だーりーぃー」
「うるさいんですけど、銀さん。あ、ここからお入りくださーい」
「そもそも今日ってアレだろ、王子の…こんにゃく決め?」
「婚約者です。何ですかこんにゃく決めって」
「何で王子の婚約者決めなきゃなんねーんだよ。俺の方が決めたいわ」
「知りませんよそんなこと!っていうか仕事!…あ、入口こちらでーす!」
「新八ィ、お前…よく真面目に働けるなァ」
「しょうがないじゃないですか。仕事なんですし」
「そうよ新ちゃん。しっかり稼いでくれないと…どうなるかわかってるわよね?」
「もちろんです!!……って姉上ェエエエ!?何でここに!?っていうか何処から出てきたんですか!?」
正面道路ではなく、横の草むらから出てきた私達。
もといいきなり会話に乱入したお妙ちゃんに驚く新八くん。…そりゃ驚くわね。
「そこの草むらからヨ。猫おっかけてたらアララーってやつネ」
「いやサッパリわかんないから!!」
実際ここに来る途中に猫がいて、それを神楽ちゃんが追いかけて、神楽ちゃんを私とお妙ちゃんが追いかけて。
…それで草むらから登場しちゃったんだけどね。
「っていうかさん!お久しぶりですー」
「久しぶり、新八くん。相変わらず真面目に働いてるねー。兄さんたちに見習わせたいわ」
うんうん、と頷いていると横から声を掛けられる。
「ここらへんじゃ見かけねぇ子だなー。俺は坂田銀時。あんた、名前は?」
「え、…ですけど。、」
いつの間にか私の横に移動していた…門番というか受付の人。
普通ならこんなにさらっと名前なんて教えないのに。
「そう、ちゃんねー。うんうん、いい名前だな」
にこっ、というよりもにまっ、て感じに笑う銀時さん。
「んで。今日は王子の婚約者決めなんだってよ。こんな城の王子やめとけやめとけ」
「別に私が目指してるの王子じゃなくて、料理とかその他持ち帰れそうなものだし!」
一般人な私が一国の王子とそういう関係になれるはずがないし。
別になりたくもないし。…それより今は生活費だもの!
「…ちゃん強ぇな。ちょーっと気に入っちゃったかも。いっそ、俺と…」
「うち貧乏なんでーこんなとこでバイトしてる人は勘弁ですね!」
ピシッ、と笑顔で言い切る。
「酷ェなおい!…まぁ確かに金持ちではねぇけど…それなりには…」
「それなりには、じゃないアル!に色目使ってんじゃねぇヨ!」
「そうよね。それなりに金持ってないわよね」
神楽ちゃんとお妙ちゃんによる追加攻撃により、ガガーンと効果音を立てそうな勢いでショックを受ける銀時さん。
その後銀時さんは新八くんに引っ張られて、仕事へと戻っていった。
「んじゃ行こっか、2人とも」
「そうね」
「ごちそう目指すアル!」
そうして、やっと城内へと足を踏み出す。
「とその連れ!楽しんでこいよー!」
「はいはーい!」
「私ら省略してんじゃないヨこの天パ!」
「天パなめんじゃねーぞコラァァ!!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ間も、にまにまと笑って、いいモン収穫できるといいな、とか叫んでいる。
…不思議な人だなぁ。会ったばっかりなのに、すぐ打ち解けられてしまう…そんな人。
こんなところもう来ないだろうから、きっと会わないんだろうな。
そう思うと、少しだけ寂しく感じてしまった。
…とりあえず今日の夕飯を収穫しなきゃね!
城内突入!門番は変な人
(っていうか今更だけど留守番任されたのに、ここで兄さんたちと出くわしたら危ないかも。)
あとがき
銀さん登場。さて、王子は誰でしょう。
っていうか誰オチになるのか。それは……お楽しみに。
2008/1/9