空を見上げれば、綺麗な青空が広がっていた。
下を見れば、きれいな花が咲いていた。
ここは、私のお気に入りの丘。
私の住んでいる小さな村と、戦場の中間地点。
「…そろそろ帰らなきゃ」
丘から村までの道のりをゆっくりと歩く。
ひゅう、と冷たい風が吹く。
…今日の夕飯は温かいものにしようかな。
村に着くと、友達と、そのお母さんがいた。
友達の子は私に気付いて手を振る。そのせいで、お母さんも私に気がついたみたいで。
私はにこっ、と笑って手を振る。
お母さんはぎこちなく笑顔を向けて、友達の子はお母さんの服のすそを掴んで手を振る。
そんな軽い挨拶を済ませて家の戸をあける。
「…ただいま」
誰もいない家に、私の声だけが虚しく響いた。
日も傾いて、夕方になった頃、私は台所で夕飯の準備をしていた。
しばらくすると玄関の方で戸をあける音がした。
「…!」
ぱたぱたと軽い音を立てて廊下を走る。
「おかえりっ、お兄ちゃん」
「あぁ、ただいま」
所々に赤黒く染まった包帯を巻いて、にっこりと笑って言うのは、私のたった一人の家族。
高杉晋助、お兄ちゃん。
お兄ちゃんは攘夷志士として戦場で天人と戦っている。
戦の間は、向こうにある仮屋で同じ仲間の人と生活してるみたいで、家には帰ってこない。
その間は私は家に1人だった。
こうやって、戦の間に帰ってくるお兄ちゃんをずっと待ちながら。
「、腹へった」
「その前に怪我の手当てしなきゃ駄目!」
お兄ちゃんの腕に巻いてある包帯は、どれも適当に巻いたって感じのものばかり。
むしろ所々傷が見えるんだけど!
「もー、これ自分で巻いたの?」
「戦場にこういうのできるような奴ァいねーからな」
「じゃあ私行ってあげ「駄目だ」
言い終わる前に即効で切り捨てられる。
…実は前にも聞いたんだよね。
1人で家にいるよりも、そっちの仮屋の方が、賑やかだろうから行ってみたいのに。
「なんでよー」
「ばか、あんな男だらけのところへ行かせられるか。…特にあいつらには絶対会わせたくねぇ…!」
腕を私に預けつつぶつぶつと呟く。
私も私で文句を呟きながら包帯を丁寧に巻いていく。
小傷に絆創膏を貼って、救急箱のふたを閉じる。
「はいっ、終わり!じゃあ夕飯温め直すから、ちょっと待ってね」
「ああ。ありがとな」
救急箱を片付けてから台所へ戻る。
そして作ってあった料理を温めなおして、机に並べる。
あぁ、久しぶりだな、こうやってお兄ちゃんと夕飯食べるの。
「ね、お兄ちゃん。今度はいつまでいられるの?」
「近いうちにでけェ戦があるだろうから…また少ししかいられねーな…」
「そっか…。でも、それまではこっちに居られるんだよね?」
「あぁ」
もぐもぐ、と私の作った料理を食べながら喋る。
「あぁ、それでだが…昼間は向こうに行かなきゃならねーんだ」
「…えーっと…鍛錬?」
「そういうこった」
みるみるうちにお皿の上のおかずが無くなっていく。
いつも1人で食べていた時よりも、早く片付いていく。
「そっか、頑張ってね」
「ああ」
夕飯も食べ終えて、お風呂に入って、布団を敷いて。
いつもは1人分だけど、今日からは2人分。
やることの量は増えたけれど、どこか嬉しく感じていた。
「」
「ん?」
やることを済ませて、夜空を見ていたら後ろから名前を呼ばれた。
「今日からは、俺が居るから。…昼間はしょうがねーけど」
「うん。…頑張ってね、お兄ちゃん」
「お前が心配しなくていいくらい、強くなってやるよ」
「うんっ!」
にっこりと笑って、お兄ちゃんは私の髪を撫でる。
久しぶりな感覚に嬉しさを感じながら、布団に入った。
つかの間の休息
(明日の朝ごはんも気合入れなきゃ。お昼は…いつもの丘で食べようかなぁ)
あとがき
シリアスになりそうな雰囲気がものすごいですね!でも管理人楽しんでます!(おい
苦手な人、または一話を読んで「ぎゃああ無理!」って感じた方はブラウザ閉じてくださいね。
あと補足。この頃まだ高杉さん両目見えてます。
2008/4/4