今日は、曇り。

朝だというのにもかかわらず、空は暗く曇っていた。

 

 

 

 

「…気持ちはかわらねーのか」

「うん」

「護身用か…。お前が刀なんざ握らなくても、俺が護ってやるぞ?」

「でも、ずっと一緒にいることはできないでしょ」

「いやがいいっていうなら」

「いつも一緒は無理だよ。…ね?」

「……そーだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

ひゅうう、と生暖かい風が吹く。

明日は雨になるかもしれない。早ければ今日の午後からでも降り出しそうな天気。

 

 

そんな中、私とお兄ちゃんは家の裏にある、空き地に立っていた。

片手に、木刀を持って。

 

 

 

 

「お願いしますっ!」

「しょうがねぇな…まず構え方からいくぞ」

「はいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもは丘にいるこの時間。

草の揺れる音がしているあの丘にいる。一瞬の平和を感じられるあの丘に。

 

今日はカンカンッと木刀のぶつかり合う音と、2人分の声だけが響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はぁ、はぁっ…」

「大丈夫か、?」

体力的にもかなり差があるお陰で、私はすぐに息切れをしていた。

 

 

「だっ…大丈夫!」

「辛いなら休めばいい。まだ日にちはある」

「大丈夫だってば、ほら、ね!」

ビュッと風の音が聞こえるほどに木刀を前へと振り下ろす。

 

 

 

「…ったく…しょうがねェな。構えが少し間違ってるぞ」

「え、あ、あれ…こうだっけ?」

「そう、それでしっかり前を見ろ」

 

 

そっと私の手にお兄ちゃんの手が重なる。

いつの間にかたくましくなっちゃってさ。

私だけおいてけぼりかコノヤローなんて思いながら、練習をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かすかに昇っていた日が落ちて、空が夜の闇につつまれる頃になって、私たちは家へ向かって歩いていた。

 

「いたた…うう、明日筋肉痛になってたらどうしよう」

「その時は休め。痛いなら無理するんじゃねーよ」

私の分の木刀や荷物を全部持って歩くお兄ちゃんは心配そうに私の顔を覗き込む。

 

 

「いや、でも、頑張る」

「そこは頑張らなくていいんだ」

「頑張る!」

 

私も、なかなかにいじっぱりかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「だが…さすがは俺の妹だな。呑み込みが早い」

「ほんとっ!?」

「ああ」

 

教えてもらってる間はほとんど「違う!」とか「そうじゃねぇ」とかばっかり言われてたけど…。

…よかった。やっぱり頑張らなきゃ、明日も。

 

 

 

 

 

 

 

「明日頑張る前に、には夕飯の準備を頑張ってもらわねぇとな」

「もっちろん!教えてくれたお礼にお兄ちゃんの好きなもの作るからね!」

「楽しみにしてる」

お兄ちゃんはくくっ、と喉で笑う。

 

あ、なんか…笑ってるの久しぶりに見るかもしれない。

 

 

 

 

ずっと、こうやって平和な日が続けばいいのに、な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鍛錬開始は曇り空の中で



(私だって、護りたいんだよ。たったひとりの家族のお兄ちゃんを護るのは私の役割でしょう)


 

 

 

 

 

 

 

あとがき

分類がわからなくなってきました。

あと、細かいことは追求しないようにしてくださいませ…!(ぁ

2008/4/27