空は綺麗に晴れていた。
大地にはきれいな花が咲いていた。
あの日と、変わらずに。
戦はもう終わるだろう…な…。
そんなことを頭の片隅で思いながら、俺は重い体を引きずるようにして歩いていた。
足元に咲く花は、ところどころ赤色に染まっていった。
空はこんなにも綺麗なのに、音が聞こえない。刀の音も、銃声も。
これからどうしよう、とか考えても答えは一向に出そうに無い。
あぁ、もう。私は一人じゃなにもできない子だったの?違う、でしょう。
…寂しいなんて、もう慣れた、でしょう。
膝を立てて、頭を埋めて目を閉じる。
真っ暗な世界の中、ぽつりと掠れた声が聞こえた。
「………!?」
「え…?」
聞き覚えのある声に、ふと顔を上げる。
「銀、ちゃん…なんでこんなところに…?」
「あー…わかんねーけど、なんか適当に歩いてたら、着いちまってな」
ばりばりと頭を掻きながらへらりと笑う銀ちゃんは、あの時と同じだった。
ただ、違うのは。
「怪我してる、じゃん。歩いてる場合じゃ、ないでしょ、手当て、しなきゃ」
赤く染まった腕に手を伸ばすと、銀ちゃんは、すっと私の手を避ける。
「触らねー方がいいぜ。お前は俺と違って汚れてねーからなぁ」
へらり、と笑う笑顔は、少しだけ寂しそうに見えた。
「…そんなことない。銀ちゃんは、汚れてなんかないよ」
だって、あなたは優しい人だもの。
「誰かを守るために、戦って怪我しちゃったんでしょ。なら、私は銀ちゃんが汚れてるなんて思わない」
そういった瞬間、私は銀ちゃんにきつく抱きしめられていた。
「…お前、ほんっと変わってるよ。……ありがと、な」
「…悪ィ。ほんっとすいませんでしたー!!!」
「や、もういいって。私もここまで来るうちに汚れてたわけだし!」
地面に頭がつきそうな勢いで私の着物に血がべっとりとついてしまったことを謝りだす銀ちゃん。
「あー、くそっ、なんかお前まで戦争に出てたみてーになっちまった…!」
がしがしと頭をかきながら、慌てる銀ちゃん。
ああ、なんだかこの人を見てると、私も笑顔になってくる。
私が変わった子なら、銀ちゃんはもっともっと、変わった人だよ。
「…ね、銀ちゃん。この辺りって詳しい?」
「あ?まぁ…それなりに」
「じゃあ、どこか行こうよ。ずっとここにいるわけにもいかなし」
「そーだな。…あー、じゃあさ」
私の前に立って、すっと手を差し出して言う。
「、俺と一緒に江戸まで行きませんか。んで、身寄り無い者同士、一緒に暮らしませんか」
少しだけはにかんで、そう言う銀ちゃんは、ちょっとだけかっこよく見えた。
「…はいっ、是非、一緒にいさせてください!」
重ねた手は、ぎゅっと掴まれる。
そしてぐいっと引っ張られて立ち上がると同時に、ふわりと風が吹き、花びらが舞った。
「おっ、旅立ちにいい感じな風じゃねーか」
「うん。空も、すごく綺麗、だよ」
空を見上げる。銀ちゃんと繋いだ手の反対の手にもった刀が、小さく音を立てた。
「ん?お前、その刀なに?」
「これ?これはねー、私の大事なお守り!」
綺麗な青空の下、ちょっと離れるのが勿体ないな、なんて笑いながら、私たちは歩き出す。
泥だらけの格好で、最高の笑顔を浮かべて。
花月の丘、幸せの青空
(あなたがいてくれたら、お前がいたなら、きっと幸せになれるよ、だから、傍にいてくれますか)
あとがき
いいい一応完結…!勢いのみで書き進めてきた小説なので、なんとも終わり方が微妙です、すみません!
とりあえず平和ほのぼのエンドにたどり着きました。うん、とにかく、2万ヒットありがとうございました!!
ここまでお付き合いしてくださった方、本当にありがとうございました!
2008/8/21