日が沈みかけてきた夕方頃。
かぶき町に住むに偶然スーパーで出会った。出会ったっつーか一方的に発見したんだけど。
この偶然を逃すわけにはいかないと思い、俺は一緒にいた新八に買い物袋を押しつけて先に帰るように言っておいた。
そして現在、の買い物袋を手に帰り道の途中である。
「びっくりしたよー。銀ちゃんってば、野菜売り場からいきなり出てくるんだもん」
「その言い方だとどこぞのゴリラみたいだからやめて」
あんなストーカーと一緒にされたらたまったもんじゃねえ。
これはただの偶然だ。多少狙った感はあれど、偶然だ。ストーカーじゃあねえ。
「ごめんね、荷物重いでしょ。万事屋だって反対方向なのに……」
「いーのいーの。これくらい重くねーし、どうせ今日はうち誰もいねーし」
いるけど!!!神楽と新八がいるけど!!!
お前に比べたらあんなもん放っておいても2,3日は平気だから!!!
「それよか、本当にいいのか?夕飯、ごちそうになっちまって」
「いいよ。その、あんまり料理の腕は期待しないでね。口に合わなかったら残していいから」
「そんな心配してねぇよ。美味いにきまってる」
「うう、緊張するなあ……」
そう。家まで送ってやるよと言ったら、お礼にご飯作るけど食べていく?と言われたので即返事をかえした。
食べてくに決まってんだろ、ついに、手料理が食べられる日が来たんだぞ。
断る理由なんて何一つねえっつの!
あー、ちくしょう可愛いなコイツ。
なんだっけ、いつからこんな可愛いって思うようになったんだっけ。あれは確か……。
「あ、土方さん」
おわァァァ幸せの回想に入ろうとしたところでまさかの邪魔者が出やがった!!!
「なんだ、…と、なんでこんなとこに万事屋がいるんだ」
「あぁん?いちゃ悪ィかコノヤロー。テメーこそなんでこんなとこにいるんだ」
「目ェ腐ってんのか。そこ屯所だろうが」
「あ」
そういやそうだった。
の家に行くには、どうあがいても真選組屯所前を通過しないといけないんだった。
「今日もお勤めお疲れ様です」
へこ、とお辞儀をしてふわりと笑う。
「……おう」
「まだこれからお仕事ですか?」
「や、一旦休憩だ。また夜には仕事に戻る」
「大変ですね……。あんまり無理しないでくださいね」
え?何この空気。っつーかちょっと待った待った待った。
あのニコチン野郎、なんでそんなちょっと照れてんの?何言葉詰まらせてんの?
まさかコイツ……に惚れてる?
嘘だろ?こんなマヨネーズしか見えてねぇような奴が?ちょ、ま、負けるかコラァァァァァ!!
「さっきから煩せェんだよ万事屋ァァァ!!!」
「何がだよ、一言もしゃべってねーだろうが!」
「存在が煩せェんだよ、いつまでガン飛ばしてんだテメェ!」
「ちょっと今の聞いた?警察のくせに理不尽言ってくるんですけどぉー」
「でも確かに今の銀ちゃん、顔怖いよ」
「ヒッ」
息が止まるかと思った。
やべーやべー、落ちつけ俺。
こんな奴に敵対心持ってる場合じゃねーし、そもそも俺の方が断然付き合い長ェし。
「あ、それで土方さんもまたうちでご飯食べて行きますか?」
「……も?」
「また?」
お互い疑問符が頭に浮かんだ。
「も、ってことは……」
ちらりと土方が俺を見る。
「あ、そうだった。今日は銀ちゃんもいるんです。二人共知り合いみたいだから一緒にどうかなって」
「ちょっと待った、。また、ってどういうことだ」
「土方さん、たまにうちでご飯食べて行くんだよ。基本私が呼びこんじゃってるんだけど」
オアアアアアアア前言撤回!!!!!!
ここここのヤロー、俺より先にの手料理食ってやがったァァァァ!!!
「……いや、今日はやめておく」
「そうしろ!土方くんはお仕事に戻りなさい!」
「今日はいつにも増してうっとおしいな!」
ぐいぐいとと土方の間に割って入って距離をとらせる。
「ほらほら行くぞ!」
「え、あ、銀ちゃん」
の背を押しながら土方に背を向けた所で、俺の肩がメキッと掴まれた。
いやおかしくね?今の力加減おかしくね?
「万事屋」
「なんだよ」
地を這うような低い声で呼ばれたので、同じくらい低い声で返してやった。
「襲ったら殺す」
「思考が飛躍しすぎだろ!!!」
「テメーならやりかねない気配を感じたんだよ!」
ふざけんな、どんだけ大事に考えてると思ってんだ!
向き合っていた土方から視線を逸らし、ちらっと後ろに立つを見る。
は何の話か察していないんだろう、きょとんとした顔で俺と土方を交互に見ていた。
「や……うん、がんばります」
「自信ねぇんじゃねーかテメェェェェ!!!」
「うるせーな頑張るっつってんだろ!」
「そんな不確かなもん信用できるか!」
「テメーに信じてもらう必要なんざねェよ!」
ばっとを振り返ると、突然にことに驚いたのか少し目を丸くしていた。ちくしょう可愛い!
「!」
「は、はい!」
「俺を信じてくれるな!?」
「え?は……?」
完全にきょとんとしている。
まあ確かにそうだろう。こんな下心合戦を察されていたら困る。
それでもは、少し戸惑いながらも、こくりと頷いてくれた。
「よっしゃほら見ろ!俺はが信じてくれりゃそれでいいんだよ!」
「完全にこの場の空気を読んだ了承だったじゃねーか!」
チッと舌打ちをひとつして、土方くんはの名を呼ぶ。
「万事屋が帰る時に、俺の携帯に電話いれろ」
「え?」
「最近は物騒だからな。丁度見回りルートだから、こんなのでも送ってやるのが警察の義務だ」
「超いらねえよ!!余計なお世話にも程があんだろ!」
「でも銀ちゃん、確かに帰る頃には暗くなってるから危ないよ」
「うぐ……」
あーもーそんな心配そうな目で見られたら何も言えないだろうが!
「じゃあ、また後でな。万事屋」
念を押すように言って、土方は町の方へ歩いて行った。
「土方さん、仕事熱心だね。すごいなあ」
「あれはただのお節介だ」
つーか完全に邪魔だ。邪魔者だ。沖田くんに言ってさっさと抹殺してもらおうか。
「ほら、さっさと行こうぜ」
「あ……」
空いている方の手での手を繋いで歩き出す。
少しびくっと手が揺れたことに、ふっと視線をおとす。
繋いだの手が少し躊躇いがちに俺の手を握り返し、おとした視線の先に顔を赤くしたがいた。
ありがとう偶然。ありがとう神様。
もうしばらくこのまま歩かせてください!!!!!
意図的な偶然
(奴の携帯番号を知っている理由については後でみっちり問いただすことは決定事項だ。)
あとがき
「銀時・土方とりあいギャグ甘夢」リクエストでした。ありがとうございました。
御覧の通り、取り合い話を書くのが非常に不慣れでございます……!
水面下というか心の中で一人燃えたぎっている銀さんと冷静な土方さんのやりとり話になりました。
甘さがどっか飛んで行った気がしますが、楽しんでいただけたらと思います。リクエストありがとうございました!
2017/09/03