今日は休日。もちろん学校もお休み。
昼中まで、何をするわけでもなくパジャマのままでベッドに寝頃がっていた。
読み返した雑誌に手を伸ばそうか、それとも音楽プレーヤーでも聞こうか。
悩んで手を伸ばした先には、携帯電話。
パカリ、と携帯を開いてメールを打つ。
『おはよう、今、なにしてる?』
たったそれだけのメール文に、自分が暇であることが分かる気がして苦笑いしながら送信ボタンを押す。
あて先は、小太郎。
5分と立たないうちに、マナーモードになっていた携帯が振動する。
『お前今何時だと思ってるんだ、もう昼だぞ。
だから今はエリザベスと蕎麦を食べていたところだ。
もちゃんと昼は食べなければいかんぞ』
…お前はあたしのお母さんか。
そうつっこみたくなる最後の一文に頬が緩む。
『はいはい、ちゃんと食べますよー。
小太郎こそ毎日毎日蕎麦ばっかり食べてると栄養偏るよ』
部屋にカチカチとボタンを押す音と、時計の秒針の音だけが響く。
しばらくして、また携帯が振動する。
『フッ、バカにするんじゃないぞ。
ちゃんと毎日変えている。昨日は茶蕎麦、今日はかきあげ蕎麦だ』
いや、それ変わってないし。
それに何でメールなのに笑い声まで入れてんの。
ふふ、と口に出して笑いながらまたボタンを押す。
『そのままでいくと明日は天ぷら蕎麦?』
なんてメールをしてるんだろう、なんて思いながら送信ボタンを押す。
次に返ってくるメールが待ちきれなくて、携帯を握ったまま寝転がる。
そして、振動すると同時に携帯を開く。
『ふむ、それもいいな。よし明日は天ぷら蕎麦にしよう。
ところで、お前の昼は何なんだ?』
ああ、どうしよう。
時計の針はもうすぐ1時。
お腹はすいているものの、まだお昼ご飯は食べていない。
『オムライスだよ。蕎麦じゃなくて残念でしたー』
適当に頭にうかんだものを打って送る。
ごめんね、と心の中で謝りながら。
しばらく待って、パカリと携帯を開く。
未だ返信のメールは届いていない。
どうしたのかな、なんて思いながらパカパカと携帯を開いたり閉じたりを繰り返す。
そうしているうちに、20分ほど経っていた。
昼寝でもしちゃったかな。そう思うも、携帯は手放さない。
外からチリン、と自転車のベルの音が聞こえた。
メールは、まだ来ない。
チリリン、チリリン、とベルの音が響く。
音の大きさからして、家の近くからだ。
なんなの、こんな昼間に。
そう思いながらゆっくりと体を起こして、カーテンを開ける。
「……え…」
その時見えた人物に、ガラリと窓を開ける。
「メールしてたら、の声が聞きたくなった」
「…なら電話すればいいのに」
「顔も見たくてな。それに、どうせ昼も食べてないんだろう」
ガサリとカゴからコンビニの袋を持ち上げる。
「今から作るのでは時間がかかるからな。今日はこれで我慢しておけ」
ほんとに、あんたはあたしのお母さんか。
自分がパジャマのままであることも忘れて、玄関へを向かう。
靴もちゃんと履かずに踏みつけるようにして、バンッと扉を開けて、言う。
「小太郎、会いたかった!お腹へった!」
「まったく。手がかかるなは」
ぎゅうと小太郎に抱きついたあたしの頭をポンポンと撫でて笑う。
「…まだパジャマだったのか」
「あ、うわ、忘れてた!!ま、待って着替えてくるから!」
「いや…可愛いからそのままでもいいぞ」
「………やっぱり着替えてくる!!!」
メールを待つよりも
(「そういえば洗い物したの?」「エリザベスが『やっておいてやるから、早く彼女の所へ行け』と言ってくれたんだ」)
あとがき
ヅラは甘いよりも、ほのぼのが似合う気がします。
もしくは、さらりと真顔で可愛いとか言ってのけそうです。そんなイメージ。
2009/03/15