「ということで、叩いてかぶってジャンケンポン勝負を始めまーす」

「勝敗は両陣営代表、3人による勝負で決まります」

「審判は公平に両陣営から新八君と俺、山崎が務めさせてもらいます」

「そして司会進行は私、が行う流れになっちゃいましたよ面倒くさっ」

さん初っ端からそんなこと言っちゃだめェェ!」

 

 

 

 

第2曲 勝負はいつでも全力投球

 

 

 

 

綺麗な桜の木の下、急遽準備されたピコピコハンマーとヘルメット。

ちなみに勝者には、ここでお花見をする権利とお妙さんを得るそうです。

 

「ってそれじゃ僕ら勝ってもプラマイゼロでしょーが!」

「確かに」

新八くんの言葉に頷くと、山崎さんは少し考えるようにして、ぽんと手を打った。

 

 

「じゃあ、勝った方の頼みごと1つをさんが叶えるってことで」

待て待て待て待て。意味が分からない!!」

なんで、今、私の名前が出てきた!?

 

「でも、他にないですから」

「別に私が叶える必要はないでしょ。ていうか私にできることなんてないよ」

願いを叶えるって、私はどこぞのランプの精か。

 

 

「大丈夫だ

私が山崎さんに抗議の声を上げていると、後ろから銀さんにそう呼びかけられた。

 

「俺らが勝つんだから、心配しなくていーぜ」

「…銀さん…」

にかっと笑う銀さんに、少しほっとしながら私は微笑む。

 

 

「絶対勝てよ」

「…はい」

 

 

 

 

 

ということで。微妙にまだ私たちのほうが勝利品に不利がある気がするけど…まあ、いいや。

勝てばいい話だからね!勝てば!

 

「では第一回戦!近藤さんVSお妙さん!」

ピッ、と右手を上に上げ、用意の合図をする。

 

 

「ハイ!せーのっ、叩いてかぶって、ジャンケンポン!!」

私の声と同時に繰り広げられるジャンケン。

結果はお妙さんがパーで、近藤さんがグー。つまり叩く方がお妙さん。

 

 

素早い動きで近藤さんはヘルメットをかぶる。

おお、伊達に真選組局長やってませんね。

 

 

「逃げろ近藤さん!!!」

感心したところで私の横から新八くんが全力で叫んだ。

 

 

「え?」

疑問の声を上げた近藤さんの目の前には、ピコピコハンマーを構えて何かをブツブツと唱えるお妙さん。

「ちょっ…お妙さん?コレ…もうヘルメットかぶってるから…ちょっと?」

だんだん青ざめていく近藤さん。

そしてお妙さんの目が一瞬鋭く光ったかと思うと、ドゴォッ!という音が響いた。

 

 

ドシャアッと勢いよく崩れ落ちるように倒れた近藤さん。

…ピコピコハンマーって、凶器だったっけ。

 

 

「局長ォォォ!!!」

「てめェ、何しやがんだクソ女ァ!」

いち早く凍りついた現状から我に返った真選組の人が叫ぶ。

 

 

「あ゛ぁ?やんのかコラ」

 

 

「「「すいませんでした」」」

 

 

地を這うようなお妙さんの声に、隊士の人たちは土下座して謝った。

今のは、私も怖かった。

 

 

「新八くん…君も大変だね…」

「もう慣れましたよ」

「なんていうか、お疲れ様」

新八くんが遠い目をしているのを横目に、私は試合を進めることにした。

 

 

「こ、近藤さんが戦闘不能になったので…えーと、どうしよう山崎さん」

「まあ、無効試合ですかね。二戦目の人は最低限ルールは守ってください…」

言いながら二戦目の相手、神楽ちゃんと沖田さんの方へ視線を向ける。

 

 

「ってもう始まってるんだけど!早っ!」

「手も速いですよアレ」

驚いた私に、新八くんは二人の手元を指差す。

 

そこでは目にも止まらぬ速さでピコピコハンマーとヘルメットが音を立てていた。

なんかもう、ずっとメットとハンマーを持ったままに見える。

 

 

 

「頑張れ神楽ちゃーん!」

応援くらいならしてもいいだろう、と思って声をかける。

 

「まっかせるネ!こんな野郎には負けないアル!」

視線は前から逸らさず、ニッと笑った神楽ちゃんは…なんか、かっこよかった。

 

 

「ハッ、言ってろィ。すぐお前なんか叩きのめしてやりまさァ!」

「何アルか、の前だからってかっこつけアルか?逆に叩きのめしてやるネ!」

 

微妙に私の名前が呼ばれてるのがすごく気になるけど、とりあえず頑張れ神楽ちゃん。

 

 

さん」

「うん?」

ふいに山崎さんに名前を呼ばれて振り返る。

 

「長引きそうだから、ちょっと休憩」

そう言って山崎さんは紙コップに注がれた緑茶差し出してくれた。

桜の木の方へ視線を向けると、新八くんがお茶を淹れているのが見えた。

 

 

視線が合うと、新八くんはにっこりと笑った。

それに返すように私も笑って、ありがとう、と言った。

 

 

「じゃ、私たちも見学しますか!山崎さんっ」

「うん。全然和めない戦いしてるけどね」

苦笑いをしながら、山崎さんは未だものすごい音を立てて戦っている神楽ちゃんと沖田さんの方を指した。

 

 

ふわりと桜の花びらが舞う中、妙に熱い戦いは続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

なんて滅茶苦茶なヒロインの絡ませっぷり。

どういう方向に進むのか、私にも分からないお話になってきました。

2010/02/28