「いやあ、それにしてもあの2人すごいですね」

「隊長もなんか生き生きしてますし」

「寧ろあれ、見てる僕らのほうが疲れてきますけど」

「あー、それ分かる。なんか何もしてないのに、手ェ疲れてきたもん」

「「ですよねー」」

 

 

 

 

第3曲 とりあえず花を見ろ

 

 

 

 

ものすごい速さで2人の間を行き交うヘルメットとピコピコハンマー。

司会者組な私たちはまったりとその光景を眺めていた。

 

 

「ホゥ、総悟と互角にやりあうとはな」

「互角だァ?ウチの神楽にヒトが勝てると思ってんの?」

「総悟はなァ、頭は空だが腕は真選組でも最強をうたわれる男だぜ」

「ハッ、神楽は絶滅寸前の戦闘種族、夜兎なんだぜ。スゴイんだぜー」

 

私たちがまったりと喋っているところに、そんな会話が聞こえてくる。

ちらりと視線を動かすと、土方さんと銀さんが花見用に持ってきた御座の上に座っていた。

ていうか、普通に花見してんじゃん。

 

 

「最初から皆で仲良く花見すればよかったのに」

ぽそりとそう言うと、新八くんも隣で「ですよね」と言ってくれた。

しかしその声は2人の声でかき消された。

 

 

「「仲良く、花見ィ?」」

 

 

そこには嫌そうな顔をした銀さんと土方さん。

 

、お前これが仲良くに見えるのか?」

銀さんにそう問われて、言葉が詰まる。

「……まあ、仲…悪くは…ないんじゃないの?」

視線を泳がせてそう答えると、土方さんが声をあげた。

 

 

「クソ天パ、が困ってんだろーが」

「あぁん?てめーに口出しされる覚えはないんですけどー」

ひっく、と銀さんがしゃくりあげながら言う。

土方さんも微妙に呂律が回っていない。

 

 

「っていうかアンタら何!?飲んでんの!?」

新八くんのツッコミに2人はこくりと頷く。

「あったりめーだろうが。勝負はもう始まってんだよ」

ふらりと立ち上がって銀さんは私の方へ歩いてくる。

…ってちょっと待て、なんで、こっち来るんだ!

 

 

 

「ちょ、待て待て、何…うおっ!?」

がしっ、と肩に腕を回される。

重い!体重がのしかかってきて重い!

 

「ぶわっ、酒くさっ!銀さんいつから飲んでんの!?」

「あー…いつからだろ」

言いながら側にある一升瓶を手に持つ。

 

 

 

「ストップ!飲みすぎ厳禁!」

ばっと銀さんの手から一升瓶を奪う。

 

「酔いつぶれないでよ。銀さんを持ち帰るの私らなんだからね」

「え、何、俺にお持ち帰りされんの?どっちかといえば俺がを持ち帰りたいんだけど」

「新八くん、山崎さん!ちょっと銀さんに水ぶっ掛けてやってくださぁぁい!!」

 

 

にやにやしながら絡んでくる銀さんを片手でぐいぐいと押しのけていると、ひょい、と一升瓶が腕から消えた。

ふと顔を向けると、そこにはほんのり頬が赤く染まった土方さんが立っていた。

 

、お前真選組に職場変えたらどーだ」

「いや私、非戦闘員なんで」

「誰も戦えとは言ってねーよ」

ごとんと一升瓶を置いて、土方さんはちらりと私に張り付いている銀さんに目を向ける。

 

 

「こんな頭ン中が年中春の野郎のとこよりまだマシだと思うがな」

「んだとコラ。はうちの従業員ですー。お前らみたいな男だらけの所へなんざ行かせるか!」

ぐいっと腕を引かれて銀さんに後ろからすっぽりと包まれる。

うおおおお酒臭っ!!

 

 

「テメーは一人でも十分危ねぇんだよ」

「お前みたいなムッツリ野郎よりマシですぅ」

「誰がムッツリだ!」

 

もう何でもいいから、とりあえずこの場から離れたい。

ちらりと目で新八くんと山崎さんに助けを求める。

 

 

2人は手でバツ印を作って、口パクで「ごめん、無理」と言った。

無理ってお前らコラァァ!

でも、とりあえず水は本当に用意してくれたみたいで、2人の足元にはバケツがひとつ置かれていた。

 

 

「お前もうマヨネーズ星に帰れ!さっさと星へ帰れ!」

「テメーは土にでも埋まってろ!せめて肥料として地球に優しくなれ糖尿野郎!」

 

ちょっと意識を逸らしただけで話がサッパリわからなくなっている。

 

 

気づけば銀さんの腕の力がゆるくなっていたので、こっそりと私は屈んで2人の間から抜け出す。

そのままこそこそっと新八くんたちの所へ走る。

 

 

 

「お疲れさまです、さん」

「ほんとだよ」

はあ、とため息をひとつつく。

 

「あれほっといたら、多分延々とやってるよね」

ちらりと2人の方を見る。

私が抜けたことにも、どうやら気づいていないみたい。

 

 

「ちなみに隊長たちの方も収拾つかなくなってますよ」

山崎さんが指差した方向では、メットをつけたまま素手で乱闘をする沖田さんと神楽ちゃんの姿があった。

 

 

「こりゃ、勝負どころじゃないですね」

ため息をついた新八くん。

私はその足元にあるバケツを手に取る。

 

「とりあえず、向こうのケリはつけてくる」

「向こう?」

首をかしげる新八くんに、にっこりと笑って言う。

 

「銀さんも土方さんも、酔いつぶれたら持って帰るの大変でしょ。自分で歩いて帰ってもらわなきゃ」

水が零れないようにしっかりとバケツを手に持つ。

「だから、酔い覚ましてくる!」

 

 

ダッと地を蹴り私は銀さんに向かって、思いっきりバケツを振りかぶって中身をぶちまけた。

 

 

「酔っ払いっ、退散ーーー!!!」

 

 

バッシャァァァと勢いよく銀さんの頭に水がかかる。

 

よしっ、と気が緩んだためか、その瞬間、私の手からバケツが飛んだ。

 

 

振りかぶったせいで勢いよく飛んだバケツは、銀さんの後頭部に当たって跳ね返り、土方さんの即頭部にヒットした。

ガツーン、という音と共に2人はパッタリと地面に倒れた。

 

 

 

「……あははは、やっちゃった」

顔を引きつらせて振り向いた先にいた新八くんと山崎さんの顔も、私と同じくらい引きつっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

微妙に話が原作から逸れました。

ここからオリジナル要素に突入していきます。

2010/03/07