「で、どうするんですかコレ」

「銀さんはともかく…ごめんなさい山崎さん、土方さんまで倒しちゃって」

「いやまあ…喧嘩両成敗みたいな感じでいいんじゃないですか」

「じゃあ、これ優勝は…?」

「「さんでしょ」」

「マジでか」

 

 

 

 

第4曲 お花見はやっぱり大勢で

 

 

 

 

司会者にして優勝を勝ち取りましたです。

なんだか花見どころじゃなくなった景色に、私たちは肩を落とす。

 

とりあえず、持ってきた御座を安全な場所へと移す。

一応花見の権利は得たものの、結局は皆でお花見をすることになった。

 

 

 

「なんか、ある意味一番いい結果になったんじゃないですか」

新八くんに注いでもらったお茶を飲みながら、私たちはやっと花見をすることができた。

ああ、今までずっと無視しててごめんね桜よ…!

 

 

「あ、そうだ」

お茶を飲んでいた山崎さんが私の方を向く。

「勝った方の頼みをさんがひとつ聞く、ってあったでしょ。アレ、俺でよければ聞くよ?」

 

さらり、と言われて一瞬ポカンとなる。

「え、えええ!?いいんですか!?」

「うん。あ、でも俺にできることにしてね」

 

 

うーん、といっても頼みごと…。

いざ考えるとなると思い浮かばないなあ…。

 

 

「あ、じゃあ、今度一緒にミントンしてください!」

「へ?そんなんでいいの?寧ろそれ、俺が嬉しいくらいなんだけど」

いつも一人だから相手いなくてさー、と呟く山崎さん。

 

 

「でも手加減は」

「しないよ」

言い終わる前ににっこりと笑って言い返されてしまった。

それも、物凄くいい笑顔で。

 

「…その時はお手柔らかにお願いします」

 

 

 

 

 

 

桜の花びらがふわりと舞っている。

もぐもぐと山菜おにぎりを食べていると、空いたお弁当箱に花びらがふわりと落ちた。

 

空は快晴。

顔を上げれば、一面の桜色。

ああ、こういうのを風流っていうんだろうなあ。

 

 

そんなことを思いながら手についたご飯粒を食べていると、ふいに背後が暗くなった。

なんだろう、と思って振り向く前に、私の視界はピンク一色に染まる。

 

 

「神楽ちゃん、それに定春…!」

頭の上から降ってきた大量の桜の花びら。

 

「えへへ、定春と一緒に集めたアル!にプレゼントネ」

「わふっ」

そう言って定春の背に乗って笑う神楽ちゃん。

定春もしっぽをぱたぱたと振っている。

 

 

「ありがとう、ふたりとも!よっしゃ、もっと一杯集めるか!」

「もちろんネ!あそこで寝てる銀ちゃんの顔に思いっきり積もらせてやるアル!」

「それ今やったら窒息するから駄目だよ」

ただでさえ今銀さんは私の不意打ち攻撃でダウンしてるんだから。

 

 

「じゃあ姉御にも、と同じのやりに行くアル!」

そう言いながら神楽ちゃんは私に手を差し出す。

私は空いたお弁当箱を片手に、もう片手で神楽ちゃんの手を掴む。

 

ぐいっと引っ張り上げられて、定春の背に乗る。

「行くヨ定春ゥゥーー!!」

「わおん!」

 

 

神楽ちゃんの声と共に定春が地を蹴る。

「ひゃほーーー!」

「ああああ分かってたけど速ぁぁぁぁーー!!」

ビュオンと風を切って走る定春。

車に負けず劣らずの速さには未だ慣れない。

 

 

 

「しっかり掴まってないと落ちるアルよ!」

ぐっと私の手を掴んで、神楽ちゃんは自身のお腹あたりに回す。

私を振り返ってにかっと笑った神楽ちゃんが、なんだか、かっこよく見えた。

 

 

 

「定春ゥー、あそこで寝てる天パとマヨラ、踏んでいいヨ!」

私が渡したお弁当箱で落ちてくる花びらを集めている神楽ちゃんが指を差す。

「わおおん」

ひと吠えして、方向転換をした定春。

 

「あの2人はそっとしておいてあげてェェェェ!!!」

 

定春の上はいろんな意味でハラハラドキドキです。

 

 

 

でも、頬を滑っていく風は心地よくて、自然と微笑みがこぼれる。

こんな風にお花見をするのは、いつ振りだろうか。

 

 

上司について文句を言いつつも楽しそうな新八くんと山崎さん。

いろんな人に卵焼きをすすめているお妙さん。

笑いながらお酒を飲んだり踊ったりしている真選組の人たち。

私がダウンさせた銀さんと土方さん、お妙さんがダウンさせた近藤さん。

 

 

…まあ、気絶してる人がいるとはいえ。

こんなに大勢でお花見をするのは、多分、初めてだ。

 

 

 

「…ここに来れてよかったな」

「うん?何か言ったアルか?」

ちらりと視線を私の方へ向ける神楽ちゃんに笑って「なんでもなーい」と言った。

 

 

 

 

も集めるヨロシ!」

「うん!」

すっと差し出されたお弁当箱を受け取る。

 

 

傘を上下反対に持って花びらを集める神楽ちゃんの後ろに乗ったまま、

既に底が見えないくらい花びらが集まっているお弁当箱を大事に抱えて私も花びらを集める。

 

 

 

さて、集めた花びらは誰に降らせてこようかな。

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

新八、退とまったりタイム。神楽とお遊びタイム。そんなほのぼの話でした。

定春に乗って神楽ちゃんの後ろに座ると、神楽ちゃんが王子みたいに見えると思うんです。

2010/03/19