だんだんっ、と力強い音を立てながら時計塔の階段を上る。
短いとも長いとも言えない長さのスカートがバサバサと音を立てる。
目指す部屋、ユリウスの作業場の扉にタックルをかますような勢いで部屋に飛び込む。
「ユリウスーー!!たっ、助けて!!」
「来るならもっと静かに来い。…で、今日は何の用だ」
かけていた眼鏡を外しながら、呆れた表情であたしを見る。
「助けて!エッ、エースが遂に犯罪に目覚めた!!」
「は?」
理解できない、という表情というよりも、こいつバカじゃね?みたいな視線を向けてくる。
というか、これだけ息切らして走ってきたっていうのになんというドライな反応なんだいユリウス。
「あっははは、酷いなー愛情なのに!」
「ぎゃああああ!」
閉まりかけていたドアをバーンを開けてそう言ったエース。
あたしはすかさずユリウスの後ろ側へ回る。
「勝手に人を盾にするんじゃない、!」
「だってだって!」
怖いんだもん!と言いながら、あたしはユリウスの服を掴む。
「…はあ、エース、お前ももっと静かに………おい、なんだそれは」
「ん?手錠と鎖」
引きつった顔で尋ねるユリウスと反対に、けろりとした顔で答えるエース。
「お前…何に使う気だ、そんなもの」
「が俺から逃げないように傍にいるように、縛るとか繋ぐとかしておこうかと思って」
「逃げる理由がそれだってなんで分からないのあんた!!」
にこやかに笑いながら手に手錠やら鎖を持って追いかけられたら誰だって逃げるよ。
「会いたいときに会えないって辛いだろ?だから、繋いでおけば会いたいときに会えるはず!」
「もうちょっと他の方法があるだろうがァァ!」
「あははは、俺あんまり頭よくないから、これしか思いつかなかったんだよー」
確かにエースはそんなに頭よくはない。
けど、運動神経はバツグンに良いわけで。掴まったら最後、逃げられないだろう。
「ってことで、ちょっとどいてくれよユリウス」
「どけるか」
ユリウスはエースから庇うようにすっとあたしの前に腕を出す。
「エース、お前旅に出るか城へ帰るかしろ」
「えぇー」
「えぇーじゃない!ついでにその手錠と鎖も置いていけ。私が責任持って捨てておいてやる」
なんかユリウスのが騎士っぽい…!
普通の人がいてよかった、なんて思いを込めてユリウスの服をきゅっと掴む。
「…へぇー、ユリウスってば俺を追い払ってをどーする気?うわ、ユリウスってばやーらしー!」
にっこり、と微笑んでからかうように言うエース。
「やらしいのはお前の頭だと前にも言っただろうが。それに別に何もしない。追い出す順番が違うだけだ」
「あれ、これあたしも後で追い出されるノリじゃね?」
「当たり前だ。お前らがいると仕事がはかどらん」
ぴしゃりと言い放つユリウスは冗談を言ってるわけでもなさそう。
…うわお、さすがユリウス。
いつでも仕事第一なのね…!!
「ええー。最終的に俺もも追い出すなら、今引き渡してくれればいいのにー」
「だーかーら、それが嫌だっつってんだろ」
未だにエースの手にはジャラジャラ鳴る鎖が握られている。
そんな危険人物に近寄るなんて勘弁していただきたい。
「うーん、ユリウスはここから出たくなくて、もここから出たくないのか…」
エースはふむ、と顎に手を当てて考えるポーズをとる。
だから、その手に持ってるものを捨ててきてくれれば旅にでも付き合ってあげるっつーの。
なんて思っていると、エースは手をぽん、と叩いて言った。
「じゃ、閉じ込めちゃえばいっか!」
「「…は?」」
見事にあたしとユリウスの声はハモった。
「は滞在場所ころころ変えるからなかなか会えないわけだし」
「いや、一応あたし帽子屋屋敷にお世話になってて…」
帰らなきゃいけないんだけど、という言葉はエースの声にかき消される。
「ユリウスは元々ここに住んでて、出る予定もない」
「仕事で外へ出ることはある」
「あっははは、心配しなくても外の仕事は俺がなんとかしてやるぜ」
笑って言いながらエースは扉の方へと歩いていき、内側から鍵をかける。
そして手に持っていた鎖をドアノブに巻きつけて、鍵穴も塞ぐ。
…ってちょっと待った。
「エース…内側から鍵かけたらあんたも出れないんじゃないの?」
「あ」
既に鎖でがんじがらめになったドアノブは、動かなさそう。
「…じゃ、俺もここに住もうかな!」
爽やか過ぎる笑顔でそう言い放ったエースを呆然と見ながら、あたしたちは心の中で叫んだ。
誰かこいつをなんとかして!
(「よし、じゃあベッド借りるぜユリウス!ほら、こっちおいでー」「行かない行かない!」「お前らほんとマジで出てけ」)
あとがき
時計塔コンビが大好きです。エースはもう愛してます←
最後らへんの終わり方が思いつかなくて、ぐだぐだです…。うぐう、すみません…!
2008/12/27