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銀時編 ・ 総悟編 ・ 土方編 ・ 高杉編 ・ 退編 ・ 春雨第七師団編
「というわけでー、さあ銀ちゃん!カモンっ!」
「いやいやカモンじゃねーから。そういうノリで言うもんじゃねーから」
「そういうノリじゃないと言ってくれないじゃん」
ソファに寝転がった銀ちゃんに跨ってべちべちと頬をたたく。
さっきまで寝てた銀ちゃんの目は、たたいても半目状態だ。
「ほーらー早くー」
「はいはい、俺はお前が好きですー」
「誠意が足りない!ついでに愛もたりない!」
「愛はついでかよ」
眠そうな声のまま、銀ちゃんは寝返りをうとうとする。
「もう!好きでも何でもいいから、本気で言ってみてよ、全力投球カモン!」
「何で今日はそんなにテンション高ェんだよ…ふああ」
あくびをする銀ちゃん。
それを見てたら力が抜けて、ぽす、と銀ちゃんの胸に突っ伏す。
「銀ちゃんさあ、本当は結構モテるんだよ」
「んなこたねーよ」
「そんなことあるの」
上下する銀ちゃんの胸に顔を埋めたまま、小さくつぶやく。
「不安なんだよ、私だってさぁ。私ばっかり銀ちゃんが好きなんじゃないか、って」
「ばーか」
声と共に、頭を大きな手に撫でられる。
「…そうやって子ども扱いしてくるから、言いたくなかったんですー」
「してねぇよ。それに、俺は好きな女以外自分の上に乗せたりしません」
「何かその言い方卑猥!」
がばっと顔を上げて銀ちゃんを睨んでやる。
銀ちゃんは小さく笑って、「そういうとこはガキだな」と言った。
「俺ァお前には言うより態度で示したいんだよ」
「銀、ちゃん…」
「だから、そんないつまでも上に乗ってられると俺抑えられなくなるんだけど」
「え」
はた、と我に返る。
そういえば、銀ちゃんの上に跨ったままだ。
「銀さんの愛はすげーからなァ、お前の為を思って抑えてたんだが…そーかそーか不安なら今から…」
「ぎゃあああ!!ぎぎぎ銀ちゃんの変態馬鹿ァァァァ!!!!」
走り去る際に、「ぐえっ」て聞こえた気がしたけど、空耳だと思い込むことにした。
(違う!このドキドキは種類が違う!!でも私の負けだよコノヤロー!)
「総悟もさぁ、普通の口説く文句くらい言えないと駄目だと思うんだよね」
「別に口説かなくてもお前は俺から離れられねーだろィ」
「え、いや、それはそう……いやいやいや!もしかしたら他の人につられちゃうかもよ!」
「へえ」
小さく返事をして、総悟はゆっくり立ち上がる。
そして私の前にしゃがみこみ、ガッと顔を掴んでくる。
「お前は俺のモンでさァ。他の野郎なんかに弄らせやせん」
「…いや、すっごい、微妙な口説き文句なんだけど」
喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか、それとも逃げるべきなのか。
「もうちょっと普通に言えないの?ていうか私総悟から好き、って聞いたことない気がするんだけど」
「そうでしたっけ?」
顔を掴む手を振り払って、私は思い返す。
そうだよ。聞いてないじゃん、好き、って。
「やっぱり聞いてないよ!ちょ、この機会に言っっちゃってよ好きって!」
「俺ァお前の痛がる顔がすげー好きですぜ」
「そうじゃない」
なんで何もかもそっちへ結び付けるんだこいつは。
「普通に、だってば!普通に好きって言ってみなさい!」
「ならお前が先に言いなせェ」
「へ?」
「お前が言ったら、俺も言ってやらァ」
「え。わ…私は、前に言ったこと、あるし」
「どーでしたかねィ。記憶にねーなァ」
真顔のまま、私から視線をそらさない総悟にいやな汗が浮かぶ。
なんで私が言う羽目になってんの?
「…ええと、わ、私は…」
「もっとデカい声じゃねーと聞こえやせんねィ」
「嘘付け。この距離なら小声でも十分聞こえるだろうが」
手を伸ばせば届く所で総悟はにやにやと笑っている。
「……あーもう!わ、私は、そっ、総悟が好き、で、す…!」
総悟の顔を見ていられず、俯くと頭の上からククッという笑い声が聞こえた。
「ふ、あっはは、お前のそういうとこ大好きですぜィ」
「…うるさい」
「好きですぜィ。だから絶対ェ誰にも渡さねェ。繋いででも俺の隣から離しやせんぜ」
そう言った総悟の声は、珍しく真剣なもので。
不覚にもしっかり口説かれてしまった。
(悔しい。なんかすごく悔しい。)
「ひーじかたさん!ちょっと質問があります!」
「あ?何だ」
「マヨネーズは好きですか?」
「当たり前だ、好きにきまってんだろ」
「じゃあ、私のことは好きですか?」
「………」
「何で黙るんですか。しかも何で若干顔ゆがんでるんですか」
「お前が急に変なことを言い出すからだ」
まあ、マヨネーズに即答することは予想済みだったけど、まさか私の所で黙られるとは。
そりゃ、即答はされないと思ってたけど『それは……その、す、きに決まってんだろ…!』とかいう
ヘタレっぷりを発揮してくれると信じていたのに。
「変なことじゃないですよ。愛情確認です!」
「別に今じゃなくてもいいだろ」
「今言ってほしい気分なんです!」
面倒くさそうな視線を送ってくる土方さんの目を見つめる。
「前に、言っただろ。ちゃんと。それでいいだろ」
「前は前、今は今なんですよ」
「…ったく、仕事と私とどっちが大切ーってやつかよ…。ドラマにでも影響されたのか?」
「違います!それに私は仕事も両方大切にしてほしい派ですから!」
「そりゃ良かった」
ふう、と息を吐いて土方さんは時計を見る。
「お前もそろそろ休憩終わりだろ。書類整理、溜め込むんじゃねーぞ」
「土方さんが私を好きって言ってくれたらやりに行きます」
「お前なァ…」
顔を引きつらせて、土方さんはぶんぶんと数回頭を振った。
そして私の頭をぽんと撫でた。
「とりあえず今日の仕事が終わってからな」
「……」
ぎゅう、と手を握りしめて私は口を開く。
「もう!分りましたよ!土方さんは私なんて本当はどうでもいいんですねちくしょー!!」
「あ?ちょっと待て、んなわけねぇだろ!」
走り去ろうとした腕を掴まれて、背中から土方さんの体にダイブする。
「ったく…今そんなこと言ったら、この後の仕事なんざ手につかなくなるだろうが」
「私は、言ってくれないとこの後の仕事が手につきません」
「…一回しか言わねぇからな。…俺は他の誰でもねェ、お前に側にいて欲しいんだよ」
思っていたよりも、真剣な低い声に、体が硬直する。
え、ちょっと、待って、よ。
「好きだ」
(そんなの、反則です。ていうか、ちゃんと口説けるんじゃないですか!)
「晋助、ちょっといい?」
「よくねぇ」
「それじゃあ話が進まないんだよね」
部屋に入ると、晋助は三味線を弾いていた手を止めた。
「どうせお前のことだ、しょうもねぇ事だろ」
「しょうもないとか言わないでよ!大事なことなんだから!」
ずかずかと部屋に入り、晋助の向かいに座る。
「えーと、私は晋助が大好きです!」
「おぅ」
「……え、そんだけ?」
「今更そんなこと言われなくても、十分わかってらァ」
「いやいや、普通ここは『俺もお前が好きだよ…』とか言うところじゃないんですか」
「んなこと俺が言うと思ってんのか?あぁ?」
「そりゃ想像つかないよ。つかないからこそ、言ってほしかったんだよ…」
「言わない分、態度で示してやってんだろ」
「どの辺が!?昨日も私に掃除押し付けたじゃないの!」
「俺の部屋をいじらせるのを許可してんのはお前だけだ、っつーことだろうが」
「そ…そんなこと言っても誤魔化されないからね!」
ぎっ、と晋助の目を見つめてやる。
それでも晋助は顔色一つ変えない、っていうかさっきから無表情すぎるんだけど。
「…もういいっ!万斎さんあたりに乗り換えてやるー!」
まあ、冗談ではあるけど、そう叫んで踵を返した瞬間に腕をものすごい力で掴まれた。
「…なんの冗談だァ?」
「っ!?」
「お前は俺の女だろうが。他の野郎なんか見てんじゃねぇよ」
「!?え、え、あの」
地を這うような低い声に、冷や汗が頬を伝う。
「それとも…他の奴なんか見えねーように、ここに縛り付けて監禁してやろうか…?」
「つつつ謹んでご遠慮させていただきます」
「それなら、馬鹿なこと言うんじゃねぇ」
そういって離された腕は、真っ赤になっていた。
そしてそのまま、ぺたんと床に座り込む。
「…どうした?」
「どうって、い、今自分が何してたのか、分ってる!?」
「愛情表現だろうが」
「…痛い!痛すぎる!そんな愛情表現やだー!!」
「何だ。言ってほしかったんじゃなかったのか」
「言うより態度のほうが強かったよ!腕っ、腕痛い!」
「だから言っただろ、俺の愛情は態度で示してやる、ってなァ」
「どうか穏便にお願いします…」
(晋助の愛情表現はものすごく怖かった。口説き文句どころじゃないわ…!)
「本日は口説き文句レッスンをしようと思います!ハイじゃあ退やってみて!」
「いきなりどうしたの?」
「だから、口説き文句レッスンだってば。隠密の仕事でも、ほら、女の人相手とかだったら要る能力でしょ」
「そんな仕事俺はしてないからね!」
「これからするかもしれないでしょ!」
「しないって。俺はもっと地味な仕事しかしないって」
「いいから!ほら、早く言っちゃえ言っちゃえ!」
「恥ずかしいから、言わない!」
「大丈夫だって、ここには私と退しかいないわけだし!」
「それでも恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ」
頑なに口説き文句レッスンを拒む退。
…ちょっと口説かれてみたくなっただけなんだけどなあ。
「軽いノリでいいからさ、ほらほら!」
「ノリなんかで言いたくないよ。君に対してはちゃんと本気で向き合いたいんだから」
「……。え、あ、じゃあ本気でどうぞ」
「…俺は…って、だから恥ずかしいの!今は言わない!」
「そこまで言いかけたんだし、言っちゃおうよ」
だんだん顔が赤くなってきた退を促す。
「…寂しいの?」
「…え?」
疑問の声を上げると同時に、ふわりと体を引っ張られて退の肩に顔を押し付けられる。
「最近、任務に出てて会えなかったから、寂しい思いをさせちゃった…かな」
「………」
そうなんだろうか。私は、寂しかったのだろうか。
「ごめん。でも、俺はいつでもちゃんと君のことを想ってるから」
「退…」
「俺は君が好きだよ。だから、君が笑って待っていてくれるここに帰ってきたいって思う」
そっと退の背中に手を添える。
「だから、これからもずっと俺にその笑顔を見せて。ずっと、俺と一緒にいて」
「…うん、ずっと一緒にいようね」
そういって顔を上げようとすると、ぐっと退の手にそれを阻止される。
「今、俺の顔見ないで」
「……了解」
少しだけ上ずっていた声に、優しく微笑んで私はもう一度退の肩に頭を預けた。
(また寂しくなっちゃったら、言ってね。好き、って。)
「はーい、このドロドロした生活ばっかりしてる第七師団に潤いを!の時間です!」
「何それ」
にこにこしたまま鼻で笑ってきやがった神威団長。
そして阿伏兎さんはポカーンとしている。
「たまには普通のこともしましょうよ。ということで、今日は告白大会です」
「意味が分らない」
「告白って、嬢ちゃんそりゃ俺らには無理だろ。誰に告白すんだよ」
「そりゃ、もちろん私ですよ」
「阿伏兎、この間の任務だけどさ」
「待てェェ!団長!そんなあからさまに話逸らさないでください!」
「だって、相手が君なんだろ?……ハハッ」
「何ですかその乾ききった感じの笑い方はァァ!阿伏兎さんも何とか言ってください!」
「いやいや、俺もさすがにノれねーよ」
「うぐぐ…!お二人は私が嫌いなんですか!?」
「そういう君は俺らが好きなの?」
「ええ。好きですよ」
しーん、と一瞬その場が固まった。
「ちょ、何なんですか。なんでそこで固まるんですか」
「いやあ知らなかったよ。君が俺らを好きだなんて」
「そりゃあ…主に団長に殺されかけることもありますけど、一応同じ師団の仲間ですし」
「…仲間?」
笑顔を崩さないまま、団長が呟く。
「え、違うんですか?」
「いや、まあ、いいんじゃないの。そういう好きなら」
「そういう、って…他にあるんですか?」
そう言うと、阿伏兎さんがこっそり「うわっ…」って呟いた。
何なんだ。それ以外に何があるんだ。
「…君ってさあ、ほんと救いようが無いバカだよね」
「なんですとォォ!!?失礼極まりないですよ団長!」
「バカだよ、本当に。ねえ阿伏兎」
「どっちもどっちなんじゃ「うん?何だって?」…もう俺を巻き込むんじゃねぇ」
「あっ、ちょっと阿伏兎さん!どこ行くんですか!」
「バカな君には俺がお説教してあげるよ。ほらこっちおいで」
「お説教って団長がですか!?め、珍し…って目が!目が怖いです団長!」
「無傷で帰れるかは分からないけど…まあ生かしておいてあげるつもりではいるから安心してよ」
「安心できる要素が何一つ無いんですけど!ちょ、阿伏兎さぁぁん!!助けてぇぇぇぇ!!」
「めんどくせーんだよお前らは。つーか団長もしっかり嬢ちゃんのこと好きなんじゃねぇか」
「阿伏兎ー、何か、言った?」
「何でもねーですよーこのすっとこどっこい」
(結局団長に目一杯攻撃されました。しかも団長以外に好きって言うの禁止令が出ました。何故だ!)