ただいま、夜。そしてあたしは今から寝る。

明日は真選組女中の仕事もお休みだから、ゆーっくり寝てごろごろしようかなーなんて思いながら布団に入る。

ときどきクーラーの涼しい風が来ていい具合に眠気を誘う。

「ふあぁー……おやすみなさー『ピンポーン』……」

 

 

… 誰 だ !

 

 

あたしの睡眠タイムを邪魔するなんて!っていうか夜中!もうすぐ11時だから!

…いいや。知らない。ほうっておこう。

っていうかこんな夜中に来るなんて…非常識な!

 

『ピンポーン』

 

…。しらないしらない。もう寝るの。っていうか眠いの。

 

 

『ピンポーン、ピンポーン』

 

いいかげん鬱陶しい。

 

 

しょうがないからのそりのそりと布団から出る。というか転がる。

くそう…誰だ…。飛脚の人、ってことはないだろうし。

部屋から出るとむわっとした空気に触れる。暑い。

 

 

『ピンポーン』

 

しつこく鳴っているチャイム。

「あーもう、今開けますって…」

ガラッと戸をあける。

 

 

ちゃあああん!!いるなら早く開けて!!ちょ、銀さんマジ暑さで死ぬかと思っ『ピシャンッ』

 

 

…幻覚だ。…と思いたい。(夜中だよ。夜中なんだよ。何叫んでるの銀さん!しかも寝巻きってオイ!)

思いっきり玄関の戸を閉める。が、鍵が開いたのをいいことに外側から銀さんは戸をあけようとする。

「ちょっ、何閉めてんだよ!暑さでおかしくなったか!?」

「知るかァァ!こんな夜中に人の家に無断で来ようとするアンタがおかしいわァァ!!」

ガタガタと玄関の戸が揺れる。

わお、こんな暑い日に玄関壊れたら大変だよ!

 

「銀さん…あたし、眠いの。だから出てけ!」

「俺だって眠いですぅー!だから入れてッ!!」

バシン、と玄関が開く。

あぁ、あたしの睡眠タイムは一体どこへ…。

 

 

 

 

 

 

 

玄関にいるわけにもいかないので、部屋に銀さんを招き入れてあたしは布団の上に座る。

そしたら銀さんもちゃっかり座ってきた。お陰で今は向かい合ってる状態。

「…で、なにしにきたの銀さん」

「さっきから彼氏に対して酷くない?出てけとか、なにしにきたのとかさぁー」

「彼女の家に夜中に来る方が悪い」

あぁ、そうね。あたしと銀さんは彼氏彼女の仲なんだよね。

じゃあ少しは彼女のこと考えようよ。もっと気遣おうよ。眠いんだってば!

 

 

 

 

 

「でも、ほんとに何しに来たの?」

「いや…ホラ、万事屋クーラーないじゃん。寝苦しいじゃん」

 

……は?

 

「オイ、ちょっとまって、銀さんウチにクーラー求めて来たわけ!?」

「暑いんだよ!マジで万事屋は今サウナなんだよ!」

思わず2人して大声を出す。おっと、ご近所迷惑。

 

 

「そういうわけだから…、ここで寝させて」

銀さんはそう言いながら布団の端をもちあげ、いそいそと布団に潜り込む。

あたしの布団に潜り込む。

 

あたしの布団。

 

「ちょっと待って!!銀さんここで寝たらあたしどこで寝ればいいわけ!?」

「どこって、ここ

ペシン、と自分の横をたたく。

「嫌よ」

「何で!?」

「…暑いじゃん。1つの布団に2人もいたら暑いじゃん」

しかも明日はごろごろしようと思ってたのに。

「大丈夫だって。…多分。…あーもう!ほらそんなこと良いから!早く寝ようぜー」

確かに眠い。…まぁ、暑くなったら…扇風機でもまわそう。

 

 

 

 

 

やっと布団に入る。入った瞬間、腰に手が回る。

「ちょっと!抱きつくな暑い!!」

「酷ッ!ちゃん!銀さんの心はさっきから傷つきまくりだよ!」

「あたしの心も傷ついてるよ!」

「駄目。銀さんの方が傷ついてるから、癒してv」

 

 

…まずい。このままでは寝るどころか明日のだらだら計画が…!

 

 

「ぎっ、銀さん。あたし明日仕事だから、早起きしないといけないから、もう寝ないと…」

「嘘。、明日仕事休みでしょ」

確定的な言い方。

少しも疑いの無い、決定的な言い方。

…え!?何で知ってるの!?」

「俺はのことは何でも知ってるんですー!見直したか俺の愛を!」

全然

しょぼーん、と効果音がつきそうなくらい布団にうつ伏せになる銀さん。

だって仕事休みって知るには、真選組まで聞きに行くしかないワケで。うわぁ、暇なんだね!みたいなさぁ。

でも、ちょっと…かわいそう、だったかな。

 

「あー…銀さん、あのさ。今日はもう寝よう?…その、明日なら何でもしてあげるから、ね?」

うつ伏せになってる銀さんの頭を軽くぽんぽん、と叩きながら言う。

「…しょうがねーなー。明日…か」

「うん、明日。だから、もう寝るよー…おやすみー…」

 

目を閉じかけた瞬間。

がばっと布団が捲れあがる。思わず目を開けると、天井をバックに銀さんが見える。

 

。時計見てみろよ」

何するんだ、と言う前に時計を見ろなんて言われる。何、時計…。

「今、何時だ?」

「…11時…59分…あ、ちょっと!もう日付変わっ…ちゃった…じゃん…」

 

あははは、そんな、まさか。

 

「何でもしてくれるんだよな?」

「いやいやいや!ちょっと待って!確かに明日って言ったけど…」

「日付変わっただろ?今日は、何でもしてくれるんだよな…?」

 

 

あぁ、あたしの安眠、そして貴重なお休みよ…さようなら!

 

 

「大丈夫だって、眠気なんてすぐにすっとんじまうからな」

「そ、そういう問題じゃねぇぇぇーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

夏の夜にご注意を

 

(もう夜中に人が来ても断固玄関は開けません。絶対あけてやりません。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

夏の暑さに耐えれずもがいてた時に浮かんだお話です(ぁ

しかも何日か放置してたので締めをどうするか忘れちゃってまして。

何この中途半端な終わり方!…後は皆様のご想像にお任せいたします…(オイ

 

2007/08/18