「おはよーございまーす!」
朝から元気な声が真選組屯所の廊下に響く。
「おはよう、ちゃーん!」
そして近藤さんの声。
「あ、おはようトシ!」
「はよー…」
朝からにっこにっこしてるコイツ、は真選組隊士の中で紅一点。
よくもまぁこんなむさ苦しいところにいられるモンだ。
「おはようごぜーまさぁ」
「おはっよー総悟!」
にっこにっこ。誰にでもにこにこにこにこ。
…いや別に俺はどうでもいいんだ。別に何も気にならない。
「…トシー?どしたの?」
「うおっ、な、なんでもねぇよ!」
下から覗き込む。背が低いから自然と上目遣いになるわけで。
そしてニヤリとうざったい笑顔で言う総悟。と総悟の笑顔でこんなに差がでるもんなのか。
「…土方さん、なに考えてるんですかィ?このムッツリ土方!」
「誰がムッツリだ!!」
「じゃあオープンですかィ?うっわー皆に言ってきてやらねーと!」
「総悟ォォォ!!!」
どたどた走り去っていく土方と沖田。
そしてあくびをしながら歩いてくる山崎。
「おはようちゃん。……また?」
「おはよ、退。…うん、また。毎日面白い人たちだよねー!」
「面白いで済ませていいの!?あぁあ廊下が破壊されていく…」
これが、いつもの朝。
部屋にこもって書類を片付ける。一通り区切りがついたところで息抜きをしようと戸を開けて廊下に出る。
「いっくよー!!ハイッ!」
「俺に勝とうなんてまだまだだよちゃんッ!!」
何仕事中にミントン試合してんのあいつらァァァァ!?
「…うぐぅ…やっぱり退は強いね…!完敗だよー!」
へらりと笑う。真っ黒の上着を脱いでいる所為か余計に笑顔が眩しい。
また他のヤローに笑顔ふりまきやがって。…って何考えてんだ俺!!
「あ、トシ!」
「ゲッ副長!」
俺に気付いてにっこり笑って手を振ると正反対に怯える山崎。
「てめーら…仕事サボってんじゃねぇぇぇ!!」
「ぎゃあああああ!!!せせちゃんに、逃げ…!」
「じゃあトシもサボりなよ!」
親指をぐっ、とたてて言う。
「「………」」
黙り込む俺と山崎。
…お前はアホかぁぁあ!!と言いたいのに声がでない。
「なーるほど。確かに土方さんがサボってんなら俺も堂々とサボれまさぁ」
ひょっこりと俺の後ろから総悟が顔を出す。…アイマスクを首からさげて。
「お前はいつだって堂々とサボってんだろうが!!」
「心外でさァ!俺はちゃんと睡眠仕事を…」
「何だよ睡眠仕事って!!」
「あははは、いいなぁそれ!」
けらけら笑う。
「ですよねィ。今度一緒にやりますかィ」
すかさずを誘い込む総悟。
あーなんか無性に腹立ってきた…!
「お前ら普通に働けっつってんだろーがーーーー!!!」
休憩しようと思って廊下に出たはずが、余計に疲れた。
あれから山崎をボコッて、総悟には今日の分の仕事終わらせるまで夕飯ナシ命令を出して、には…。
「トシー、持ってきたよ、お茶!」
盛大に怒鳴り散らした俺の喉を潤すためのお茶汲みを頼んだ。
「あー、さんきゅ…」
が持ってきたお盆にはコップがふたつ。
差し出されたコップを受け取る。そしてすとん、と俺の横に座りお茶を飲む。
「ふぅ、疲れたー」
「いやお前何もしてねーだろ」
「お茶汲んできたよー」
へにゃっと笑う。なんつー情けない顔してんだコイツは。
はいっつも、誰の前でも、こうやって笑ってるんだ。…あぁ、むかむかする。
「トシ?眉間にシワがよってるよ?」
「…お前、あんまり笑うな」
「……え?」
我ながら、大分言葉が足りなかったんじゃないかと思う。
ちらりと横を見るとの顔からはさっきまでの笑みが消え、唖然としている。
違う、違う。悲しませたいんじゃなくて、ただ。
「あんまり他の男の前でへらへら笑ってんじゃねーっつってんだよ!!」
…今度は言葉が余分につきすぎた気がする。
「…と、トシ…あの、それはもしや…ヤキモチ?」
へらへら、じゃない。にやり、というアイツ、総悟と似た感じの笑みをは浮かべる。
「なっ…バカなこと言ってんじゃねぇ!!そんなんじゃねぇよッ!!」
「つつつツンデレ!?トシって実はツンデレだったの!?」
がばっ、と立ち上がって叫ぶ。ってオイ!叫ぶな!
「うわーーーっ!!トシ可愛い!!!つ、ツンデレ…ぶふっ!」
「笑うな!!つーか可愛くなんかねぇぇえええぇぇぇえ!!!!」
俺との叫び声を聞きつけた総悟が乱入して乱闘が始まる頃には、既に空は赤色に染まっていた。
可愛くなんかねぇ!
(お前らみんな頭の中にぜってー花畑あるだろ!だからそんなにテンション高いんだろ!)
あとがき
ツンデレな土方さん。ツンデレ…になってますかね?
妙に今回のヒロインさんはテンションが高いですよね。でも書いてて楽しかったです!
土方さん語りじゃないとこのヒロインさんじゃ話進まなさそうです。
2007/09/21