「すいませーん、依頼に来たんですけどー!」
めずらしく依頼が来た。…それも、朝早くから。
「あ、どうぞ上がってくださーい」
続いて新八の声。あー、ちくしょう、めんどくせぇ。
「銀ちゃん、お客さんヨ!なんか金持ってそうなおばさんネ!」
…報酬には期待ができそうだ。
「壁の修理?」
「そうなのよー。色が落ちちゃったりしててねぇ。だから、今から修理してちょうだい」
上品そうに笑うおばさん。…金あるんだったら建築会社にでも頼めよ。
「おばさん、今からって急だなオイ。…よし、行け新ぱ」
「じゃあ頑張ってくださいね銀さん!」
「ちゃきちゃき働いてくるヨロシ」
無理矢理立たされてぐいぐいと背中を押されて万事屋を追い出される。
「ちょっ、お前ら!?」
「あ、銀ちゃん。おはよう」
「!」
にっこりと笑う。本格的に仕事なんかしたくなくなってきた。
「どうしたの?…あ、もしかして依頼?」
俺の後ろのおばさんをチラリと見て言う。
「そーなんだよ。まったくめんどくさ…」
「そっか!頑張ってね、銀ちゃん!」
「……お、おう」
今日、俺が話すこと途中で遮られてばっかりじゃね?
でも…まぁ、あんなふうに笑顔で言われちゃーなー。しょうがねぇ、頑張るか。
「じゃ、行ってくるな」
「うん!いってらっしゃい」
手を振るをちらりと見てから、仕事へ。
「……ふふっ、がんばってね、銀ちゃん…」
がらがらと万事屋の戸をあける。
「あ、さん!おはようございます」
「あ、!丁度今銀ちゃん出掛けたとこヨ!」
「うん、さっきそこですれ違ったよー!」
新八君と神楽ちゃんにあいさつしてから万事屋に上がる。
今日は銀ちゃんの誕生日。そしてこれはすべて私の計画通り…!
依頼が来て、銀ちゃんは出掛けて、その間に万事屋を飾り付けて、銀ちゃんが帰ったら誕生日パーティ!
さっきのおばさんは私の家の隣に住んでいて、丁度壁の修理を頼もうとしてたから紹介ついでに協力してもらった。
「ここまでは計画通り…よしっ、飾りつけは頼むよ二人とも!」
「「了解ーー!!」」
私は台所でケーキ作り。
でも、もうそろそろお昼か…。ちょっと様子見で銀ちゃんのところへ行ってみようかな。
スポンジを焼いている間に差し入れに持って行くお弁当を作る。
「いい匂いアルー!」
「あれ、お弁当ですか?」
「うん、ちょっと銀ちゃんの様子見てくるから」
「のお弁当…羨ましいヨ!」
作り終えたお弁当をじーっと見ながら言う神楽ちゃん。
「今度神楽ちゃんにも作ってあげるよ」
「ほんとアルか!」
「うん!」
お弁当を持って私の家…の隣、おばさんの家へ。
「あーもう!こんくらいでいいじゃねーか!」
「駄目よ!もっとキッチリ修理してくれなくちゃまた頼まなきゃいけないじゃない」
「建築会社にでも頼めっつーの!」
見事に口喧嘩しながら仕事してるなぁ。
「銀ちゃーん、仕事はかどってるー?」
「ー!いやーはかどってるけどね。もう銀さんクタクタなんですけど」
「ふふー!そう思って、はい、差し入れのお弁当!」
作ってきたお弁当を銀ちゃんの前に差し出す。
「弁当…!?ありがとうな、!」
お弁当を受けとって、がしっと私の手を握って言う銀ちゃん。
まぁ、計画の内とはいえ、誕生日に仕事させたの私だしね!これくらいはしてあげないと。
「じゃあ、頑張ってね!」
「おう!」
「ただいまー!」
「おかえりアルー!」
玄関を開けて、居間に入ると普段とは格段に違う、綺麗な飾り付けがされていた。
「うわー!すごいすごいっ!」
これは銀ちゃんが帰ってきたときビックリするだろうなー。ううっ!今から楽しみっ!
「さん!銀さんはどうでした?」
「まだ仕事終わらなさそう。ちょうど夕飯くらいに帰ってくると思うよ!」
さて私はケーキ作り…それと夕飯作り頑張らなきゃ!
辺りが夕焼けから真っ暗な夜に変わる頃、銀ちゃんが帰ってきた。
「ただいまー……あー…疲れた…」
「おかえり銀ちゃん!」
「ー、弁当うまかったぞー」
空になったお弁当箱を受け取る。
「ほらほら、夕飯の用意できてるから!来て、銀ちゃん!」
ぐいっと銀ちゃんの手を引っ張る。
「いやいや、そんな慌てなくても夕飯逃げねーだろー」
だるそうに言いながら、居間の戸に手をかける。そして。
「お誕生日おめでとうアルーーー!!!」
「おめでとうございます銀さん!!」
パーン!というクラッカーのはじける音と、神楽ちゃんと新八君からのお祝い。
「…え!?は、あれ、俺今日、誕生日…!?」
銀ちゃんは、かなりうろたえて私の手を握ったまま慌てている。
「そーだよ。おめでとう、銀ちゃん!」
「……マジでか。ありがとうな……って、あーくそっ、なんか恥ずかしいなチクショー!」
ほんのり顔が赤い銀ちゃんを居間に引き込み、皆で夕飯の時間!
いつもよりちょっと豪華な夕飯を食べ終えてから、私の手作りケーキを出す。
フルーツたっぷりのベリータルトケーキ。
「じゃーんっ!今日は仕事もしたから甘いもの食べて疲れをとってね!」
「うおー!すっげーー!!店開けるよ!」
ふふふ、3日前くらいから家で特訓した甲斐があったわ!
ケーキを4人分に切り分ける。銀ちゃんのは少しだけ大きめに。
「おいしそうネ!」
「さん相当気合入ってましたもんねー」
「ありがとうな、!」
そう言いながら銀ちゃんは私の肩に手を回して引き寄せる。
「…どういたしまして!」
あぁ、喜んでもらえてよかった!ほんとうに!
「じゃ、僕らは今日は帰りますから」
「気をつけてね」
「銀ちゃん私のに何かしたら許さないヨ!」
「誰がおめーのだよ。俺のちゃんですー!」
夜と言ってもかぶき町は賑やかで、多少大きな声を出してもかき消されていく。
「ほら、早く帰るよ神楽ちゃん」
「ー!!銀ちゃんに何かされたらすぐ連絡するネ!」
「あははは、ありがとー!じゃあまた明日ねー!」
ずるずると引っ張られていく神楽ちゃんと、引っ張ってる新八君に手を振る。
「んで、」
「何?銀ちゃん」
「お前も帰るのか?」
きゅっと私の手を握って言う。
「…今日は銀ちゃんの誕生日。…だから、頼みごと聞いてあげる。ご要望は?」
にこり、と微笑んでたずねる。
銀ちゃんはにまっと笑って私をぎゅうっと抱きしめる。そして、耳元で言う。
「万事屋泊まってけ。…今日は一緒に寝ようぜ、」
「仰せのままに!」
さぁ、これで私の計画は終わり。残りの夜の時間は、あなたの言うとおりに。
貴方の為の計画は大成功!
(貴方の為にこの計画を何日前から考えたと思ってるの?それだけ貴方の誕生日は大切な日なのよ!)
あとがき
長ッ!!(ぁ
すいません。読むのお疲れ様でした…!ヒロインさんがこんな綿密な計画立てるから…!ムキィィ!(ぇ
でも愛ゆえに、です。 銀ちゃんお誕生日おめでとう!
2007/10/10