「ただいまー…」

誰もいないのにいつもバイトから帰ると言ってしまう。

うーん、今日は疲れた。

 

 

なんといっても今日はハロウィン。バイト先、大江戸マートでも店員は常にお菓子を持ち歩いてて

子供たちに「トリックオアトリート!」といわれるたびにお菓子をあげる。当然仮装もしていた。

楽しいんだけど、いつもの倍くらい疲れるんだよねー。

 

 

 

ばたんっ、とソファに倒れこむ。

服は仮装のまま。私の格好は魔女スタイル。結構可愛いからそのまま帰ってきちゃった。

店長曰く、服は貰ってもいいらしいし。…まぁ二度と着ないだろうけどね!

 

 

 

 

 

 

ソファでぐったりしてると、ガラガラッ、という音が聞こえた。

…え?

おいおいちょっと待とうよ。ガラガラッ、ってそんなまさか。家じゃないよね。

なんて思う私の気持ちを足蹴にするかのように廊下からギシッ、と床のきしむ音が聞こえる。

 

 

泥棒?それとも殺人鬼?

…なんにせよ、危ない。かと言って、逃げ場もない。

 

 

床の音は確実にこっちに近づいている。

魔女アイテムとして持っていた杖をぎゅっ、と握って静かに立ち上がり、扉の前に立つ。

…やるしか、ない。頑張れ私!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トリックオアトリートー!!」

「うわあああああァァァ!!!」

 

バンッと扉が開いた瞬間に杖を思いっきり振り下ろす。

ドカッ!!と重い音が響く。

 

 

 

…って、あれ、さっき何か言わなかった?

おそるおそる今殴り倒した人を見る。

 

 

「ぎっ、銀ちゃああああん!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「酷くね?なぁ。彼氏に対してこの仕打ちは何?」

「だから、ごめんってば。っていうか不法侵入した銀ちゃんも悪いからね」

幸いにも杖はそんなに硬い素材じゃなかったから、軽い打ち身で済んだ。

 

「っていうか銀ちゃん…何その格好」

「見てわかんねーのかよ、吸血鬼だよ」

ばさっとマントをひろげて得意げに言う。

さっきまでオールバックだったはずの髪は、私が思いっきり叩いたお陰でいつもの天パに戻っている。

 

 

「大体だって魔女っ子じゃねーかよ。ノリノリじゃねーかよ」

じーっと私を見ていう銀ちゃん。

「バイト帰りなんだからしょーがないでしょ。ノリノリじゃないよ」

むしろさっき帰ったばっかりでお疲れだわ!

 

 

「何ィィ!!お前そんな足出してバイトしてんのかァァ!!」

「しょうがないじゃんかー!…まぁ足出すのは嫌だけどさ。一日だけだし。主に子供相手だし」

室内仕事だから別に寒いとかはなかったけど、実は凄く恥ずかしかった。

いやだってコレ、結構スカート短いんだよ!同じバイトの友達も言ってたけど短いんだよこれ!

 

 

「お前なぁ、子供と言っても最近の子供ナメてんなよー」

「あー、確かにね。足にまとわりつかれると動けないしねー」

 

魔女さんだー!とか言ってひっついてくる子は、正直、可愛い。目がキラキラしてた。

けど、あんまりひっつかれると動けないわけで。

お陰で疲れも倍増だったんだよねー。

 

 

 

ひとりそんなことを考えていた所為でピシリと銀ちゃんの表情が固まったのに、私は気がつかなかった。

 

 

 

「…ー…。お前彼氏以外の男にそんなやすやすと足触らせてんじゃねーよっ!」

いきなり腕を掴まれ床に押し倒される。

「はぁ!?男って相手子供って言ってるじゃん!っていうか女の子もいたし!」

「だーめ。は俺のだから。他の奴には触れさせませーん」

 

 

「何子供みたいなこと言ってんのよ!!っていうかどいて!」

普段なら思いっきり暴れて逃れるところだけど、流石にスカートで暴れるのは、気が引ける。

「…そーいえば…さっきの返事は?」

「は?返事?」

何か聞かれたっけ?」

 

 

「トリックオアトリート」

 

 

 

今度は私の顔がぴしっと固まる。反対に銀ちゃんの顔はにやけていく。

「…持って、ない、けど!」

「はいはい、菓子持ってねーんならお仕置き…じゃねぇや、イタズラだろ?」

にっこり。銀ちゃんはそんな効果音がつきそうな笑顔をする。

 

 

「…こういうオチはありきたりだと思うんだよね。っていうか私さっきバイトから帰ったばっかりで疲れて…」

「あぁそう!お疲れ?お疲れなのちゃん。じゃーあ銀さんが疲れとってやるよ」

いい!遠慮しとく!っていうか余計疲れそうだから、いい!!」

「疲れだって度を越せば気持ちよくなるんだぜ?」

 

あぁもう、何言っても勝てそうにない。

 

「大丈夫だって。疲れはとれるか…わかんねーけど、とりあえず気持ちよくはなるから」

「大丈夫なわけあるかァァ!!いーやーだー!!」

 

押さえつけられてる腕をなんとかして振り払おうともがく。けれど、やっぱり力の差には勝てなくて。

どうしよう、なんて考えてるうちに銀ちゃんが首筋に顔を寄せてくる。

「大人しくしてねーと、マジで食っちまうぞ」

首筋にふっ、と息を吐かれて思わず動きが止まる。

「心配しなくても俺は優しいからなー。優しく悪戯してやるよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Trick Or Punishment!


 

 

「いやー、まさかお前もそんな格好してるとはなー。予想外予想外」

「銀ちゃんが来るって分かってたら急いで着替えたのに

「何でだよ!愛がたりねーよ!」

「違うよ!お菓子でも作って待っててあげたのになー、って」

「………!お前ほんっと可愛いなコノヤロー!」

 


 

 

 

 

 

 

 

あとがき

ハッピーハロウィーン!ギリギリ間に合いましたウッホーウ!(←30日ギリギリまで書いてた

甘いのは無理でした。ギャグにしか走れませんでした。ちくしょう、力量不足ですみません。

題名の意味は『いらずらかお仕置き、どっちだ!』みたいなそんな感じだと思って置いてください…!

2007/10/31