コタツに首をうずめてテレビのカウントダウンを聞いてる、そんな大晦日。
『さん、にぃ、いち、!あけ』
「「「「「あけましておめでとォォーーー!!!」」」」」
テレビの音は、たやすくかき消された。
「…あんたら、新年からうっとおしいのよォォ!!!」
新年を迎えた瞬間、あたしの周りにいる人たちによる、あけましてコールが響く。
絶対隣の家まで聞こえてたよ今の!
「ぜってー俺が一番にに言えてたよなー!」
「違うヨ銀ちゃん!私が一番ネ!」
あたしのななめ横、コタツに入ったまま言い合いをはじめる銀さんと神楽ちゃん。
「俺らは新年から仕事もあるし…言えるの、今くらいしかなかったんだよ」
「いやぁほんと、土方さんは大変ですねェ。俺ァ時間たっぷりあるんで」
「ねぇだろ。お前も仕事だろうが」
あたしの向かい側でコタツを取り合いながら言う土方さんと沖田さん。
時々沖田さんの足がガンガン膝にあたって痛い。
っていうかむしろ故意でやってる?新年から嫌がらせ?
「あ、あの、ごめんねちゃん…こんな大勢でおしかけちゃって」
コタツに入れなかった山崎さんはすみっこで貸してあげた毛布にくるまっている。
っていうか今の段階で一番可哀想なポジションにいながら、言っていることは一番まとも…!
「いや、まぁ新年早々賑やかなのはいいことなんだけどね、何であたしの家にあつまるわけ?」
もっと他にあっただろうに。皆、少なくともあたしの家より広いところに住んでるわけだし。
真選組の屯所なんて広さ的にはピッタリだったはず。
「そりゃ本当はと万事屋でふたりっきりーで新年迎えたかったけどよォ、お前この寒い中呼んだって来ねぇだろ」
「さっすが銀さん。わかってるね!」
そう言ってすっぽりとコタツに入るあたし。この寒い中に外なんか出歩けるわけがない。
「まぁ年も明けたことですし、初詣いきやせんか」
「やめとけ。こいつと行くとろくな事ねぇぞ」
「今年の運を全部吸い取られると思いますよ」
沖田さんの言葉に思いっきり否定を重ねる土方さんに山崎さん。
「まぁそういうことで、あいつらはほっといて、俺と初詣行こうぜ」
銀さんはすすっ、と近づいてコタツの中のあたしの手を握って言う。
「旦那ァー、抜け駆けはいけやせんぜ!」
沖田さんがそういった瞬間、コタツの中でごすっ、と鈍い音がした。
「いってェェ!テメー何すんだコノヤロー」
「抜け駆けさせねぇっつってんだろ」
「お前らさっきまで喧嘩してたくせに何団結してんだよ!!」
ぎゃんぎゃんと言い争いを始める銀さんたち。
目の前で繰り広げられるそれは、普段の日常となんら変わらない。
けど、それを、言うほどに嫌がってない自分がいるわけで。
そんなことをぼーっと考えていると、くいくい、と服のすそをひっぱられる。
「!ああいうバカどもはほっといて、私と初詣行くアル!」
こっそりと、周りに聞こえないように言う。
「実は神社で姉御と新八と待ち合わせしてるアル。早くいかないと遅れちゃうヨ」
ちらり、と今だぎゃーぎゃー言い争っている銀さんたちを横目で見る。
「…待ち合わせに遅れるのは、駄目だよね」
そう言ってにこり、と笑いあうあたしたち。
あの喧嘩してる人たちは、おそらくみんなで行こう、と言っても喧嘩するだろうし。
「じゃ、こっそり、行っちゃおうか!」
「うんうん!早く行くネ!」
こっそりとコタツを抜け出して、玄関へ。
先に靴を履いて表に出た神楽ちゃんに手を引かれて、神社へ向かう。
そのすぐあとに、ぎゃーぎゃーと騒ぎながら彼らが追いかけてくる。
「神楽ァァ!お前さりげなく何勝手なことしてんだコラァァ!」
「つーか何手ェ握ってるんでさァ!そこは俺の場所だろ!」
「え、あたし!?」
猛スピードで走ってくる皆は、なんかもう、恐ろしい。
おかげで逃げる必要はないのに、自然と足が速まって、ついには走り出す。
そして新年早々、神社までのマラソン大会が始まる。
神社では新八君やお妙さんが待っててくれて。何故か近藤さんはお妙さんに踏まれてて。
…今年は疲れる年になりそうです!でも、きっと楽しい一年になると思います!
みんなと一緒なら、きっと、ね!
今年も彼らと共に
(本当は嬉しかったよ、皆が一緒にいてくれて。今年も、こうやって笑っていようね!)
あとがき
あけましておめでとうございまぁぁーす!!!
今年もどうか、風村雪を、朧月書店をよろしくおねがいします!
最期は無難に神楽オチでいきました。中盤で男どもが出しゃばってるので、ね!(痛々しい言い訳
2008/1/1