お昼ごはんを食べ終えた後。
私はお茶を飲みながら、雑誌を見ていた。
「うー…」
向かい側のソファに寝転ぶ銀ちゃんから、何だか呻き声みたいなものが聞こえる。
…あ、今日お通ちゃんのCD発売日なんだ。だから朝から新八君いないのかー。
「うーあー…」
銀ちゃんの手に持つジャンプではなく、私の持つ雑誌からはぺらりと紙のめくれる音がする。
神楽ちゃんは今頃駄菓子屋かなー。んまい棒の新しい味が出るとか何とか言ってたし。
「うぅぅーーー」
「…銀ちゃんうるさいんだけど」
いい加減耐えられなくなってきた私は、雑誌から顔を上げて言う。
「糖分が足りないんだよー。ちゃんなんとかして」
「無理」
「即答?ちゃん俺を見殺しにする気?」
「そんな大げさな」
糖分不足で死ぬなんて聞いたことないよ。っていうか医者に止められてるでしょうが。
なんて思いながら雑誌を捲る。
ぺらりとページを捲った先に書いてあったのは、アイスクリームの作り方。
あ、この材料なら今あるし、作れるかも…。
「んー…いいよ、作ってあげる」
「…え。ええぇぇ!?何、どういう風の吹き回し!?」
銀ちゃんは、がばっと勢いよくソファから起き上がって言う。
「そういうこと言われるとやる気でなくなっちゃうなー」
「すいませんでした様」
「よろしい。…時間はかかるけど」
「の手料理ならどんだけでも待てるから、頑張ってきてくれよー」
ぽすっ、と再びソファに沈み込む銀ちゃん。
私は雑誌を持って台所へと向かった。
さて…折角手作りするわけだから、砂糖控えめにした方がいいよね。
銀ちゃんのおかげで、お菓子作りの道具は割りと揃ってる。
ずらりと道具や材料を並べると、なんだか妙に本格的な感じがしてきた。
「…頑張ろうかな」
あれから頑張って作ったアイスは今は冷蔵庫の中に。
本当はこれで終わりだったんだけど、やり出したら止まらなくなってきちゃった。
そんなわけで、アイスを冷やす間にパフェ作りの準備を始めた。
「……や…やりすぎた」
ちょっとしたおやつだったはずが、目の前にあるフルーツパフェはえらく気合の入った感じに仕上がった。
「ほんとはお菓子作りしたくてたまらなかった子みたいじゃん私…!」
まあ作ってたら楽しくて、つい張り切っちゃったんだけどね!
とりあえず、まだソファでごろごろしているであろう、銀ちゃんのところへ行く事にした。
「ぎ、銀ちゃーん…?」
かたん、と静かに机にパフェを置いて、ソファに寝転ぶ銀ちゃんの顔を覗き込む。
さすがに待たせすぎたのか、くーくーと静かな寝息を立てていた…かと思いきや。
「糖分の香りがするぅぅ!!!」
そう叫んで、がばっと勢いよく起き上がる。
「び、びっくりするじゃない!もっとゆっくり起きなさいよ!!」
ぺしんっと軽く銀ちゃんの頭をはたく。
驚きすぎて心臓はどきどき言ってるし、力も入らなかった。くそう。
そして机の上のパフェを見て、呆然としてる銀ちゃん。
「…」
「は、はい?」
ぎゅ、と私の両手を握って言葉を続ける。
「俺すっげー感動しちゃった。こんなすっげぇの作ってくれるなんて思ってなかったんだ…!」
ぎゅううと手に力を込める銀ちゃん。
今私の心臓がどきどきと鳴っているのは、さっき驚いたからか。それとも…。
「なァ、。俺の頼み…もう1つ聞いてくれねぇ?」
「…な、なに…?」
「食べさせてくれねぇ?」
調子に乗るのもいいかげんにしろよコノヤロー。
…と、いつもなら言うはずなのに、今日の私は違っていた。
「…今日だけ、だからね」
きっと今の私の顔は、真赤になっているんだろう。
目の前に座る銀ちゃんのにやにや笑顔が、いつもよりパワーアップしてる。
「は、はい、あーん」
かたかたと少しだけ震える右手でスプーンでパフェをすくい、前へ差し出す。
それをぱくりとおいしそう…っていうか嬉しそうに食べる銀ちゃん。
「んー!美味い美味い。いつもよりすっげぇ美味いー!」
「そ、それはよかった、です」
にこにこと笑う銀さんを前に、私は顔が暑くてたまらなかった。
「すっげー顔赤いよー?大丈夫かー?」
「大丈夫なわけあるか」
にまにま笑顔で聞いてくる銀ちゃんに、小声でそう答える。
「そんなに照れんなって。それとも、意識してくれちゃってたり…?」
少しだけ下を向いていた私の頬にするりと銀ちゃんの手が添えられる。
どくん、と一際大きく心臓が音を立てる。
「ぎ…銀ちゃんっ…ほら、口開けて、あーん!」
「むぐっ」
押し込むようにスプーンを突き出す。
…食べてる間は大人しいんだよね。
とりあえず、私の心臓がおさまるまで、銀ちゃんにはこうして待っててもらおう。
「はい、あーん」
「なになに、ちょっと乗り気になってきたんじゃね?」
「え、ま、まあね!」
このパフェが無くなる頃には、さっきからうるさく鳴っている心臓の音の意味も、
こうして銀ちゃんの頼みを聞いてしまうわけも、全部わかるだろう。
そうしたら、今度は私が貴方の顔を真赤にさせてやるんだから。
「なーに笑ってんの、」
「ん?ううん、なんでもないよ。それより、ほら、あーん」
パフェがなくなるまで、もう少し。
甘い香りに包まれて
(餌付けしてる気分でだんだん楽しくになってきたっていうのは秘密にしておこう。)
あとがき
書いてる私の顔が真赤です(←
唯斗さんに捧げる、相互リンクありがとうございました小説ー!
リクエストが『銀さんがヒロインにパフェを「はい、あーん」と食べさせてもらう』
っていうシチュエーションだったのですが…!ちょ、何このリクエストに添えてない感じ!
うわああ、すみません!も、もう、甘夢のかけないヘタレ夢書きですみません…!
2008/5/17