今日は久々の非番。

時間もあることだし、土方をどう苦しめるかの作戦でも練ってやろーかと思って部屋の戸をあけた。

 

「おはよう、すずめさんっ!今日はいい天気ね!」

 

 

何故、この男所帯の真選組に女がいやがるんでィ。

しかもぴょんぴょん飛び跳ねてすずめ追いかけてらァ。

 

「…おい、おめーどこから入ってきた」

「ねーすずめさんっ、あたしの話聞いてくれるー?」

「シカトですかィ…!?」

「え!?」

 

おっと思わず叫んじまった。

びくりと肩を震わせて、こっちを向いた女は俺と同い年くらいの奴だった。

そして、一言。

 

 

 

「…あなた…あたしが…見えるんですか…?」

 

 

 

 

「…はァ?」

「あ、やっぱ、気のせいだよねー。うん。違うよね。…あ、すずめさん行っちゃった…」

「見えてますぜィ。そこの姉ちゃん」

「…うそ…」

 

 

目をぱちぱちと瞬かせて、女はこっちへと歩いてくる。

「あの…あたし、っていいます」

「俺ァ沖田。沖田総悟でさァ」

そう名前を告げると、女…は俯いてから、何か思い切ったように言った。

 

 

 

「あの、人を、捜してるんです!!お願いします、手伝ってください!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

話によると、はなんと幽霊らしい。

土方さんに見せたら卒倒モンだと思ったけど、見えないんじゃしょうがねェ。

実際、さっき通りかかった山崎のヤローも、の方に目もくれず歩いていった。

 

 

そして命日の今日だけ、この世にいられるらしい。

タイムリミットは今日が終わるまで。それまでに、会いたい奴がいるらしい。

 

「めんどくせーけど…まぁ何も予定ねーから、付き合ってやりまさァ」

「!ありがとうございますっ、沖田さん!」

そう言って笑った顔は、一瞬言葉を失うくらいに、綺麗、だった。

 

 

 

 

「で。その人特徴は?」

「えと…銀髪で…甘いものが好きで…いつも木刀持ち歩いてて…すごくかっこいい人です!」

「……へェ…」

 

条件を、1つだけ除いて、バッチリと当てはまる奴がいた。

 

 

 

「それで、名前は坂田銀時っていうんです」

 

 

最悪だ。

 

 

 

「…あー、その野郎なら知ってまさァ」

「ほほほ本当ですか!?ど、どこにいるかわかりますか!?」

「あぁ。わかりまさァ。だから道教えて…」

「連れてってください!!」

 

「…は?」

 

 

「連れてってください。あたし、方向音痴で…きっと今日中にたどり着けませんっ!」

今度は泣きそうな顔で、そう言う。

普段の俺なら突き放して、悲しむ顔見て笑うくらいなのに。

 

「…しょうがねーな」

 

今日は非番で、時間があるからでィ。

そう自分に言い聞かせて、俺はと、かぶき町へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わーっ、わーっ、あの頃と色々違う!いろんなお店ができてるー!」

きゃーきゃーと騒ぐ、幽霊女の声はこのうるさいかぶき町にいてもよく聞こえた。

「うるせーやィ。ちったぁ静かにしなせェ」

「でもでもっ!久しぶりなんですもん!」

目をきらきらと輝かせて言うは、子供みたいだった。

 

 

 

 

そうやって歩いてるうちに、旦那の家っつーか万事屋にたどり着いた。

「旦那ァー。いやせんかィ?」

チャイムなんてものを押さず、どんどんと扉をたたく。

 

 

「銀さんは今出掛けてて…ってあれ、沖田さん?どうしたんですか、お1人で」

「……ちょっと話がありやしてね。どこ行ったか知りやせんかィ?」

お1人で。

眼鏡の野郎に気付かれないように、ちらりと横を見るが、は大して気にした様子もなかった。

 

 

「うーん…きいてませんね…。どうせパチンコじゃないですかね」

「そーですかィ。ありがとうごぜーやした」

 

 

それだけ言って、万事屋の階段を降りる。

気付けばは歩くというより、少し浮いて飛んでいるような感じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あきらめなせェ」

「えぇっ、そんなぁ!」

パチンコ屋、とはいえそんなモンこのかぶき町にはごまんとあるでさァ。

見つかりっこねぇ。

 

 

「沖田さん…」

しゅん、として泣きそうな面して言う。

「…しょーがねぇな。旦那がよく行ってそうなとこ探しやすぜ」

「はいっ!はいっ!ありがとうございます!!」

花のような笑顔で言う。なんでこう、ころころ表情変わるんだこいつは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチンコ屋を巡っている最中に通りかかった道でチャイナ娘に会った。

「何してるアルか税金ドロボー」

「うるせーやィ。毎日遊んでるおめーに言われたくありやせんね」

「ふざけんじゃねーヨ。ちゃんと…たまには仕事してるネ!」

 

あー、だめだ。こいつじゃ話しにならねぇ。

…けど、一応聞いてみるか。

 

 

「おいクソチャイナ。万事屋の旦那見かけやせんでしたかィ」

「銀ちゃんなら、そこでパチンコしてたネ。でもさっき向こうの方行っちゃったヨチンピラ税金泥棒」

 

こいつが殴りかかってこないのは、両手に抱えた駄菓子の所為だろう。

とりあえず、もうパチンコ屋を捜す理由はなくなっちまった。

 

「そーですかィ。じゃあな、その菓子食いすぎて腹壊して死ねチャイナ」

「マヨラーの乗ったパトカーに轢かれて死ねサド野郎」

 

…そいつァかなりの屈辱でさァ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「沖田さん、あの子と仲良しなんですね」

「今の会話のどこでそう思ったんでさァ。3秒以内に言わねーと逆さ吊りにしてやらァ

えええええ!?え、だってなんか楽しそうでしたけど!」

 

わたわたと手を振りながら少し俺と距離をあける。

仲いいわけ、あるか。冗談じゃねぇ。

…それにしても、また見えてなかった。

 

 

「それより、どーすんでさァ。行くあてがなくなっちまったぜィ」

「う……あ!あの、甘味屋ってありませんか?」

「甘味…」

 

そうか。そこが残ってた。

 

 

 

「早く行きやすぜィ。急がねーとまた移動しちまう」

「は、はい!」

 

 

 

そう言って、俺ァの冷たい手を掴んで、歩き出した。

周りからは、どう見えているんだろう、なんて考えもしねーで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「銀髪で天パの人…ですか。それならさっきまでいましたけど…」

「チッ、またですかィ…」

 

ファミレスで、1人でパフェ2つ頼んでいたという、旦那。

パチンコで負けた腹いせか、それとも勝った嬉しさか。

 

 

「ありがとうごぜーやした」

そう言って、すぐさま店を出た。

 

 

 

 

外に出ると、強い日差しが照りつけていた。

あぁ、もう昼か。

腹も減ったことだ。そう思ってもう一度店へ戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

ホリデー



(あぁめんどくせェ。なんでこんなことになっちまったんでィ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

ノリだけで書き始めてしまったお話。幽霊ヒロインです。受け付けない人、すみません。

とりあえず前編終了。

2008/06/04