今日からちょうど5日前の10月5日。

私は万事屋で、銀ちゃんに向かってこう叫んだ。

 

「銀ちゃん!5日後の銀ちゃんの誕生日は盛大に祝ってあげるから期待しててよね!」

「…いや、お前普通そういうのドッキリとか仕掛けねーの?言っちゃうの?」

 

 

 

そんなやりとりのあった日から5日。今日は銀ちゃんの誕生日当日の10月10日。

私は目一杯おめかしして、万事屋に飛び込み…。

 

 

「ほんっとうに、すいませんでしたーーー!!!」

 

 

土下座をしていた。

 

 

 

「意味わかんねーんだけどちゃーん?5日前に期待してろっつったのは何だったわけ?」

ソファに座って足を組み私を見おろす…いや、見下す銀ちゃんはすごく怒っているのだろうけど、怖くて顔が見れない。

ちなみに新八くんと神楽ちゃんは、何の気を利かせてくれたのか私と入れ替わりで万事屋を出て行った。

 

 

 

「5日前は祝うつもりだったんです。で、昨日プレゼントを買おうと思ったらすごく私好みの着物を見つけまして」

もう運命の出会いだと思ったんだ。

これを逃してしまったらきっと後悔する…!

 

 

「気がついたらお会計してました」

「ちなみにその金は?」

「銀ちゃんの誕生日プレゼントに使おうとこつこつ貯金をしていたお金でした!」

言い終わると同時くらいに、銀ちゃんは私の頬を片手で鷲掴んだ。

 

 

「いひゃいれふ、ひんひゃん」

「あーん?何言ってんのかサッパリだなァ。まあ、別に、に期待なんかしてなかったけどな!」

ふん、と鼻を鳴らして銀ちゃんは私の頬から手を離した。

 

 

「嘘じゃないからね、本当に祝うつもりだったの!あ、ちなみにその日買ったのが今日着てるやつなんだけどね!」

「肝心なところが嘘になってるっつってんだろうがァァ!つーかもう誰の誕生日だよコレ!」

両手を広げて着物の柄が見やすいようにしてみたけど、銀ちゃんはフイと私から目をそらした。

 

 

「銀ちゃんの誕生日だよ!だから、目一杯銀ちゃんのために朝からおめかししてきたんだもん!」

「へー、俺のためにねぇ…」

「そうそう!朝から銀ちゃんのことしか頭になかったんだから!」

朝起きて一番にカレンダーを確認。それから着物と髪飾りを選んだり…何をするにも頭の中は銀ちゃんで一杯。

 

 

「そーかそーか、俺に怒られるパターンでも考えてたんだろ」

「そうそう。このパターンできたらこういう謝り方を…って違う!違うから!」

ばっと顔を上げて、私を呆れたように見つめる銀ちゃんの目を見つめ返す。

 

「お祝いは金額じゃないんだよ!気持ちだよ!ほら、受け取れマイハート!」

「ざけんじゃねーよ!が来て早々に土下座しだした時から俺のハートはボロボロだコノヤロー」

 

 

銀ちゃんはばりばりと頭を掻きながらぼふっとソファに背を預けた。

今日はまだ、銀ちゃんの笑顔を見ていない。このままじゃ折角の誕生日が台無しになってしまう。

それだけは…それだけは阻止しなくちゃ。

 

 

 

「聞いて銀ちゃん!私っ……!」

ばっと勢いよく立ち上がった瞬間、さっきまでの土下座からくる痺れが足に走った。

 

「いたたたたた!!足っ!足痺れたぁぁ!」

「あ?…って待て!おま、こっちに倒れるんじゃねーー!!!」

 

銀ちゃんの叫びもむなしく、私は銀ちゃんの鎖骨あたりに頭から倒れこんだ。

膝をソファに乗せて足先は宙に投げ出し、ソファの背もたれ部分を両手でぎゅっと掴む。

 

 

 

「……お前今日ほんと何しに来たの…?誕生日と命日を同じにする気か…?」

「ご、ごめんなさい。今のは事故だから。ちゃんと祝いに来てるから、それは絶対嘘じゃないから!」

結構な衝撃だったらしく、銀ちゃんは呻きながら言葉を発する。

 

 

「私は、銀ちゃんに会えて本当に幸せだと思ってるの。たくさん、笑顔をもらってる」

ソファから手を離してそっと銀ちゃんの肩に手を置く。

「だから今日は私が銀ちゃんにたくさん笑ってもらおうと思ったの」

私の声音が真剣な所為か、銀ちゃんは黙って私の言葉に耳を傾ける。

 

 

「本当はケーキやお菓子買って皆で騒いで、プレゼント渡して笑ってもらうつもりだったの」

今のところ何もできていないんだけど。

そう小さく呟くと、頭の上からため息が降ってきた。

 

 

 

「ったく、そんなに落ち込むんじゃねーよ」

ぽんぽんと優しく頭を撫でられ、おずおずと顔を上げる。

そこにはさっきまでの不機嫌顔と違って、ほんのり頬を赤く染めた銀ちゃんがいた。

 

 

「…まあ、アレだ。その…気持ちのプレゼントっつーのも、悪くはねーかもな」

「銀ちゃん…」

そう呟いて、私から視線を逸らす銀ちゃんの首にそっと腕を回して抱きついた。

 

 

「そーでしょそーでしょ!気持ちのプレゼントも悪くないでしょ、だから、目一杯受け取ってよ!」

密着した体から、私のものじゃない心臓の音がどくんと大きく鳴った。

 

「っ、分かったからしがみ付くな、首が絞まるだろ」

「とか言って本当は嬉しいくせに!銀ちゃんったら顔真っ赤!」

「うるっせーよ、ばか

 

 

やっと見られた笑顔は予定していたものとは違ったけれど、こういうのもいいかもしれない。

そう思っていると玄関の扉が開く音がした後、2人分の足音が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

「ただいま帰りました、それと…ごめんなさい銀さん!」

新八くんの言葉は、なんだか少し前に私が言った言葉と被った。

 

 

「ごめんヨ銀ちゃん。夕飯は豪華にしようと思って出かけたら、丁度日用品セールやってて新八がつられたアル」

「いや、だって!歯磨き粉とティッシュとか安かったし!今日限定だったんです、これを逃したら…!」

といいテメーらといい、俺の誕生日を何だと思ってんだァァ!!!」

 

新八くんの気持ちも分からなくもない。というか私とほぼ同じミスを犯しているんだけど。

 

 

「まあ落ち着くアル。ちゃんとケーキだけは買ってきたヨ、店で一番おっきいやつネ!」

じゃーん、と口で効果音を発しながら神楽ちゃんは洋菓子屋の可愛らしい箱を突き出す。

「なんだ、ちゃんとそういうのあるんじゃねーか!…って…なんか箱小さくね?」

「確かにお店で一番大きいって言う割には箱が小さいような…」

 

 

「ええ…店で一番大きい、カットケーキです」

新八くんが引きつった笑みでそう答える。

 

「なんでカット!?ホールケーキじゃねーのかよ!」

「金が足りなかったアル」

神楽ちゃんの言葉にぎゃあぎゃあと文句を叫ぶ銀ちゃん。

 

 

「お、落ち着いて銀ちゃん!ほら、その、ケーキひとつ注文するのも結構勇気いると思うし!」

さんの言うとおりです。結構恥ずかしかったんですよ、ショートケーキひとつロウソク付きで持ち帰りって言うの」

「そんな勇気いらねーっつーの!揃いも揃って肝心なとこ嘘になってんじゃねーか!」

しかし、ショートケーキにロウソク付けてもらうのは結構勇気がいると思う。

店員さんもびっくりしただろう。

 

 

 

 

「銀ちゃん、お祝いは気持ちアル!見た目じゃないネ!」

「な…っ」

神楽ちゃんの声にぴくりと銀ちゃんが反応する。

 

「そうですよ、僕らが恥ずかしい思いしたのも、銀さんのことを思ってですからね」

「……っ」

神楽ちゃんと新八くんの視線に言葉を詰まらせ、息を呑む。

 

 

「銀ちゃん。気持ちのプレゼントも結構良いもの、でしょ?」

笑ってそう言うと、銀ちゃんは脱力したように息を吐いた。

私と神楽ちゃん、そして新八くんはお互いに顔を見合わせて、すっと銀ちゃんに真っ直ぐ目を向ける。

 

 

 

「銀ちゃん、お誕生日おめでとう!受け取れ、皆からの目一杯の気持ちを!」

 

 

 

 

gasbag









(「…っ、撤回撤回!やっぱちゃんと糖分が欲しい!」「とか言って本当は嬉しいんでしょ!素直じゃないなー!」)

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

「さかたん」様に提出させていただきました。素敵企画に参加させていただき、ありがとうございました!

あふれんばかりの気持ちと愛情を込めて!誕生日おめでとう、銀さん!

2010/10/10