昼寝から目が覚めると、俺の両腕っつーか、まあ手首が頭の上で縛られていた。
ついでに言えば、俺の上にが乗っていた。
「いやいやいや、意味わかんねーよ何これ」
「だって銀ちゃん全然起きないし。暇だったから」
やっちゃった、と可愛く言われても、お前、この状況はいくらなんでもねぇよ。
「お前は暇になると人を縛るんですかコノヤロー」
「ちゃんと呼んだり揺すったりしたよ!でも起きないから、こう…腹いせに?」
「疑問系で恐ろしいこと言わないでくれるかなちゃーん」
は俺の上に乗るといっても、体重をかけないように体を跨いで膝立ちになっている。
おかげで俺は仰向けに寝転んだまま話が出来る訳だが…なんにせよ、腕が痛い。
「ほら、もう起きたからこれ解けって」
「うーん。なんか思ってた反応と違うんだよねー」
腕組をして唸る。
何を期待してたか知らねーけど、早いとこ解いてくれねーと痕がつくだろ。
「なんかもっと焦るとか慌てるとか…そういう反応期待してたんだけどなぁ」
「あのな、俺はMじゃねーんだから縛られたって嬉しくねーの」
どっちかといえば俺だってSなんだから、縛りたい側なんだけど。
いや、まあ、が相手なら無理強いとかしねーけど。優しくするけど。
それにしても、このまま縛られっぱなしっつーのも悔しいものがある。
「………」
俺はぼそぼそと何かを呟くフリをした。
「ん?何?」
それに気づいたは声を聞き取るためにゆっくり俺に顔を近づける。
の顔が近まってきたのを確認し、俺はにやりと笑って勢いよく腕を振り下ろす。
「へっ?」
そして驚いた顔をしているの首に腕をすっぽりとはめ込んだ。
「つーかまえた」
初めはぱちぱちと瞬きを繰り返していただが、だんだんその顔は赤く染まっていく。
「ちょっと銀ちゃん!何してんの!は、離して!」
「お前はほんっと期待通りの反応すんだな」
顔の周りに回っている俺の腕から抜け出そうと、ぐいぐいと腕を押し上げる。
ばーか、そんなくらいで離してやんねーよ。
「何だよ、俺に構って欲しかったんだろ?なら、今から目一杯構ってやるよ」
「もう十分だから!とりあえず近いから!離せばかー!」
なんとか距離をとろうと俺の肩に手をついて顔を遠ざけても、縛られた手首のせいですぐに限界がくる。
「ばかって、縛ったのお前だろーが。本当はこういうこと、してほしかったんじゃねーの?」
小さく笑って少し頭を浮かせての首筋に舌を這わせる。
びくりと肩を揺らして可愛い反応を返すを、どうしてやろうかなんて考えていた時だった。
「…ぎっ、銀ちゃんの、ばかーー!!!」
「い゛っ!?」
ゴツン、とすごい音が響いた。
頭がぐらぐらする。
の頭突き攻撃にぐらぐらしているうちに、俺の腕から抜け出したは俺から距離を取るように体を起こす。
あーくそ、せっかくいい感じだったのに。
「一緒に甘味屋でも行こうかと思って起こしたのに…もう知らない!」
「へ?ちょっと待てよ何それ初耳!」
甘味屋って、普段糖尿がなんたら言って糖分禁止令出すようなが…!?
「わ、分かった謝るから!からかってごめんなさい!だから糖分プリーズ!」
「いーやーでーす!もういいよ、神楽ちゃんが帰ってきたら誘って行ってくる」
ふん、とそっぽを向いては俺から降りる。
「ちょっと待てって!…ってあーもう、、とりあえずこれ解けって!」
「それも嫌。もうしばらくそのままでいればいいわ!」
ソファから離れてが言うと同時くらいに、玄関の戸が開く音がした。
「ただいまヨー」
そんな神楽の声と定春の鳴き声が聞こえ、は笑顔でそっちを向く。
「あ、神楽ちゃーん!あのさー」
本気で俺を置いていくつもりか、はそのまま玄関へ向かおうと足を進める。
「!!だから、行く前にこれ解いて……っうおおっ!?」
体を起こして足を踏み出したが、何かが足にひっかかり盛大に転んだ。
「いってて…何だこれ」
足元を振り返って見ると、ゆるく巻かれた紐が机の脚に繋がっている。
手首の紐ほどきつくは縛ってないものの、立派なトラップと呼べる代物じゃねーのかこれ。
「お前どんだけ暇だったわけ!?つーかマジで行くつもりか、この状態で置き去りにする気か!?」
叫ぶように言うと、は居間の戸に手をかけたままくるりと俺を振り返る。
「銀ちゃんがああいうことしなかったら、解くつもりだったけど…もう少し反省しててよね!」
床に倒れたままの俺に向かって笑顔ではそう言った。
「反省してるから、もう十分だから。もしこれ新八とかに見られてみ?大変なことになるぞ」
「まあ明日から銀ちゃんが若干遠い目で見られるくらいじゃない?」
「くらい、で済まねーから!俺のガラスハートが粉々になるから!」
ソファを支えにして体を起こす。
ぐっと足に絡まる紐のせいでの元へは辿り着けない。
「大丈夫、粉々になったら私が戻してあげるから」
いや粉々にならないようにするべきじゃねえの、なんて反論はの笑顔に気を取られて出来なかった。
「じゃ、いってきまーす」
ガララッと戸が開く音で我に返る。
「待て待て待て!それとこれとは話が別だっつーの、とりあえず解いてから行けぇぇえ!」
俺の叫びは、玄関がピシャンと閉まる音を掻き消した。
そして静まった部屋で俺はへの反撃方法を考えることにした。
くっそ、夜、覚えてろよ…!そして早く帰ってきてェェェェ!!!
Sな彼女とSな俺
(「、また銀ちゃんいじめてたアルか」「だって楽しいもん」「また反撃されるヨ」「…逃げようかな」)
あとがき
携帯にメモってあったネタです。すいませんSなのは私です。←
でもなんやかんやでラブラブなお二人です。きっと甘味屋のケーキはちゃんとお持ち帰りしてます。
2011/01/23