かち、と万事屋の時計が音を立て、針が深夜0時丁度を指した。

 

「「「「あけまして、おめでとーう!」」」」

 

同時に万事屋に、いつものメンバーの声が響いた。

今年はみんなで炬燵に入って温まりながら新年を迎えた。

 

 

 

「今年もよろしくアル、!あと銀ちゃんと新八」

「新年早々僕らの扱いがぞんざい!」

今年も新八くんのツッコミは冴えそうだなあと思いながら、私の肩にもたれかかる神楽ちゃんの頭を撫でる。

 

「神楽ァァ!今年こそそのポジションは俺のものだかんな!」

「何言ってるアルか。の肩も膝も私のポジションネ!銀ちゃんには一ミリたりとも渡さないアル!」

「んだとこらァァァ!」

ぎゅーっと私にしがみつく神楽ちゃんと、向かい側で炬燵から出ないまま騒ぐ銀さん。

 

 

 

「ちょ、今日は元旦なんですから。何なんですかこのいつもと何ら変わらないやりとり」

「そうだよね。ちょっと落ち着きなよ銀さん」

銀さんは何で俺だけ…とぶつぶつ言いながら炬燵に首まで入る。

 

 

「それより、お腹減ったアル」

「え、でもさっき年越しそば食べたばっかりだし」

ちらりと台所に目を向けると、食べ終わったお椀が4人分洗い場にたまっていた。

 

「つっても、そば3人前を4人で分けたからな…俺も腹減ってきたかも」

「それもそっか…。じゃ、年明け早々だけど、おせちでも食べますか!」

ぱん、と手を打つと銀さんと神楽ちゃんの目がきらりと輝いた。

 

 

「おせち!?あんのかよ、年越しそばですら1人前満足に食えてねーのに…!」

「新年からジリ貧ですね僕たち…」

苦笑いをこぼす新八くんに、私はばっと立ち上がって得意気に言う。

 

 

「ふっふふふー!おせちの為に、おそばを節約したのです!お正月くらいは豪華にいきたいでしょ!」

「さすがアル!きゃほーいおせちー!」

神楽ちゃんは炬燵の中でばたばたと足を動かしているらしく、銀さんと新八くんの足が蹴られてる音がした。

 

 

「いってーんだよ!てめっ、おせちやらねーぞ!」

は優しいからそんなことしないネ!」

「ハッ、は俺にだって優しいんだからな!なっ、!」

「あの銀さん。さん台所に行っちゃってますけど」

 

 

 

居間の方からにぎやかな声が聞こえてくる。

今年もこうやって、皆でわいわい騒いで笑って怒って毎日をすごますように。

 

そう願いながら、私はおせちを持って居間へと戻った。

 

 

 

「だーかーら!は俺のだっつってんだろ!」

「嫌アル!銀ちゃんみたいなちゃらんぽらんには渡さないネ!」

 

「え、ほんの数分いなかっただけで状況がサッパリわからないんですけど」

いつのまにか炬燵の中で足の蹴り合いをしている銀さんと神楽ちゃん。

新八くんが膝を立てて足を避難していた。

 

 

「あ、さん、おかえりなさい…!」

「そんな目で見られても。どうしちゃったのこれ」

うるうる、と助けを求めるような眼で見てくる新八くんに二人を顔で指しながらおせちを並べる。

 

 

ー!は私が一番好きだよネ!?」

私が戻ってきたことにやっと気付いた神楽ちゃんが足にしがみつく。

「言ってやれは俺が一番だろ!?」

銀さんは足にしがみついている神楽ちゃんを引き剥がそうと、上着を掴んでぐいぐいと引っ張っている。

 

 

「ちょっと二人共、新年早々大人げないですよ」

まったくだ。新八くんは今年もなんやかんやで頼りになりそうである。

 

 

「「眼鏡は黙ってろ」」

「眼鏡の何が悪いんだこらァァァ!」

 

がばっと炬燵から立ち上がった新八くんも交ざって、結局いつもと変わらない騒ぎになってしまった。

その光景が今年も続けばいい、なんて思うと少しだけ笑えてきてしまった。

 

 

「で、は俺が一番なんだよな?今年こそ膝枕してくださいお願いします」

ぎゅっと私の手を握ってじーっと目を見つめてくる銀さん。

なんとなく銀さんに膝枕するのは、セクハラされそうで拒否してたんだっけ。

 

 

「あー…まあ膝枕はともかく…」

どうやってこの人たちを落ち着けようかと悩んでいると、和室の方からひとつ、あくびが聞こえた。

その声にはっとした私は、にっこりと笑って言う。

 

 

「私の一番は……定春かな!」

 

 

そう言うと一瞬思考が停止したのか、銀さんの動きが止まった。

 

おそらく今目が覚めたのであろう定春があくびをしながら私たちの傍へ歩いてくる。

すり、と体を摺り寄せてくる定春の頭を撫でると、気持ち良さそうに「わふ」と一声鳴いた。

 

 

 

「いや、ちょ、せめて人にしてくれねえ?同じ土俵で戦えねーじゃん」

我に返った銀さんの言葉を軽くあしらって、再び炬燵に入る。

 

「ほーら!おせち食べるって言ったの誰よ。早くしないと私と定春で食べちゃうよ」

「あー!あー!私も食べるアル!」

素早くさっきと同じ、私の隣に座った神楽ちゃんがお箸にてを伸ばす。

続いて銀さんと新八くんも炬燵に戻る。

 

 

「ったく、しょうがねーな。まずはおせち食べてから、だな」

争奪戦は一時休戦アル」

私は争奪戦になってたのか。

とりあえず収まった皆を見て、あはは、と声を出して笑う。

 

 

「この人たちはさんがいないと、なんかもう駄目ですね」

「まあ…今年もこうやって皆でいられたら幸せだけどね」

おせちの具を取り合ってまた騒いでいる二人を眺めながら、新八くんと顔を見合わせて笑った。

 

 

 

「あ。そういえばまだ言ってなかったけど…今年もよろしくね!」

 

その声に笑顔で返事を返してくれる神楽ちゃん、銀さん、新八くん。そして定春。

どうか今年も、笑顔の多い年でありますように!

 

 

 

 

 

 

 

新年争奪戦







(「それ私の田作りアル!」「てめっ、さっき俺のレンコン取ったじゃねーか!」「「……」」)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

あけましておめでとうございまーす!!

去年もたくさんお世話になりました。今年も風村雪、そして朧月書店をよろしくお願いいたします!

きっと今年もギャグ夢メインのサイトになると思いますが、温かい目で見守ってくださると嬉しいです!

2012/01/01