今日の天気は晴れ。
そして真選組紅一点のあたしはたった今書類仕事を終わらせて、
涼しい風の吹く廊下を上機嫌で歩いてます!
「ふぅー、やっと終わったーっ!これで午後は仕事なし!」
ぐいーっと背中を伸ばしながら廊下を歩く。
今日はもう仕事無いし、時間を気にせず昼寝ができるよね。
そう思っているうちにあたしの部屋の前へとたどり着いた。
そしてガラリと勢いよく戸をあける。
「ぐーぐー…」
「……………」
音を立てないように、静かに戸を閉める。
ここは、あたしの部屋。だけど中にいたのは、沖田さん。
「……よし、食堂へ行こ」
「待ちなせェ」
何も無かったかのようにして方向転換をしたあたしの足首をがしりと掴まれる。
「ひえええ!は、離してください!怖っ!」
「化け物見るような目で見てんじゃねェよ。どこ行く気ですかィ」
がらり、とゆっくり戸が開いて、寝転がったままの沖田さんの顔が見える。
「どどどどこって、えーと、まぁ、食堂でも行こうかなーなんて」
「暇なんですねィ。じゃあちょっと付き合いなせェ」
「ちょっと沖田さん。今のあたしの話どう聞いてたんですか。食堂行くって…」
「暇なんですよねィ」
「……はい」
…負けた。
「が思いっきり戸開けた所為で中途半端なとこで目ェ覚めちまっただろ」
やっと起き上がって、ふああー、とあくびをしながら言う沖田さん。
「え、それあたしの所為なんですか。そもそも寝るなら自分の部屋で寝てくださいよ」
「んじゃ俺を起こした罰としてには1つ言うこと聞いてもらいまさァ」
「沖田さんは人の話を聞くっていうことを知らないんですか」
もうこれあたし無しで話すすんでるよ。
「じゃ、もう一眠りするまで膝貸しなせェ」
「…嫌ですよ!何であたしが!?そもそも仕事はいいんですか?」
「今は休憩時間でさァ。それに、にとっちゃ俺ァ上司だろ。言うこと聞けないんですかィ?」
「…うぐっ…」
職権乱用だ、と言ってやりたいけど、実際上司だし…。
「…ちょ、ちょっとだけです、からね!!」
「へいへい」
そう言って沖田さんはあたしの膝の上に頭をのせて寝転がる。
そして数分もしないうちに、小さな寝息が聞こえてきた。
あ、今日はあの変なアイマスクしてないんだ。
っていうか…あたし沖田さんの寝顔ってはじめて見たかも…。
…これって、寝顔見せてもいいくらい、信用されてるってこと…なのかな。
そう思うと、なんだか嬉しかった。
「…たまには…いいか」
小さく呟いて、沖田さんのさらさらの髪を撫でる。
「いつもお疲れ様です、沖田さん」
少しだけ日が落ちかけてきた頃。
「……んー……」
「あ、起きました?」
沖田さんはあたしの膝に寝転がったままで、前髪を掻き揚げてゆっくり目を開ける。
「よく寝れました?」
「あー……思ったより、よく寝れやした」
目をこすって立ち上がり、部屋の戸を開ける。
すっ、と軽くなったあたしの膝に外からの風があたり、何故か少しだけ寂しさを感じた。
「何寂しそうな顔してんでさァ」
「えっ!?し、してませんよ!」
「してやしたぜィ」
にやにやと笑って言う沖田さん。
「してませんってば……うぐっ!」
勢いよく立ち上がって言ったはいいけど、ずっと正座してたせいで、足が、しびれてる。
うっわ、しばらく動けそうにないんだけど。
「何でィ、足しびれたんですかィ?」
そう言って沖田さんはあたしの足を、軽く蹴る。
「痛ッ、何するんですかっ、あわわわっ!」
蹴られた足にビリッと痺れた感覚がくる。
そのせいでバランスが崩れ、前に倒れこむ。
「お、っと」
ぽすっと軽い音をたてて、倒れこんだあたしを沖田さんが受け止める。
「…え、あ、うわわわっ!」
「顔真っ赤になってますぜ」
「な、ななななっ!!」
言葉にならない、わけわからない言葉がでてくる。
ちょ、ちょっと落ち着け自分!!
「足痺れるんなら膝枕じゃなくて添い寝にすりゃよかったか…ま、でもこれはこれで」
「へ?」
「いや、こっちの話でさァ」
そんな言い合いをしているうちに…と言ってもあたしは何言ってたかよくわからないんだけど、
足の痺れも少しおさまってきた。
「あ、沖田さん、なんかもう大丈夫…」
「何してんだァ?総悟、それに」
沖田さんの向こう側に、人影が見えた。
「…ひ…土方さん…!?」
「何やってんですかィ土方さん。仕事はどーしたんでさァ」
「その言葉そっくりそのまま返してやるよ。お前こそ仕事サボって何してんだ」
…仕事サボって?
「え、沖田さん休憩時間って…」
「そんなこといいやしたか?」
「ほほーう?総悟を匿ってたのはか」
ふぅ、とタバコの煙を吐きながら言う土方さん。
「え、そんな、違っ…」
「お前ら2人で今から見回り行って来い」
「えぇー」
「な、何であたしまで行かなきゃいけないんですか!?」
「総悟を匿った罪だ」
しれっと当たり前のように言い切る土方さん。
「違いますって!は、はめられたんですよ!」
「ハメられたお前が悪い。ほらさっさと行ってこい!」
「嘘ぉぉぉー!!」
「沖田さんのせいで仕事増えたじゃないですかー」
「うるせーやィ。はめられるが悪いんでさァ」
「え、沖田さんがそれを言うの?」
夕方色に染まりつつある町を、話しながらゆっくりと歩く。
「いーじゃねーか。俺と一緒に仕事できるなんて機会、めったに無いですぜィ」
「…まぁ、そうですけ…ど…って沖田さん、これが狙いだったり…?」
「さぁ。どーでしょうねィ」
沖田さんはフッと笑って、あたしの手を握る。
「さっさと終わらせて帰りましょーや。超高速で見回りしますから、はぐれたら置いていきますぜ」
「ひ、ひええ!置いていかないでくださいよっ!」
「なら手ェ離すんじゃねェよ」
そう言って、あたしの手を握る力を少しだけ強くする。
「…!…はいっ!」
あたしも沖田さんの手をぎゅう、と握り返して、走り出す。
たまには、こんな午後もいいかもしれない。
策士なあなたとの過ごし方
…つないだ手が、いつもより熱くなってたのは、あたしだけじゃないみたいです。
あとがき
策士な沖田さん。実は全部計算済みだったりします。すごいや沖田さん!(←
甘く…なっているのか不安ですけど…微糖って感じですかね…?ひええ、すみません!
とにかく、キリ番おめでとうございました、ありがとうございました!!
2008/5/5
(掲載なさるときはあとがき消してOKですよー!)