青空の下、真選組で女中を務める私は、洗濯物を干す作業をしていた。

そんな時、後ろから「今日はいい天気だな、」と声をかけられ、驚いて声のしたほうを振り向く。

 

 

 

「えっ!?ふ、副長さまっ!?お、おはようございますっ!

「おう」

…私の声は絶対裏返っていただろう。うう、恥ずかしい!

 

 

「あ、えっと、あの、今日は隊服ではないんですね」

「ん?ああ、今日は非番だからな」

ふぅっと煙草の煙を吐きながら言う。

 

 

「そうなんですか、あの、いつもご苦労様です!今日はゆっくり休んでくださいっ!」

「ああ。…っつーか、そのシャツ握りすぎだろ。洗濯したのにシワ寄るぞ」

あきれたような目で、私の手元を見つめる副長さま。

 

 

「あぁああー!す、すみませんっ!!」

慌てて手にもったシャツのシワを直し、ハンガーを探す。

 

「ほら。これ探してんだろ」

そう言って副長さまは、私の足元に積み重なっていたハンガーの1つを差し出す。

「す、すみません…ありがとうございます」

 

 

「その勢いでやってた日が暮れちまうぞ。手伝ってやろーか」

「ええっ、そんな、悪いですよっ!!副長さまにこんなことさせられませんっ!!」

それに副長さまがいると、緊張するのか、頭がうまく働かない。

 

 

 

 

 

 

「あの、ありがとうございました…!!」

手伝って、もらってしまった。しかも最後まで。

 

「ま、どーせやること無くて暇だったからな」

「本当にありがとうございますっ!!」

 

 

深々と頭を下げてお礼をいう私に、副長さまは気にするな、なんて言ってくれた。

本当に、優しい人だと思う。それに強くて、頼りになる。

 

きっと、副長さまを見て緊張してしまうのは、私が貴方を尊敬しているから、なんでしょうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後からは仕事もなく、ふらりと廊下を歩いていた時、台所から声がした。

「あっちゃー…買い忘れじゃん」

「どうしたの?」

「あぁ、。いやちょっとねー、油買い忘れちゃってさ」

 

まさか油忘れるなんてー、と言って苦笑いをする。

 

 

「あ、あの…私行ってこようか?」

「えっ?いいよいいよ!元々あたしのミスだし」

「どうせ午後は仕事ないからさ」

「うーん…じゃあ頼んでもいいかな…?」

 

 

申し訳なさそうに言う友達に、笑顔でいいよ、と言って私は台所を出た。

後ろから「そういえば、さっき攘夷志士っぽい人がうろうろしてたから、気をつけてねーっ!!」という

声が聞こえたから、私は、すぐ帰るよ、と言って小走りで屯所を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しだけ薄暗い路地を抜ければ、スーパーへの近道になる。

「…危ない…かなぁ…。でも、急がないといけないし…。うん、大丈夫、よね」

 

大丈夫だ、と自分に言い聞かせて、路地を駆け抜ける。

もう少しで大通りに出られる、そう思ったとき。

 

後ろの方で、がつん、という音がして、私の意識は、薄くなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うう…やっぱ心配だよ…」

「扉に張り付いて何やってんだ、おめーは」

「ああっ!副長さま、実は、その…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識は薄いけれど、まだなんとか気を失ってはいない。

でも、起き上がって、目を開ける気力が無い。後ろ…殴られた、のかな。

 

 

頭の上で話し声が聞こえる。

「真選組の女か」「こいつ出汁に使えば、あの鬼の副長も…」

なんていう声が聞こえる。やっぱり遠回りでも回り道をしておけばよかったなあ。

 

「だが、所詮は女中だぜ?あの鬼の副長がつられると思うかァ?」

 

その声に、少し意識がしっかりしてくる。

…確かに副長さまは、私なんてどうでもいいでしょう。女中のなかの、1人なんですもの。

あれ、なんで…こんなに、苦しいんだろ。

 

 

 

「じゃあ、とりあえず…殺っちゃいますか?」

 

その声と同時に殺気が立つ。

 

 

 

 

 

「させるかよ。そいつァうちの大事な女中だ。…返してもらおうかッ!!!」

 

 

 

言い切る前に、ドカッという音と、男の人の悲鳴が聞こえた。

あぁ、どうして。

 

「ふ、くちょう、さま…っ、いた…」

顔を上げた瞬間に、ずきりと首の後ろが痛んだ。

「大丈夫か!?チッ、てめーら女に手ェ上げるたァ、よっぽど余裕ねぇんだな」

 

 

ハッ、と鼻で笑うようにして言い放つ。

副長さまは私の体をゆっくり起こして、壁にもたれかけさせて、耳元で呟いた。

 

「いいか、そのまま目ェつむってじっとしてろ。…すぐ終わらせる」

 

私はこくり、と小さく頷いて目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくすると、音も叫び声も聞こえなくなった。

「終わったぞ、ほら、大丈…ってお、オイッ!?」

「なん、でしょう…か…」

「何で泣いてんだよ!?な、なんかされたのか?それとも、痛みが…」

「ち、がうんです…」

 

 

泣くというより、ただ目からぽたぽたと落ちる涙を副長さまは着物の袖で拭ってくれました。

 

「痛いんじゃなくて、嬉し、かったんです」

「…は、あ?」

「副長さまが、来てくれたことが、嬉しくてっ」

ひくっ、ひくっとしゃくり上げながらもそう言うと、副長さまは私を抱きしめて言いました。

 

 

「…だから、言っただろ。はうちの大事な女中なんだ。心配くらい、する」

「副長、さまっ…!!ありがとう、ございます、ありが、とう、ございますっ…!!」

 

私はただひたすら、ありがとうと言いながら、副長さまに抱きしめられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

副長さまに抱きついたまま、ひとしきり泣き終えて立ち上がる。

「ほら、帰るぞ」

そう言って私のほうに手を差し出す副長さまの手をとる。

 

 

あぁ、そうか。やっと気付きました、この気持ちの名前に。

きっと副長さま…いえ、土方さんの返事は私にとって良いものじゃないでしょう。

でも、それでも、伝えたかった。

 

 

「副長さま、」

「だからもう気にすんなって…」

 

 

 

 

「あなたが、好きです」

 

 

 

やっと、気付いた

 

 

「バカ。先に言うんじゃねぇよ。こういうのは普通男からだろうが」

「…ふ、くちょう、さま」

 

 

「お前が好きだ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

毎度遅くなってすいません…!!土方さん微糖夢ということで、細かい設定をいただいていたのですが…。

もう私はその設定でお腹一杯でした!素敵すぎでした!う、うまく書き表せているかどうか不安ですが

お気に召していただけたら幸いです…!詳細リクエスト、本当にありがとうございました。

さくらさん、キリ番おめでとうございました!ありがとうございました!

2008/08/17

(掲載なさるときはあとがき消してOKですよー!)