「あぁーもう!わかんないー!!」

 

ばたん、と仰向けに倒れる。

夏休みの終わり、あたしたちは志村家にお邪魔させてもらって、宿題終わらせる会、を開いていた。

 

 

「このくらいで、だらしないですねィ

「このくらいって…沖田だってさっきから進んでないじゃん」

がばっと体を起こして、沖田の真っ白な英語の冊子を指差す。

 

「ほら、早くやってくだせェよ土方さん」

「何でおめーは人に丸投げしてんだよ!!」

向かい側に座る土方くんは沖田を睨んでシャーペンを、折れそうなくらいの力で握っていた。

そりゃあ、まあ、力も入るよね。

 

 

「…ザキ!さっさとやれ!」

「ひええ」

「お前もか!!」

土方くんの横に座る退くんを瞳孔全開の目で見ながら言うものだから、思わずつっこんでしまったじゃないの。

自力でやってる人が少ないったらありゃしない。

 

 

 

、根のつめすぎはよくないアル!休憩も必要ネ」

ぐいぐい、と服の裾を引っ張って言う神楽ちゃん。

 

「お前5分前も休憩してただろィ」

「うるさいアルサド野郎!お前と違って自力で解いてるから疲れも倍なんだヨ!」

2人の間でびゅんびゅんと消しゴムのカケラと意義の声が飛び交う。

…あたしを間にはさんで。

 

 

「ちょっ、危ないからやめろ沖田!!」

「何で俺だけなんでさァ。先に投げてきたのはチャイナですぜ」

不満そうな顔で言いながら、ずいっと顔を近づけてくる。

 

「わ、わかったから、近いから」

ぐいぐいと沖田を押しのけて、机に向かいなおす。

 

 

 

シャーペンを握りなおしてみても、やっぱり分からないものは分からない。

うーん、と唸っていると廊下の襖が開いて、新八くんがお茶を持ってきてくれていた。

 

「あ、ちゃん、どう?進んでる?」

机に人数分のお茶をコトン、と置きながら新八くんは尋ねる。

「あと古典だけなんだけど…なかなか、上手くいかないよ」

 

 

古典は現代語訳ができなくては話にならない。

その段階で躓いているあたしに、宿題の終わりの兆しは見えてこない。

 

 

「そもそもなんで普段授業してねェ国語に宿題があるんだよ」

同じく古典で躓いている土方くんは、くるくるとシャーペンを回しながら呟く。

あたしと新八くんはそれに同意しつつ、苦笑いで返した。

 

 

 

 

「授業やってなかったからこそ、宿題があるんですぅー」

 

 

気の抜けた声が後ろから聞こえたかと思うと、後ろから手が伸びてきて、ぎゅうと抱きしめられた。

 

「え!?ちょ、暑っ!!」

べしん、と伸びてきた手を払いのけて後ろを振り向くと、何故かそこには銀八先生がいた。

 

「な…なにしてんですか、先生!!」

「どーせお前らのことだろうから、夏休みギリギリまで宿題やってねーと思って様子を見に…」

あたしが払いのけた手を振りながら、沖田とあたしの間に割り込んで座る。

 

 

「オイ、てめーどこに座ってんでさァ。狭ぇだろーが」

「学校外なら敬語じゃなくていいと思ったら大間違いだぞサド野郎」

ちっ、と小さく舌打ちをして沖田は机に頬杖をついて座る。

 

 

 

「つーかさっきのどういう意味だよ」

「あぁ、それあたしも気になる。なんで授業やってないからこそ、宿題がある…んですか?」

沖田や土方くん同様、思わずタメ口で話しそうになってしまった。

 

 

あー、とぼやきながら髪をかいて、先生は言う。

「今まで授業でやらなきゃいけなかった分のプリントを、宿題として盛り込んだから」

 

 

「…っていうことは、授業でやってれば国語の宿題は無かったんですか」

「そうなるねー。うん、は理解力があってよろしい」

ぽんぽん、とあたしの頭を撫でながら言う。

 

 

 

「じゃあこれ俺たちの所為じゃねーじゃねぇか!オメーが授業しっかりやらなかったからじゃねーかよ!」

がたん、と机を揺らして土方くんが立ち上がる。

「落ち着けって。だから、わざわざ教えに来てやったんだろうがよ」

 

 

ふう、とわざとらしい溜息をついて、先生はあたしのプリントを覗き込む。

「あー、現代語訳か。ここは…」

めずらしく先生らしいことを言いながら、先生はあたしのプリントの文字を指でなぞる。

あたしの顔のすぐ近くで、ふわふわの銀髪が揺れる。

 

 

 

「…せんせー、ここ分かりやせーん。ばっか構ってねェで教えてくだせェよっ!」

言いながら沖田がぐいっ、と先生の襟首を引っ張った所為で、先生は後ろへ倒れこむ。

 

「呼ぶときは、もうちょっと優しくしてくれると有難いんだけど」

「うるせー、に近すぎまさァ。もうちょっと離れなせェ」

 

 

ぼそぼそと小声で2人は話し合ってるみたいだけど、内容までは聞き取れない。

仕方なくもう1度プリントに向き直る。

 

やっぱり古文の羅列は読めず、唸ることしかできない。

むぅ…とプリントとにらめっこをしていると、机をコンコンとたたく音がした。

 

 

「なぁ、ここの訳、こうじゃねーか?」

体を乗り出して自分のプリントに書いた文字を指差しながら土方くんは言う。

「えっと…それどこだっけ…」

該当箇所を探すべく、あたしも体を乗り出してプリントを見比べる。

 

 

「あ、ここか」

古文と土方くんの訳を見比べる。

「おお、それっぽい!!ちゃんと物語繋がってる!すごいよ土方くん!」

「い、いや、まあ…そこしかわからなかったけどな」

片手で頬をかきながら少しだけ視線をそらした土方くんの顔はほんのり赤かったような、気がする。

 

 

 

書き写していい、と尋ねる前に横からさっき見た消しゴムのカケラが今度は土方くんに向かって飛んだ。

「俺の英語、さっさとやってくだせェよ土方さん」

には俺が教えてやっから、おめーは適当にやってろ」

 

ぐいぐい、と先生に手を引っ張られて乗り出していた体を元の位置に戻す。

 

「今まで授業してなかった奴に任せられっかよ!」

「一応先生なんでー。作ったプリントはちゃんとできますぅー」

今度は土方くんと先生で言い合いが始まる。

 

その隙に、沖田が先生の後ろからあたしの手を引いて、耳元で言う。

「さっさと終わらせて、一緒に出掛けようぜィ」

 

「抜け駆けは駄目だろーお、き、た、くん?」

「総悟…テメー、自分だけ楽しようったってそうはいかねぇからな…!」

終わったらね、と言う前に銀八先生と土方くんの声であたしの声はさえぎられる。

 

「あんたらはずっと言い合いしててくれりゃいいんですぜィ」

「「そうはいくか!!」」

 

 

 

なんだかよくわからないうちに、3人の間で火花が散ってる気がする。

「ただでさえ暑いのに、むさ苦しい奴らアル。、こんな奴らほっといて一緒にかき氷でも食べに行くアル」

ぐいぐい、とあたしの服を引っ張りながら神楽ちゃんは立ち上がろうとする。

 

「チャイナ!てめーも抜け駆けはさせやせんぜィ」

「お前らみたいな男共には任せられないネ!!」

 

 

 

その声で、さらにヒートアップした宿題会。

あぁ、これは確実に終わりそうに無いな、と思いながら、とばっちりと受けないように

部屋の隅で退くんと、新八くんと、四人の乱闘を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

終わらない宿題

 

(あぁ、そうだ。明日桂くんに電話して聞けばいいや。それか高杉さんに聞きに行こう。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

3Zで逆ハーというリクエストでした!!

逆ハーというか、皆出てきてるだけみたいな感じになってしまってすみません…!

口には出していないだけで、ヒロインの取り合いが勃発しているお話でした。

キリ番おめでとうございました、ありがとうございました!!遅くなってすみません!!!

2009/02/22

(掲載なさるときはあとがき消してOKですよー!)