今日も銀魂高校は平和です。全体的に見れば、平和です。

しかし、お昼時の購買は、戦争です。

 

 

「ただいまー……」

がちゃり、と屋上の扉を開ける。

「おかえりアルー!」

屋上の日陰になっている場所で、お昼ご飯を広げる神楽ちゃんと新八くん。

妙ちゃんは今日は九ちゃんと一緒に食堂ランチらしい。

 

 

「で、どうだったアルか、戦績は」

「ふふ…メロンパンひとつです」

がっくりと項垂れながらあたし用と思われる、空白の部分に座る。

 

「そんなに混んでたんだ、購買」

「うん。もうあれは戦場だよ。っていうか、基本3Zメンバーが乱闘してたよ」

 

一日30個限定カレーパンの取り合いで乱闘する沖田と土方くん。

妙な連携プレーで買い物を済ませる桂くんとエリザベス。

そして、何故かその中に混ざっている銀八先生と高杉さんと坂本先生。

そんな強烈すぎるメンバーの戦いにおびえつつもお昼ご飯のために奮闘する他クラスの生徒たち。

 

 

「ていうか!おかしいでしょ、先生までいるって!!時間ずらせよ!!」

バリーン!とメロンパンの袋を開けながら叫ぶ。

「だから一時間目に抜けていくべきっていったアル!」

「さすがに授業はサボれませんので」

 

 

そう。神楽ちゃんは一時間目の国語を抜けて、購買に行っていたのだ。

まあ銀八先生の授業はいてもいなくてもいいような感じだけど、一応…サボりたくなかった。

 

 

「でも、正直まだ足りないアル」

「既におにぎり3つにパン5つ食べてるのに足りないってことはないでしょ」

手作りであろうお弁当を食べながらもツッコミを休まない新八くん。

 

ちゃんもお弁当作ってきたら…?」

「でも、朝起きれなくてさー。お母さんも面倒だから買っちゃいなさい、って」

もぐもぐ、とメロンパンを頬張る。うん、美味しい。

 

 

「じゃ、明日は私と一時間目に抜けて行くヨロシ。人もいないし、選びたい放題ヨ」

「うわー、すごく魅力的…」

「神楽ちゃん、そんな無茶なこと言わないの」

お母さんのような口調で新八くんは言う。

 

 

「お前は弁当組だから購買の苦労が分からないのヨ!罰としてそのからあげ貢ぐアル!」

ビュッと新八くんのお弁当に手を伸ばす神楽ちゃん。

うわ、と叫びながらお弁当を高く持ち上げて回避する。

 

「ちょ、やめてよ!そんだけお昼食べてれば十分でしょ!」

「駄目アル!そのからあげは、この焼きソバだけ先になくなっちゃった焼きソバパンの上に乗る資格があるネ!」

「意味わかんねぇぇぇぇ!!!」

 

 

容赦なくからあげを掴もうとする神楽ちゃんの手を、必死によける新八くん。

そんな2人をみているうちに、あたしのメロンパンも無くなってしまった。

 

ちらり、と新八くんのお弁当を見る。

 

 

 

「新八くん、じゃあそのからあげあたしに頂戴!」

襲い掛かる熊のポーズをとっている神楽ちゃんの横に並んで言う。

まあ、もちろん本気ではない。今日は午後の授業もあと2時間だから、メロンパンひとつで頑張れないこともない。

 

 

ちゃんなら、いいよ」

 

 

「……え、マジで?」

ぽかん、とする。

「うん。メロンパンひとつじゃ、さすがに足りないでしょ?」

「あ…う、うん…まあ…」

 

 

なんだこの不意打ち。

冗談だよー!と言って笑うタイミングを逃してしまったではないか。

頭がついていかず、手が宙をふらふらしていると、神楽ちゃんがずいっと新八くんに詰め寄った。

 

「何でアルか!お前に甘いアル!戦場ではそんなんじゃ生き残れないネ!」

「いやここ学校だから」

もがもがと、焼きソバのなくなった焼きソバパンを食べる神楽ちゃん。

 

 

「だから、メロンパンひとつじゃ足りないだろうからさ。神楽ちゃんはもうちゃんの10倍くらい食べてるでしょ」

「むー…仕方ないアル。じゃあ、今日のからあげはに譲ってあげるヨ」

「今日のって何!明日もあげないからね!」

 

 

ツッコミながらも、はい、とお弁当箱と箸を差し出す新八くん。

「えと、あの、本当にいいの?」

「うん。元から今日、少し多めに作っちゃってたから」

「新八なんかに遠慮なんかしちゃだめヨ!」

いいながら、次のおにぎりに手をつけている神楽ちゃん。どんだけ買い込んだんだろう。

 

 

「じゃあ、いただきます!あ、お箸借りるね」

「うん……ぁ」

「?あ、やっぱ駄目?」

「う、ううん!!そうじゃないよ、ど、どうぞ!」

どうも、と言って新八くんの手からお箸とお弁当箱を受け取る。

 

 

ていうか、これ手作りなんですか。と聞きたくなるほどに美味しそうなお弁当。

心の中でもう一度いただきます、と呟いてからからあげを頬張る。

 

程よい上がり具合と油具合が絶妙で…っていうか美味しいんですけどコレ!!!

「美味しい!!めっちゃ美味しい!え、これ手作りなの?!」

「う、うん。昨日の夕飯の残りだから、硬くなってるかもだけど…」

「全然そんなことないよ!めっちゃ美味しいってほんと!」

 

 

もぐもぐと食べながらふと新八くんの顔をみると、ほんのり頬が赤くなっている気がした。

何だろ?美味しい美味しい連発したから照れてんのかな。うっわ、可愛いな新八くん!

 

ごくん、と最後のひとかけらを飲み込む。

「ふあー!美味しかった!よっしゃ、午後の授業も乗り越えられそう!ありがとうね!」

そう言ってお弁当箱とお箸を差し出す。

 

 

「じゃあ今度は私がにプレゼントするアル!食後のおやつに買っておいたのヨ!」

ばばーん!と口で効果音を言いながら神楽ちゃんはポッキーやらパイの実やらお菓子を出す。

「うおおー!さすが神楽ちゃん!」

「当然ネ!」

 

 

どれから食べるアルかー?とお菓子を選んでいる神楽ちゃん。

新八くんもどう、と尋ねようとすると、小さな声で「あの、」と呟かれた。

 

ちゃん、その…今更なんだけど、お箸、ごめんね」

「箸?え、何かあった?」

 

 

お箸の不都合って何なんだろう、と思って聞き返すと、それはそれは小さな声で返事が返ってきた。

「いや、ほら…その、か、間接…」

言いながら自分で照れているのであろう、新八くんの顔は赤くなっていく。

 

ていうか、それで赤くなってたのか!

美味しい連発で照れてんのかと思ったらそっちか!まさかの間接キスの話か!

 

 

「あははは、気にしなくていいよ!ていうか、寧ろ新八くんの方こそよかったの?あたしの使用済みになっちゃって」

「ぼ、僕は全然平気だから!!」

慌てて体を乗り出して小声ながらも精一杯言う。

 

 

「2人して何こそこそやってるネ。早くしないとお昼休み終わっちゃうヨ!」

お菓子でも隠し持ってるアルかー!?と飛び込んできた神楽ちゃんになんでもないよー、と言って誤魔化す。

「…で、何で2人とも顔赤いアルか。もっとこっちの日陰来るヨロシ」

 

 

手招きをする神楽ちゃんの後を追いながら、あたしと新八くんは顔を見合わせる。

その瞬間に、また頬に赤みを増す新八くん。

ああもう!なんでそんな反応するの!こっちまで照れるじゃない!

 

 

 

 

 

 

熱い日陰のランチタイム






(「あ、あのさ、ちゃん…もしよかったら明日からお弁当作ってこようか?」「マジでか。是非お願いします」)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

裏表のある新八夢というリクエストでした!…裏表に…なって…ないですよねコレ…!←

一応、神楽にはおかずをあげるのを渋るけど、ヒロインなら即オッケーという裏表でした。

あと余談ですが、私の中の新八はベタな青春ドラマみたいな恋愛しそう、というイメージがあります。

さておき、キリ番おめでとうございました!小説の方、死ぬほど遅くなって本当にすいませんでしたー!

2009/09/11

(掲載なさるときはあとがき消してOKですよー!)