空が暗くなっても、このかぶき町は色んな建物の明かりで明るいまま。

そんな中、私は真選組での女中の仕事を終えて、万事屋へ帰り道を歩いていました。

 

 

「わざわざ送ってもらわなくてもよかったんですけど…」

「いや。どうせ見回りもあるし、いくら明るくてもここらは危ねぇからな」

 

 

タバコを吸いつつ私の隣を歩く土方さんは、わざわざ私を万事屋まで送ってくれるらしいです。

「ありがとうございます!」

「…見回りついで、だよ」

 

そう言いながら歩く土方さんは、さりげなく私に歩調を合わせてくれている。

…良い人、だなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして他愛ない話をしているうちに、万事屋へと到着しました。

 

「ただいまー」

「おっかえりぃー!!」

玄関をガララッ、とあけた瞬間に銀さんがそう言う。

…っていうかなんで玄関にいるの!?

 

 

にこにこと満面の笑みを浮かべた銀さんは、続けて言う。

「ご飯にする?風呂にする?それとも…俺とする?」

 

 

するりと私の手をひっぱり、そのまま私の手の甲を自分の口元へ運ぶ銀さん。

 

 

「………ご飯で」

引っ張られた手を振り払って言う。

 

「えぇー!なんだよノリ悪ィなぁー。普通ここは、俺とだろ?」

腰に手をあてて、ぶー、と膨れながら言う銀さん。

 

 

「…じゃあ聞くけど、俺、って何よ」

「そんなー、聞きてェのかよったら!」

……………

なんて返事をしたらいいのかわかんないわ!

 

 

 

 

 

 

 

「…いつも、こんなんなのか?」

送ってくれた土方さんは、顔を引きつらせながら私の後ろで呟いた。

「いえ、今日はいつにも増して変です」

 

 

そこでやっと土方さんの存在に気付いたのか、銀さんの顔からはさっきまでの笑顔は消えていた。

「…なんでいるのさ、多串君」

誰が多串だ。見回りのついでに送ってやったんだよ」

「へーへー。そりゃご苦労なこった。んじゃあ早く見回り行け。今すぐ行け」

 

 

今度はぐいっと銀さんに腕をひっぱられて銀さんの胸にダイブする。

ちょ、ちょっとまった、まだ靴はいたままなんだから…!

 

 

「よく考えりゃ外よりもここの方が危ねぇからなァ…」

「そんなことないですー。銀さんはには優しいからー」

 

 

銀さんにもたれかかったまま、ごそごそと靴を脱ぐ。

 

 

「そういう問題じゃねぇよ。十分危ねぇんだよテメーは!」

「危なくねぇって。なぁ、俺は優しいよなー?」

 

 

銀さんにもたれかかったまま、という微妙な体勢のお陰で靴脱ぐだけに苦労しちゃったじゃない!

 

 

「……うん?…え、何?呼んだ?」

靴を脱いで万事屋に上がると、銀さんからなんかすっごい見られてた。

…えーっと。靴脱いでて何も聞いてなかったんだけど。

 

 

 

「ほーらみろ。うん、って言っただろうが」

「いや今のぜってー疑問系だったぞ」

「そんなことねぇって。なぁ?」

にまっ、と笑顔を向けられる。

すいません。さっぱり状況がわかりません。

 

 

「あの、実は聞いてなかっ…って、ちょっと銀さん!!」

そして銀さんは私の腰を引き寄せる。

 

 

「…やっぱりテメェセクハラでしょっぴいてやらァ!!」

「ハラスメントじゃねぇし!愛情だからいいんだよ!」

すっと刀に手をかける土方さん。

うわわわ、このままいくと乱闘騒ぎに…!

 

 

 

「っつーか下世話なんだよ!早く見回り行けっつーに!」

ちょっと銀さんうるさい!

 

そういうと、銀さんは結構ショックを受けたようでよろよろと壁に寄りかかった。

…けど、とりあえず今はほっとこう。

 

 

 

 

「えーと、あの土方さん。わざわざ送っていただいてありがとうございました」

「…は明日も仕事はいってるんだろ?屯所泊まってもいいんだぞ?」

刀から手を離して、そう言う土方さん。

 

 

 

「ありがとうございます。でも、心配なんで……この人が」

しょんぼりと、床に座り込んでいる銀さんをチラリと横目で見る。

ほんっとに今日はいつにも増して…うっとおしい…。…おっと失言。

 

 

 

「…苦労してんだな」

「あはは…」

お互いに苦笑いを浮かべる。

そしてまた明日、と言って土方さんは見回りに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて。私はこっちをなんとかしないとなぁ。

 

 

 

「…銀さん!いつまでへこんでんの!」

「だってよォ、まさかお前が男と…しかもアイツと帰ってくるなんて銀さんは超ショックだよ。心がボロボロだよ」

「だーかーらー、送ってくれただけなんだってば!」

ぐいぐいと腕を引っ張ってとりあえず立たせる。

するとガシッ、と急に肩をつかまれる。

 

 

 

「男はみんな狼なんだぞ!」

「銀さんじゃあるまいし。ないない」

ぱたぱたと手を振って軽く答える。

いつもならこれで話は終わり。…なのに。

 

 

 

 

 

「本当に襲われたらどーすんだよ」

とんっ、と背中に壁が当たる。

「…その時は、真っ先に銀さんを呼ぶよ。私が好きなのは銀さんだから、ね」

にっこりと笑って言う。

 

 

 

 

「……お前、なんでそう突然好きとか言っちゃうわけ…?」

ふいっと目をそらす銀さんの顔は心なしかさっきよりも赤い。

「うーん……なんとなく、気分で?」

「気分!?気分が乗らないと好きとか言ってくれねぇの!?」

 

 

 

「だって、結構恥ずかしいんだよ、言うの」

「じゃ、そういう気分になってるんなら…もう1回言って?」

そう言う銀さんの顔色は戻っていたけれど、今度赤くなるのは私だった。

 

 

「……す、好き、だよ。…あーもうっ!こういうの、うわっ!」

恥ずかしいんだから、と言い終わる前にぎゅうう、と抱きしめられる。

「…すっげー嬉しい。ありがとうな…俺も、大好きだ」

 

 

そう言う銀さんの顔は見えなかったけれど、とても優しい声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、改めて…俺とする?」

「ううん。ご飯」

「………」

 

 

 

 

どんなに選択肢が多くても

 

必ず、貴方を選ぶから。惑わされたりしないよ。…今は夕飯が食べたいけどね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

遅くなってすいません…!!そしてまたもリクエストに添えていない感が…!結局最後は銀さんオチです。

冒頭の「ご飯にする〜?」の台詞を言わせたかっただけなんです。ほんとすみません;

それはおいといて、ミニンさん!キリ番おめでとうございましたー!!そしてありがとうございました!

2008/1/17

(掲載なさるときはあとがき消してOKですよー!)