「銀ちゃん置いてくなんて酷いネ!」
「うわぁ、客席もヤバイけど操縦室もかなりヤバイじゃん!大丈夫なの!?」
「乗客も皆念仏唱え出してますよ!!」
「「せーのっ、なーむーあーみー!!」」
「お前らうるせーんだよちょっと黙れやコラァァア!!」
第2曲 砂漠旅行に水は必須
私たちは突如爆発しだした船内を駆け抜け、今操縦室にいる。
私と神楽ちゃんの素敵念仏合唱は銀さんの叫び声にかき消された。
「心配いらねーよ。あいつに任しときゃ…」
そう言って銀さんが顔を向けた先にいるのは、さっき定春に頭噛まれてた人。
多分、あの人は…。
「坂本辰馬にとっちゃ、船動かすなんざ、自分の手足動かすようなモンよ。頭はカラだがな」
銀さんによる説明が終わったとき、坂本さんが叫んだ。
「よーし、準備万端じゃ。行くぜよ!!」
…気絶したパイロットの両足をつかんで。
その瞬間、物凄い速さで銀さんは坂本さんを殴り飛ばした。
「アッハッハ、こんなデカイ船動かすん初めてじゃき勝手がわからんち。舵はどこにあるぜよ?」
「急がないと!どっかの星に落ちかけてますよ!」
「あの、あれだと思うんですけど!」
びしっと舵を指差して、走り出す。
多分このままいくと、あの砂漠だらけの星へ着いてしまう。流石にそれは勘弁だ。
「おお、でかした嬢ちゃん!あとはワシに任せ…うェぶ!!」
「ギャー!こっちくんな!何思いっきり船酔いしてんスか!!」
「イヤ、船は好きじゃけれども船に弱くてのー」
「何その複雑な愛憎模様!?」
新八君たちが騒いでるうちに、私たちは舵へたどり着いた。
「よっしゃ!私と愛の共同作業ヨ!」
「そこ愛いらねーだろ!!ここはまともな人間の俺とでなんとかすっから!」
「狭い!きつい!私を間にはさむなぁあああ!!!」
「オウオウ、素人がそんなモン触っちゃいかんぜよ。
このパターンは三人でいがみ合ううちに舵がボッキリっちゅーパターンじゃ。それだけは阻止せねばいかん!」
という声が聞こえた瞬間、ガッという痛そうな音が響いた後、坂本さんが思いっきり倒れこんできた。
「ふぬを!!」
「え、ちょ、ぎゃあうおわっ!!」
やばい、潰される!そう思って叫びかけたとき、真横から伸びた腕をひっぱられた。
「大丈夫か」
「銀さん…!ありがとう、私は大丈夫。だけど舵はぜんっぜん大丈夫じゃない」
みごとに根元からボッキリと折れてる。
「アッハッハッハ、そーゆーパターンできたか!どうしようアッハッハッハッ!!」
「「「「アッハッハッハッじゃねぇえええええーーー!!!」」」」
「あーつーいー…」
結局、私たちは灼熱の砂漠が広がる星へと墜落してしまった。
死ななかっただけでもよかった、なんていえるレベルじゃなく暑い。むしろここで死にそう。
「私ちょっと喉かわいたからあっちの川で水飲んでくるネ」
「川ってどこ!?イカンイカンイカン!!その川渡ったらダメだよォォ!!」
こんなときでもツッコミを忘れない新八君はすごいなぁ、と心の中で思っていると、隣から声をかけられた。
「嬢ちゃん、もしかしてスナックすまいるで働いとらんかのう」
「え?あ、働いてますけど…」
「おーおー、やっぱりそーか。噂になっちょったからのう、一度会いたかったんじゃきー」
そう言って両手を握られ、上下にぶんぶんと振られる。
「ありがとうございますー…って噂ってなんですか」
「不思議な服着た子で、話しとると楽しいー言うとったのぅ」
まさか、店での噂がこんなところで聞けるとは思わなかったけど、嬉しかった。
私はこの世界で上手く生きていけてるんだって思えた。
「私、大抵午前中に働いてるので、よかったら来てくださいね。あ、名前はです。」
「わかったぜよ、。奮発してやるからのう、楽しみに待っときー!」
「あはは、楽しみにしてますねー!」
なんて話をしてるうちに、銀さんと神楽ちゃんがえらく遠くに行ってしまった。
川がどうとか聞こえるけど…それ幻覚だよね。ああ、新八くんが泣きそうになってる。
「、救援隊が着いたぜよ。水もあるからのぅ、行ってくるといいぜよ」
あいつらはわしに任せときー、と言って笑って手を振ってくれる。
私はありがとう、とお礼を言って一足先に船へと走った。
「ふあー、生き返るねー」
「ほん、とにな。水って偉大だー」
そういいながら、水の入った大樽を神楽ちゃんの口につっこんでる銀さん。
なんというか、すごい飲みっぷりだわ神楽ちゃん。
「うちの頭が迷惑かけたのぅ」
「あ、いえいえ。こっちこそ助かりました!ありがとうございます!」
私が船にたどり着いたときには、えらく顔色が危なかったらしい。
そのときにこの人、陸奥さんが助けてくれたんだ。
「そこはかとなく…なんか船揺れてません?」
「あぁ、それは…あれじゃろ」
そう言って陸奥さんが指差した先には天人がいた。…っていうかアレ天人?
「ありゃ砂蟲じゃ。砂蟲ィィー、そのモジャモジャやっちゃってー!」
「ちょっとおおおおー!!」
逃げ回る人たちの声に重なって、坂本さんが「大砲ばお見舞いしてやれェェ!」という声が響いた。
その声を聞いてすぐ、陸奥さんは「大砲うてェェ!」と叫んで、船の上へと登っていく。
「ってちょっと、そしたら坂本さん死ぬって!」
「大丈夫だ。あいつァこんなんで死なねーよ。ま、とりあえず非難しとけよ!」
そう言って銀さんは船の上を走り抜けて、大砲の先に飛び乗って叫ぶ。
「辰馬ァ、てめー星をすくうとかデケー事吐いてたくせにこれで終わりか!?」
私は大砲へと走る。耳だけは、銀さんの言葉に傾けながら。
「昔からテメーは口だけだ…俺を見ろ俺を!自分の思ったとおり生きてっぞォォ!!」
「新八くんっ、銀さん、は!?」
「さん!今は砂嵐がひどくて…あ!」
ゆっくりと消えていく砂嵐の中に、人影が2つ見えた。
「…無茶なことを。自分も飲まれかねんところじゃったぞ」
「ほんと、なに考えてんでしょうね。なんかあの人らしか見えないもんがあるのかな」
「でも、ちょっといいな」
「え?」
「ううん、なんでもなーい」
何年経っても、ああやって笑える友達がいるって、いいなぁって思った。
この世界でできた友達と、あんなふうな友達になれたらいいな、なんて思ったことは、秘密にしておこう。
あとがき
詰め込んだ所為で長くなりました…すいまっせん!
前半ギャグ、後半しっとりって感じで頑張ってみましたです。次回はー…どうしようかな。←
2008/8/6