「今日もお疲れさま、ちゃん」
「はいっ、お妙さんはまだお仕事あるんですよね。頑張ってくださいね!」
「ええ、ありがとう」
「お妙さぁぁん!俺も応援してま「出てくんなっつっただろうがゴリラァァァアアア!!!!」
「……たーまやー…」
第3曲 慣れって怖い
壮絶なお見送りをされることにも、だいぶ慣れつつある自分にちょっと涙が出そうになった。
この世界に来て、変なことに慣れたなぁ、なんて思いながら店の外へ出る。
「あ、土方さん」
「あぁ、ちょうどいいところで会ったな。…近藤さん見なかったか?」
「それなら…今日はあっちの方へ飛んで行きましたよ」
言いながら、お妙さんが近藤さんを蹴り飛ばした方向を指差す。
「飛ん…!?…はあ…そうか。いつも悪いな」
「いいえ、土方さんこそいつもお疲れ様です」
仕事の合間を縫ってお妙さんに会いに来る近藤さんを保護するため、土方さんは毎日苦労している。
こうやってお店に来たりするときもあれば、私が屯所まで近藤さんをひっぱっていく時もある。
そんなことを繰り返しているうちに、私たちはいつの間にか仲良くなっていた。
「…近藤さん保護、頑張ってくださいねー!」
去っていく土方さんの背にそう叫ぶと、少しだけ振り替えって手を振ってくれた。
…物凄く疲れた顔してたけど。
万事屋へ帰る途中にある町内伝言板みたいなものに、新しい紙が張られていた。
「んー?…お祭り…お祭りィィ!?」
大きく書かれたお祭りの文字の下に書かれた日付は…今日から三日後、かぁ。
お祭りとなると、やっぱ気が緩んじゃうよなぁ。やっぱり屋台も出るんだろうなぁ。
全部制覇…したらお金足りないよね。でもお祭りの時って、つい色々食べたりしちゃうんだよねー。
もう想像するだけで顔がにやけちゃうよコノヤロー!
なんて頭の中でひとり言を唱えていると、隣から声がした。
「ククッ、嬉しそうな顔してんなァ。祭りは好きか?」
「え?あ、はい!かぶき町のお祭りには初参加なので…」
というか、この世界で初めてのお祭り参加だ。
「そりゃあいい。今度の祭りは派手なモンになるだろーよ」
「そうなんですかっ!?うわー、三日後が待ち遠しいですね!」
そう言うと、その人はふっと小さく笑ってくるりと後ろを向き、歩き出した。
「あぁ、そうだな。ふ、ククッ…楽しみにしていろ」
「は…はい!」
…と返事はしたものの、なんだか少しだけその言い方がひっかかった。
なん、だろう。何かあったような…お祭り…。
え、ちょっとまって、まさか、私が今喋ってた人って…。
…いや、ないよね。うん。
それより、早く万事屋へ帰ろう。そして皆をお祭りに誘おう。
万事屋へ向かう途中、街中から凄い歌が聞こえてきた。
っていうか、歌?
あれ、でも心なしかこの声新八くんっぽい気がするんだけど。
そう思って私は、声の聞こえるほうへと走り出した。
「てめーの奏でる騒音のおかげで近所の奴はみんなガシャコンノイローゼなんだよ!!」
「ガシャコンなんて騒音奏でた覚えはねェ!ガッシャッウィーンガッシャンだ!!」
「似たようなモンだろーがァァ!つーか頭とれる!もげる!」
「オイ三郎!かまうこたァねェ、力ずくで追い出せ!」
「御意」
「あ、やっぱりここじゃん!」
ガラクタっぽいものに囲まれたところに万事屋の皆とお登勢さんがいた。
あと…でっかいロボがいる…!
「ヤバイアル!逃げるネ!」
「え?」
神楽ちゃんの叫び声と同時に、物凄い勢いで銀さんが飛んできた。
「ななな何事ォォオゴフッ!!」
ドゴッ、という重い音を立てて、私の頭と銀さんの頭が激突した。
うっすらと遠のいていく意識の中。
「てめー、に何してるネうおりゃああああ!!」
「いや、やったのさぶろガフッ!」
そんな声が聞こえた。
あぁ、うん…今日は飛ぶものに縁があるのね…なんて思いながら、私の意識は遠のいていった。
「…、さん、大丈夫ですか!?」
「う…新八、くん…?いたたた、なにこれ、なんか若干デジャヴを感じる…」
「デジャヴ?」
「あ、いや、こっちの話」
ずきずきとまだ痛む頭をおさえながら、ゆっくりと起き上がって周りを見渡す。
機械…いや、この世界じゃからくりって言うんだっけ?それがそこら中に置いてある。
「あああ!、目ェ醒めたアルか!」
「マジか!おい、大丈夫か!」
カラクリを肩に担いで運んでいた神楽ちゃんと銀さんが駆け寄ってくる。
「うん、まぁなんとか…大丈夫だよ」
さっきまで痛かった頭も大分治ってきた。…慣れてきてるのかなぁ。
「銀ちゃんが石頭だったから…!ごめんヨ!」
「え、俺のせいなの?俺不可抗力だったことねぇ?」
「あぁもう大丈夫だから!気にしないで!…それより、なにしてんの?」
銀さんの肩に乗ったカラクリを指差してたずねると、どうやら引越しの準備をしているらしい。
機械の音が近所迷惑だから、引っ越すらしい。強制的に、川原へ。
私も分解された軽めのカラクリを持って川原へと向かった。
「よし、ここなら幾ら騒いでも大丈夫だろ。好きなだけやりな」
「好きなだけってお前…みんなバラバラなんですけど!どーすんだ!これじゃ祭りに間に合わねーよ!」
がくり、とうな垂れて源外さんは叫ぶ。
「「「祭り?」」」
疑問の声を上げる万事屋の皆。
「そうそう、三日後にあるんですよね、お祭り!」
「あぁ。それに将軍様も出るらしくてよォ、そこで俺のカラクリ芸を披露するよう幕府から命令がくだってんだよ」
間に合わなかったら切腹モンだ、と呟いて座り込む。
「…ヤベ、カレー煮込んでるの忘れてた。帰るぞおめーら」
銀さんのその一言で、私たちは川原から逃げるように回れ右をして歩き出す。
「オイぃぃぃ逃げてんじゃねぇええー!!」
という叫び声を背に、私たちはすたすたと万事屋へ戻った。
…ごめん源外さん、手伝ってあげたいのは山々だけど、私気絶してたから原型わかんないんだ!
あとがき
町中で登場したあの人は…多分皆様の予想通りです。…多分(ぁ
次回はお祭り!色んな人と絡ませたいけど、そんな文章力が無いっていうのが難です。
2008/8/28