「あぁ、どこからともなく甘い香りが…」

「綿菓子だ!!これァ綿菓子の匂いだ!」

「え、何でわかるの銀さん」

「ふふ…ちゃーん…糖分王をなめんなよ!

「喋ってねーで仕事しろお前らァァ!!」

 

 

 

第4曲 お祭りはどの世界でも楽しいもの

 

 

スパナを片手に走り出そうとした私と銀さんに向かって叫ぶ源外さん。

今、私たちは先日バラバラにしたカラクリを組み立てている。…っていうか、バラしたの私じゃないし!

 

「平賀さん、もう祭り始まっちゃいましたよ。手伝いにきたけど、もうこれ間に合わないんじゃ…」

「カラクリ芸を披露するのは夜からよ。夕方までにどーにかすりゃなんとかなる」

手は休めずに、そう言う源外さん。

 

 

…このカラクリ、お祭りの後半で…兵器みたいに使われちゃうんだよね。

どうしよう。私には改造とかそんな技術はない。決まったところのネジをしめたりするくらいしかできない。

…ちょっと緩めにしといちゃお。

 

 

きゅきゅっとネジをしめていると、後ろから神楽ちゃんの声が聞こえた。

 

「アナタ私が何も知らないと思ってんの!?コレYシャツに口紅がベットリ!もうごまかせないわよ!」

「御意」

「御意御意っていっつもアナタそれじゃない!そんなんだから部下になめられるの!」

 

 

「…何だっけこの台詞、どっかで聞いたことあるような…」

「この間の昼ドラじゃないかなぁ…」

ぽつりと呟いた言葉に新八くんが返事をしてくれた。

 

 

「あーもうドメスティックバイオレンスぅぅぅーー!!!」

「ギャアアアア何してんだァァ!!やめろォォォ!!」

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、やっとカラクリのほとんどが回復した。

…もとの形と同じかどうかはともかく、ね!

 

「ったく、おめーらが来た所為で仕事が増えたんだよ。余計なことばっかりしやがってこのスットコドッコイが」

「公害ジジーが偉そーなこと言ってんじゃねー!俺達ぁババーに言われて仕方なく…」

そう言いかけた銀さんの手元にじゃらん、と音を立てて袋が投げつけられた。

 

「最後のメンテナンスがあんだよ。邪魔だから祭りでもどこでも行って来い」

 

表情こそ見えなかったものの、その声は思っていたよりも優しかった。

 

「ありがとう平賀さんっ!!」

!銀ちゃん!早く早くー!」

「いたたた、神楽ちゃん腕もげる!!」

 

なんて叫びながら、私たちは笑顔で走りながら川原を後にした。

 

 

 

「フン…まったくにぎやかな奴らだ。なァ、三……三郎ォォォォ!!お前はダメだってば!!三郎ォォ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

道に並ぶ屋台。そこら中に飾り付けられた提灯の明かり。

私の世界とは違って、妙にそれが町に溶け込んでいて、あぁ、ここって江戸なんだって思った。

 

そんなことをしみじみと思いながら、私はりんごあめを片手に…万事屋のみんなを探していました。

「違う…違うって、ただはぐれただけだって。人多いもん、しょうがないって」

自分に言い聞かせるように呟きながら人混みの中を歩く。

 

 

歩き続けていると、見慣れた服の人をみつけた。

「…ん?あれ、ちゃん?」

「ああああ山崎さぁぁあん!!!」

 

 

屋台の前で二つのパックを片手に手を振る山崎さんに小走りで近づく。

「どうしたの、1人で…あ、もしかしてまい」

「はぐれたんです」

にっこり、と効果音がつきそうな笑顔を浮かべると、山崎さんは一瞬怯んだ。

 

 

 

 

 

「そっか、万事屋の旦那たちと…」

「一緒にでっかいカラクリがいると思うんで、早く見つかるかと思ってたんですけど…これがなかなか」

少しだけ道から逸れて、建物の壁に背中を預ける。

そして山崎さんがさっき買ってたたこ焼きをもぐもぐと食べていた。

 

 

「山崎さんは1人できてるんですか?」

「ううん、一応仕事なんだよね…ってあ。忘れてた、副長!!」

 

背中を壁から離して、山崎さんは慌てて言った。

「ごめん、俺今から副長たちのとこ戻らなきゃ!ほんとは一緒に旦那たち探してあげたいけど…」

「あ、いいえっ、私こそ引き止めちゃってすいません」

「忘れてた俺が悪いんだよ、あの、ちゃん……お祭り楽しんでね。じゃ!」

 

そう叫ぶように言って、山崎さんは走っていった。

さっきの間は、何を言おうとしてたんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて。どうしたものかな…」

むやみに歩き回るよりも、どこか分かりやすいところにいたほうが皆を見つけられるだろうか。

お祭りの会場から少し離れるだけで、人はかなり減っている。

もうすぐ中心の舞台で何か始まるんだろうか。

 

 

「やっぱり…違うんだなぁ…この世界と私の世界は…」

 

 

「世界、ねェ。そりゃ、どういうことか聞きてぇモンだなァ」

 

 

その声が聞こえた瞬間、背筋にぞくりを悪寒が走った。

後ろを振り向く前に、伸びてきた手に口を塞がれる。

 

「えっ、なにもがっ

「そのまま、黙ってついて来い」

有無を言わせないような低い声でそう告げられ、私はゆっくりと会場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの…わ、私に何か御用でしょうか…?」

川原に差し掛かったところで、私は前を歩く人に尋ねる。

 

 

「お前、何者だ?」

 

その人は足を止めて振り向かずに、静かに言った。

「…、地球人です。…あなたは?」

心の中で返ってくる返事の言葉を予想して、問う。

 

 

「高杉晋助」

 

 

ゆっくりと私のほうを振り返って言う。

それと同時に、強い風が一度だけ吹いた。

 

 

 

 

 

 

あとがき

山崎さんとお祭り!あの間は「攘夷志士に気をつけて」って言おうとしたけど、言ってしまったら不安になって

お祭り楽しめないだろうなーなんて思ったから言うのやめた…らしいですよ!(何

そして高杉さん登場。キーパーソンになっていただきますよウフフフ!←

2008/9/18