「怪談話会?」
「うん、そうそう。今夜屯所でやるんだけど、ちゃんも来ない?」
「でも私一般人だし…混ざっちゃっていいの?」
「いいよいいよ!もともと局長が誘ってあげたらどうだーって言い出したんだから」
「じゃあ…行く!!」
第6曲 オチを邪魔したらいけません
スナックの仕事が終わってから町をぶらぶらしていた時、山崎さんにそう誘われて、私は今屯所に来ています。
銀さんには「おまっ、あんな男だらけのむさ苦しいところへ夜中になんて…いけません!」なんて猛反対されたけど、
大丈夫だってば!と言い切って、今日は屯所に一泊。
…ごめん銀さん。帰ったらちゃんと謝るから。
なんて心の中で思っている間に、怪談話は佳境へと進んでいく。
「寺子屋の窓から赤い着物の女がこっち見てんの。俺もうギョッとしちゃって」
私の左側に座る近藤さんの手に握られたうちわは、風を送ることなく止まったまま。
「でも気になったんで恐る恐る聞いてみたの。何やってんのこんな時間にって」
私の右側に座る山崎さんの手は、ほんの少しだけカタカタと震えている。
…実際、先を知ってる私も、怖い。真っ暗の屯所は結構…その、アレな雰囲気が出てるわけで。
「そしたらその女、ニヤッと笑ってさ…」
皆がごくり、と唾を飲み込んだ瞬間。
「マヨネーズが足りないんだけどォォ!!!」
「「「ぎゃふァァァァ!!!!!」」」
音も無く現れた土方さんの叫び声で、皆の心臓は飛び跳ねた。
「ひひひ土方さんッ!もっ、もうちょっとタイミング考えてくださいよ!」
「知るかァ。っつーかなんではここに…って何ひっついてんだおめーら」
土方さんに言われて気付いた。
どうやら、無意識に隣にいた山崎さんに飛びついてしまっていたみたい。
「…うわああああ!ごごごごめんなさい!」
がばっと山崎さんの肩にしがみ付いていた手を離して体を起こす。
「あっ、ううん、俺は大丈夫だから!ちゃんこそ大丈夫?」
そう言って私の顔を覗き込む山崎さん。
「だ…大丈夫、です」
え。なんだこれなんだこれ。ちょっとドキドキしちゃうじゃないか。
あれか、つり橋効果ってやつだよね!うん、きっとそう!
そして、心臓の落ち着いた隊士の皆がぎゃあぎゃあと口々に騒ぎ出す。
「副長ォォォ!なんてことするんですか大切なオチをォォ!!」
「知るかァ、マヨネーズが切れたんだよ!」
と言いながら既にマヨネーズが山になっている焼きそばを見せ付ける土方さん。
「局長?あれ、局長ー!?」
「大変だァァ!局長がマヨネーズで気絶したぞ最悪だァァ!」
一方近藤さんは、床に倒れていた。
「…山崎さん、私今日どこで寝ようかな」
「向こうに来客用の部屋があるから、そこ使っていいよ」
「ありがとうございまーす」
そう言って、こっそり大広間を抜け出した後。
大きな悲鳴が屯所内に響き渡った。
「うわお、何事ですか、これ」
身支度をして、屯所の食堂で朝ごはんを食べてから昨日の大広間へ行ってみると、
そこには大勢の隊士の人たちが寝ていた。それも、苦しそうに。
「おはよーごぜーやす、。おめーは無事だったんですねィ」
「おはようございます沖田さん。無事って、なにかあったんですか?」
そう尋ねると、沖田さんは立ち上がって言った。
「ま、ここで話っつーのも何なんで、客間へ移動しましょーや」
土方さん、沖田さん、近藤さんの話によると、どうやら皆『赤い着物の女』にやられたらしい。
「あの日屯所にいた女っつったら…」
ちらりと私に視線を向ける沖田さん。
「なにこっち見てんですか!違いますよ!そもそも私着物じゃないですし」
着物は…まぁその、着方がよくわからないから、未だに元の世界の制服を着てるんだよね。
「じゃあやっぱり幽霊なんですかねィ」
「バカヤロー幽霊なんざいてたまるか」
煙草をふかしながらそう言い捨てた土方さんに近藤さんがすぐさま突っ込む。
「霊を甘く見たらとんでもないことになるぞ、トシ。この屋敷は呪われてるんだ…!」
外の景色を見ながら近藤さんがそう言った時、廊下の端から山崎さんの声が聞こえた。
「局長!連れてきました。街で捜してきました拝み屋です」
「どうも」
そうあいさつをした声は、聞き覚えのある声だった。
「…なんだこいつらは。サーカスでもやるのか?」
「いや、霊をはらってもらおうと思ってな」
近藤さんは立ち上がって、拝み屋と呼ばれた3人のと一緒に屯所内を回りに行った。
「無理だろ、あんなうさんくさい奴らじゃ」
「もっと他にいなかったんですかィ」
「そもそも拝み屋なんて、簡単に見つかりませんよ…」
「ま、物は試しってことで、見てもらおうよ。案外いけるかもしれないよー」
後に残った私たちは、そんな会話をしていた。
あとがき
更新する時期が明らかにおかしいですが、気にしない。怪談編スタートです。
真選組絡みもたまには入れていかなきゃですからね!
2008/11/02