「こりゃ相当な霊の波動を感じますなゴリラ」
「あ。今確実にゴリラって言ったよね」
「まァとりあえず除霊してみますかね。こりゃ料金も相当高くなるゴリよ」
「オイオイなんかもう口ぐせみたいになってるぞ」
第7曲 設定はちゃんと考えておくべき
なんだか近藤さんが虐められてるような気がしなくも無い、そんな話し合いが続いていた。
話の中の半分がどうでもいいことだったような気がするけど、この際それはおいておこう。
それより、さっきから凄い視線を感じるんですけど…銀さんっぽい人から!
さりげなく視線をそらしたりしている間に、霊の正体は、
『ベルトコンベアにはさまって死んだ工場長に似てるって言われて自殺した女』の霊ということになった。
…長ェ!!!
「とりあえず…そこのお嬢さんの横に座ってるお前、ちょっと来い」
「え?」
私の横に座ってる、というと山崎さんだ。
「今からお前の身体に霊を降ろして除霊するから」
「え、除霊ってどうやるんですか」
そう尋ねながら山崎さんは廊下へ出る」
「お前ごとしばくんだよ。あ、お嬢さんは危ないから…俺の横にいなさい」
「いやそれ余計危ないですよね」
誰が好き好んで除霊しようとしてる人の横へ行くかァァ!
ということで、私は一番近いところにいた土方さんの横に座る。
そのとき、銀さんっぽい人から舌打ちの音が聞こえたような気がするけど、きっと空耳だよね。うん。
「ってちょっと待てェェ!しばくなら誰でもでき」
山崎さんがそう言いかけた瞬間、鳩尾からドスリという重い音と山崎さんの呻き声が聞こえた。
「ハイ!今コレ霊入りましたよー」
「霊っつーかボディブローが入ったように見えたんですけど」
土方さんに同意する気持ちで、私も小さく頷く。…とっても痛そうだった。
「違うよ私入りました。えー皆さん、今日でこの工場は潰れますが責任は全て私…」
「オイィィ!工場長じゃねーか!!」
土方さんがそう叫ぶと、拝み屋3人は固まってひそひそ…というには大きすぎる声で話し合い始めた。
「あれ、なんだっけ?」
「もういいから普通の女やれや!」
「無理ヨ!普通に生きるっていうのが簡単そーで一番難しいの!」
「誰もそんなリアリティ求めてねーんだよ!」
「ちょっと2人とも仕事中ですよ!!きいてんの!?」
ぎゃあぎゃあともめだした2人を止めようと、もう1人が2人の間に入ろうとする。
その絶妙なタイミングで3人の顔を隠していた帽子やら眼鏡やらが外れ落ちる。
「「「…あ」」」
「山崎さーん、大丈夫ですかー?」
座布団を枕に、座敷に寝かせた山崎さんに呼びかけても返事は無い。
どうやらかなりしっかり入ったみたい。…ボディブローが。
外では銀さん、新八くん、神楽ちゃんの声が聞こえる。
主に叫んでるのは銀さんだけど。
というか逆さづりにされてよくそれだけ喋る元気あるね!
「ーー!もうお前だけが頼りなんだ!助けてェェ!」
「うん、助けたいのは山々なんだけどね、サディスィック星の王子に逆らう勇気がないんだよ」
聞こえてきた声にそう答えながら、私は庭へ出る。
「無理だって、もう耐えれねーって。逆流するって」
頭に血が上っている所為か、三人の顔は赤い。
「…沖田さん、そろそろ離してあげましょうよ。ほら、土方さん吊った方が楽しいですよきっと」
「あ、なるほど。そりゃ一理ありやすねィ」
沖田さんはぽん、と手のひらを打ち、立ち上がる。
「ー!おめーどんな説得の仕方してんだコラァァ!」
「ぎゃああごめんなさい!でもこれしか方法思いつかなかったんです!」
ロープが解かれた瞬間、崩れ落ちるように3人は地面に寝転がった。
「あー気持ち悪いヨ」
「うえぇ…」
逆流しそうになってる新八くんの背中をさすってあげたり、神楽ちゃんの顔を手で扇いであげたり。
そうやってるうちに、2人は少しずつ回復していった。
「銀さん、大丈夫…じゃないよね」
「大丈夫じゃねーよ。がここに来てなかったら、こんな仕事してなかったんだぞー…」
力の入ってない声で銀さんは呟く。
「え、これ私の所為じゃなくね?ちゃんと設定考えてこればよかったんじゃないの?」
「しょーがねーだろ。本当に仕事はいるとは思ってなかったんだからよォ」
タイミングがいいんだか悪いんだか…なんて呟く銀さんの顔色は少しずつ良くなってきた。
「…えーと、その、色々と心配かけたみたいで、ごめんなさい」
銀さんが完全復活する前に謝っておこう、と思い頭を下げる。
「ま、無事ならいいけどな」
ふわり、と優しく笑った銀さんに、今になって罪悪感が込み上げる。
あぁ、こんなに心配かけちゃってたのかな、なんて。
「…ごめんね、銀さ」
「がいねーと新八の愚痴は俺に向かってくるし、定春の散歩もやらされるし、神楽の相手もしなきゃいけねーし」
「……」
「ほんっと大変なんだよ。銀さん過労死しちゃうから」
…前言撤回!!
この野郎、自分のことしか考えてねェェ!!ていうか雑用扱いだよねそれ!
「だからはちゃんと万事屋にいてくれよな」
「…気が向いたらね!」
立ち上がって新八くんのところへ歩いて行く。
後ろから「え、なに、俺なんか言った!?ちょ、ごめんって!」と叫ぶ銀さんの声があまりにも必死だったから。
つい顔が笑ってしまうのを押さえられなくて、後ろを向いたまま言う。
「じゃ、お互い様ってことで今回の件はチャラね!」
心配かけてしまったこと。実はそれが心配じゃなかったこと。
2人で謝ってたら埒が明かないもの。だから、これでチャラ。
そういうと銀さんは立ち上がって「でも、あんまり外泊はすんなよ」と言って私の頭を撫でた。
私は「うん、そうする」と言って笑った。
あとがき
あんまり話進んでなくて申し訳ない…!
まだ銀さんとの好感度メーターはラブまで行ってませんので、ああいう締め方になりました。
2008/11/29