「ね、絶対怒ってるよね」

「だろうな。…いや、むしろ俺も怒られそうだ」

「なんで銀さんが怒られるの。私でしょ、これ」

「いやいや、俺も、お前を連れて帰るのが遅い、って怒られそう」

 

 

 

第15曲 ただいま、ありがとう

 

 

 

 

そんなわけで、私たちは万事屋の玄関が開けられないでいた。

「ほら、銀さん先に行ってよ」

「いやいや、ちゃんが行ってよ。タライとか降ってきそうだもん」

お前私がタライ攻撃の餌食になってもいいというのか!

 

 

「あーもう、こんなことしてて余計に遅くなっちゃうじゃん!いく、よ!」

意を決して、玄関の戸に手をかける。

 

 

カラ、と乾いた音が小さく鳴る。

 

「た…ただ、いまー…」

 

ぼそぼそと呟いてみる。

万事屋の中は真っ暗で、人気がない…と思ったが。

玄関に上がったとたん、電気がついて居間の方からドタドタと足音が聞こえた。

 

 

「遅いアルーーーー!!!あと銀ちゃん」

「やっと帰ってきた!心配したんですよ、さん!あと銀さん」

「俺はおまけか。その扱いは酷すぎるだろオイ」

 

 

ぎゅううと抱きついてきた神楽ちゃんの頭を撫でながら、ぽかん、とする。

「ごめんネ!私、何かに言っちゃいけないこと言っちゃってたかもしれないアル」

「か、ぐらちゃん?」

どうしたんだ、と思いながらそっと頭を撫でる。

 

 

 

「怖かったネ。がどっかいっちゃうみたいで、心配だったヨ」

「神楽ちゃん……っ」

ぎゅ、と私の体に腕を回して顔を見上げながら言う。

すごく、すごく心配かけてしまったんだ、という気持ちがこみ上がってくる。

 

 

「とにかく、さんが無事に帰ってきてくれてよかったです」

「新八くん…」

ほっとしたような顔で、新八くんは笑う。

 

 

「夕飯作っておきましたから、食べましょう?お腹減ってませんか?」

そういえば、いつもの夕飯のじかんはとっくに過ぎている。

「うん、お腹へった」

呟くように言うと、新八くんは満足そうに笑って居間の方へと戻った。

 

 

 

「神楽ちゃん」

私にしがみついたままの神楽ちゃんの頭を撫でながら、私は言う。

 

「神楽ちゃんのせいじゃないよ。ごめんね、ちょっと悩み事が募って爆発しちゃったんだよ」

悩んで、焦って、ここを飛び出してしまった。

「もう急に出て行ったりしないから。…ごめんね」

 

 

そう言うと、神楽ちゃんはゆっくりと顔を上げて、私の顔を見る。

「もういなくなったら嫌ヨ、。悩み事なら、何でも私に相談するヨロシ」

「うん、ありがとう」

 

 

「私もお腹へったネ」と言って、居間へと走っていく神楽ちゃんを見ていると、銀さんが私口を開いた。

 

「怒られなくてよかったな」

「…そーだね」

 

この人たちなら、信じてくれるかもしれない。

別世界、というものを、信じてくれるかもしれない。

 

 

 

「心配してんのは、俺も、あいつらも同じだ。だから、もう…」

「うん、わかってる。もう、勝手にいなくなったりしないよ」

 

 

 

 

大切な友達、そして家族へ。

私はまだ、帰れません。もうしばらく、こっちでみんなと生きていたいです。

 

そう心の中で呟いて、私と、銀さんは居間へ行く。

 

 

 

 

机に並べられた夕飯。

そして。

 

「改めて、さん」

新八くんの声に、神楽ちゃんが頷く。

そして銀さんも2人の横にならんで、私と向かい合う。

 

 

 

 

「「「おかえりなさい」」」

 

 

 

 

「……ただいまっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

夢幻幻想曲と話の数を合わせようとして出来上がったお話。

第二章がこれで終了でございます。お付き合い、ありがとうございました!

2009/05/06