「ウソォォォォ!?ジャスタウェイがァァ!!」
「ひええええ!耳が!耳が痛い!」
「なんてこった、まさかホントにおやっさんが…確かに幕府の所為でリストラされたとかグチってたけど…」
「まさかじゃねーよ!超一流の食材が揃ってるじゃないスかァァ!!」
「悪いのはジャスタウェイではない!ジャスタウェイに罪はない!」
「局長ォォォまだ持ってたんスか早く捨ててェェ!!」
第10曲 屋根の上も戦場です
山崎さんのツッコミを聞きながら私たちは連鎖爆破を続けるジャスタウェイから逃げる。
まあ、近藤さんが持ってるのもジャスタウェイだけど。
頼みますからそれ、爆発させないでくださいね…!
爆音で耳が痛い、と思いながら走っていると後ろから人の叫び声が聞こえた。
「てめーらかァァァ!!よくも俺の計画台無しにしてくれたなァァ!!スパイどもが血祭りじゃああ!」
私たちの後を追うように走ってくるのは、おやっさんもといマムシだった。
「げェッ、おやっさん来たぞォォ!!」
「山崎さん!こっち!」
倉庫の屋根の上に避難する。
先に近藤さんが上って、銀さんが上る。
「さん、手を」
「あ…ありがと!」
銀さんの手を掴むとすぐに、ぐっと屋根の上まで引っ張り上げられる。
「おやっさんとはやり合えん。なんやかんや言っても恩がある」
そう言っている間に山崎さんも屋根まで上りきる寸前。
「逃がすかァァ!!」
木刀を手に飛び掛ってきたマムシに向かって、銀さんは屋根の上にあったドラム缶を放り投げた。
ガコン、と痛そうな音を立ててマムシにドラム缶が当たる。
続いて近藤さんが持っていたジャスタウェイをひとつ、ぽいっと放り投げる。
ドゴオン、と屋根の下で爆発が起こる。
「うわわわ!」
「山崎さん!」
爆風に煽られてバランスを崩しかけた山崎さんに手を伸ばす。
私の手を支えに山崎さんも屋根の上まで上る。
「おいィィィ!やり合えないんじゃなかったのかァァ!?」
「今のテロリストもびっくりな鮮やかさだったよ2人とも」
とんだ連携プレーだ。
見てるこっちがびっくりする。
「やり合えないなんて言ったかゴリさん」
「ダメだ思い出せない。記憶喪失だから」
「便利な記憶喪失だなオイ!!」
「本当は思い出してて、記憶喪失のフリしてるんだったらぶっ飛ばすよ銀さん」
隣に立つ銀さんに苦笑しながら言う。
その直後、爆煙からスッと伸びた木刀が山崎さんの首を捕らえた。
「や、山崎さんっ!」
「ククク、動くんじゃねーぞ」
山崎さんを捕らえたまま、マムシは笑う。
「やってくれたじゃねーか…まさかてめーらが幕府の犬だったとはな」
そうは言われても、実際幕府関係者は2人だ。
それも片方はただいま記憶喪失。
「てめーらのおかげで俺が長年練ってきた計画も水の泡だ。もう少しで幕府に目にもの見せられたのに」
はあ、とわざとらしくため息を吐いてマムシはニヤリと笑う。
「だがこうなったらもう後にはひけねぇ。腐った世の中、ひっくり返してやらァ」
…現在私たちは結局マムシに捕まり、屋根の上にいる。
「背中が痛い」
「さん、今それどころじゃないよ」
そんなことを言われても、痛いものは痛い。
だって、いくらなんでもマムシ工場の屋根の看板に縛り付けられてるんだから。
「…さん、すみません」
ぽつりと小さな声が隣から聞こえた。
「やっぱり僕についてこないほうがよかったんですよ」
遠くを見つめたまま、ぼんやりと銀さんは呟く。
この野郎、いい加減にしなさいよ。
「だーかーら、私は好きでついて来てるの!銀さんはそれより記憶戻すことに専念しててよ!」
「でも僕は、前の僕には…」
「お前らちょっと話聞けェェェ!!!」
息子の日記を朗読していたマムシがキレた。
ごめん、こっちはこっちで色々あるんだよ。
そんなことを考えてるうちに、ゴゴゴッという地響きと共に、屋根がゆれる。
そして屋根を突き破って出てきた大砲。
「十年かけてつくりあげた、この『蝮Z』で腐った国をブッ壊して革命起こしてやるのよ!」
マムシが叫ぶ方向、地上にはいつの間にか真選組の人たちが集まっていた。
「真選組の皆が来れば、もう大丈夫だよな。はあ、さっさと局長をなんとか…」
「山崎さん、あの、大丈夫じゃない気がします」
「へ?」
腕が使えないので、くいっと顎で地上を指す。
「…俺の目がおかしいのかな。沖田隊長がこっちに大砲向けてるように見える」
「ですよね。私もそう見えるんですよ」
ここじゃ逃げようにも逃げられない。
「大丈夫でしょう、君達の仲間なんだから。ちゃんと考えてるでしょう」
「ああ、俺も信じてるぞジミー君!」
「なんで局長までジミーとか言い出してるんですか!!」
縛られてなかったら、今頃山崎さんは近藤さんを叩いていただろう。
「だからお前らちょっと静かにしててェェェ!!」
「あっ、すいませーん」
再びキレたマムシに気の無い返事を返す。
「すいませんちょっとあのゴリ…局長ぶっとばしたいんで、これ解いてくれませんか」
「バカ言ってんじゃねーよ!お前ら緊張感とか無いのか!」
山崎さんの言葉にこれまた大声で返すマムシ。
緊張感はバリバリだけれど、私はこの先どうなるか大体分かってる。
今のところ話にズレはなさそうだし。
銀さんも記憶はちゃんと戻る、はず。
それでも、心配ではある。
「さん、大丈夫ですよ」
ふわりと笑う銀さんと目が合う。
「…銀、さん」
「きっとあの人たちが何とかしてくれます。ジミーとゴリさんの仲間なんですから」
「うん、そうだよね」
私も少し笑って、そう返事をした。
それとほぼ同時に、私たちのいる屋根が爆音と共に吹き飛んだ。
あとがき
中途半端になってしまったのでちょっとした会話を追加。
思ったより長くなっている記憶喪失編。
2010/05/08