「「はァァァァ!?解雇ォォォ!!!?」」
「うるっせーな、デケー声出すんじゃねーよ。あーあ、深ヅメしちゃったよ」
「神楽ちゃん解雇したっていうんですか!!」
「連れて帰れっつっただろうがァァ!!このくるくるパーが!!」
「えっ、ちょ、ちゃん今日すごく怖い!」
第3曲 時と場合を考えて発言を
昨日言われたとおり、新八くんの家に一晩泊まって今日万事屋へ来てみたら神楽ちゃんがいなかった。
どういうことだ、と新八くんと二人で銀さんを問い詰めたところ、どうやら解雇したらしい。
あーもー!連れて帰って、って言ったのに!
そうしたらこの後の展開が平凡になるはずなのに!
…どうやっても、話は変えられないんだろうか。道信さんの時のように。
「じゃあ神楽ちゃんお父さんと一緒に帰っちゃったの!?」
「しらねーよ。帰ったんじゃね?よかったろォ、金ためて実家に帰るとか言ってたのに手間が省けたんだから」
銀さんは新八くんの問いかけにダルそうに答える。
「それにお前なァ、ガキとはいえ女の子が野郎の家にあがりこんでるっていうのはイカンよやっぱり」
「私もあがりこんでるんだけど」
「そりゃ相手が銀さんだったから無事なんだよ。駄目だぞ、他所にお泊りなんか。特にあの真っ黒警察な」
ふー、と深ヅメをしたらしい場所に息を吹きかける。
個人的に、銀さんだから無事っていうよりも、神楽ちゃんがものすごく強い子だったから大丈夫だったんだと思う。
多分何か間違いがあったとしても、神楽ちゃんなら未遂のうちに返り討ちに出来ると思う。
ていうか真選組は言うほど危なくないと思うんだけど。約一名ドSがいるだけで。
「俺が親父だったら殺しにいくね、その男を。鼻の穴に指をかけて背負い投げす…」
「うおりゃあああ!!!」
銀さんが言い終わる前に、新八くんが今言ったことと同じ攻撃を銀さんに食らわせた。
「いだだだだ!!とれた!!コレ絶対鼻とれた!何しやがんだァ!!」
「見損ないましたよ銀サン!」
「神楽ちゃんの気持ちも考えてあげてよ!」
床にうずくまって鼻を抑える銀さんに私も新八くんも叫ぶように言う。
「あん!?家出娘を親の元に返して何がワリーんだよ!」
「お前は…ホントッバカな!ダメだわお前はホントッダメだ!ねぇさん!」
「えっ、あ、あぁ…うん、ほんとダメすぎるよねこのくるくるパー」
新八くんに名前を呼ばれて少し飛んでいた意識が戻る。
家出娘、か。
私も似たようなものだ。ある意味無断外泊だもんね…。
じゃあもし、銀さんは私がそういう状況だって知ったら、帰れって、言うのだろうか。
銀さんはきっと、私の親が現状を知ってることを前提に、今まで色んなことを言ってくれていたんだろう。
けれどそれを親が知らない、家出状態でここにいると知ったら。
いつの日か、高杉さんにこの話をしたときは、ここにいたきゃいればいい、見たいな態度だった気がする。
引きとめも帰れとも言っていない。私の意志で決めればいいと。
…高杉さんらしいといえばらしいかも。
だからあの人には、話せたのかな。
「…銀サンがそういうつもりなら、僕もやめさせてもらいます」
新八くんの静かな声が頭に流れ込む。
「仲間だと思ってたのは、僕らだけだったみたいですね」
そう言い残して新八くんは銀さんに背を向ける。
「やめたきゃやめな。てめーらも神楽も、こっちから頼んで来てもらった覚えはねェよ」
どくん、と心臓が大きく跳ねる。
私は俯いたまま、床に胡坐をかいている銀さんの前に立ち、そのほほを思いっきり平手で引っ叩いた。
バッチーン、という小気味良い音が、部屋に響く。
「銀さんのばっかやろおおおおおお!!!!!」
私の突然の大声に新八くんも、銀さんも目を丸くしていたがそんなことお構いなしに私の口は動く。
「ふざけんじゃないわァァ!好感度上げてフラグ立てておいてポイかコノヤロー!」
ぎゅうと握り締めた手の平が痛む。
「そんなんだったら最初に突き放せばよかったのに!今になって、帰れなんて、辛いよ…ッ!」
それは神楽ちゃんの気持ちか、私の気持ちか。
どちらか分からないまま、私は新八くんの手を引いて万事屋を飛び出した。
「…あ、あの、さん…大丈夫ですか?」
ぜえはあと肩で息をする私に恐る恐る尋ねる。
「だ…大丈夫。久々にあんな大声出して、自分でもびっくりしてるだけ…」
でも少しだけ気分がスッキリした。八つ当たりみたいなものに近いけど。
すう、と一度深呼吸する。
「…よし、新八くん、私らは神楽ちゃん引き止めに行くよ!」
「はいっ!もちろんです!」
銀さんの言葉が本心かは分からない。冗談かもしれない。
けど、そういう冗談は言って良い時と悪い時があるんだよ。
なかなか事情を話せない私も悪いかもしれないけど、これじゃ話す決心もなかなかつかないし…。
…ってダメだ、今はそんなことで悩んでいられない!
ぐっと顔を上げて、私たちはターミナルへと走った。
あとがき
大喧嘩勃発。しかし書いてる本人はすごく楽しんでました。←
ひっぱたかれた後、しばらく銀さんは呆然としていただろうと思います。
2010/09/16