「ひえええ!何か踏んだ!何か踏んだァァ!」

さん、多分それえいりあんです。死骸だと思います」

「ぎゃああああ!気持ち悪い!感触がものすごく嫌な感じ!!」

「オイ、それより神楽ちゃんは本当にこっちにいるんだろうな!」

「ギャアア!また踏んだァァ!」

「だから本当にこっちであってるのかって聞いてんだよオイィィ!!」

 

 

 

第5曲 勘パワー炸裂

 

 

 

 

えいりあんなんて、初めて踏んだ。ていうか、見るのも初めてだ。

なんとか宇宙船の床の部分を飛ぶように走ってはいるものの、細かい残骸は踏んでしまう。

 

これがもう、気持ち悪いんだよちくしょおぉぉ!

ぐにゃってするんだよ!ぐにゃって!

本体は硬そうなんだけど、星海坊主さんがビシバシ倒していくえいりあんの細かい残骸は、踏むと最悪だ。

 

 

叫びながら走り、周りを見渡す。

絶対にどこか、記憶と一致する場所があるはずなんだ。

頑張れ私の記憶力…!

 

 

「…!あった!あそこ、あそこです!多分!」

壊れかかった宇宙船の上の方を指差す。

「本当にそこでいいんだろうなァ!」

バシッと迫りくるえいりあんを薙ぎ倒しながら叫ぶ星海坊主さんに大きく頷く。

 

 

「い、急いで行ってください!早くしないと神楽ちゃんが大怪我しちゃう、かも、しれないですから!」

うっかり断言するところだった。

さすがに言い切ってしまうと、怪しいだろうからあえて勘ということにしておかなきゃ。

 

「……」

ばっとさっき走っていた速さよりも早く、星海坊主さんは私が指差した宇宙船の方へ走っていった。

 

 

「僕たちも急ぎましょう!」

「うんっ」

新八くんに手を引かれ、私たちも神楽ちゃんがいるであろう場所へと走る。

どうか、間に合っていますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちじゃえいりあんに立ち向かうのは危険だと判断し、回避しながら進んでいたら思ったよりも時間がかかった。

「と、遠ッ!意外と遠い!」

既に体力が底を尽きそうな私の横で、新八くんが声を上げた。

さん!あそこ!」

 

新八の指した先には、こっちに背を向けて座り込む星海坊主さん。

そして…えーと、王子…バカ王子とその付き人さんがいた。

よく見ると星海坊主さんの左腕が見当たらない。

 

 

「腕ェェェ!!どうしたんですか腕ェェェ!!」

星海坊主さんが片腕になってるってことは…まさ、か。

 

「…、…?」

ぽつりと聞こえたか細い声は、星海坊主さんの背中の向こう側から。

 

 

「か…神楽、ちゃんっ…!」

神楽ちゃんの側へと急いで駆け寄る。

ところどころ怪我はしてるけれど、大怪我とまではいってないみたい。

 

星海坊主さんに話を聞くと、腕は神楽ちゃんを庇った時にえいりあんに食われてしまったらしい。

でもとりあえず、少しは話の流れが変わったかもしれない。

 

 

ほっとして気を緩めた瞬間、頭上が不意に暗くなった。

 

さんッ!坊主さんっ!上ェェ!!」

新八くんの声に上を見上げると、がばりと口をあけたえいりあんが迫っていた。

 

 

星海坊主さんも腕のせいか、とっさに動けずぎゅっと神楽ちゃんを片腕で抱きしめる。

その場から全員動けずにいると、突如えいりあんの首あたりが破裂し、見慣れた白い犬が現れた。

 

 

「うおりゃあああああ!」

パァンッと弾けるような音とともに、えいりあんが四方に飛び散る。

 

そして私たちの前に飛び降りた、一人と一匹。

 

 

「さ、定春ぅぅぅーーー!!!!ありがとう、定春ーー!!」

「わんっ」

「いやおかしいだろ。こっちこっち。ちゃんこっち見て」

もふっと定春に抱きつくと、さっきえいりあんを斬った張本人、銀さんにぽんぽんと肩を叩かれた。

 

 

「…ばか!来るのが遅い!」

「いいじゃん、結果的に全員無事…じゃねーみてぇだが、とりあえず生きてるし」

「よくねぇぇぇ!!!」

あ、久々に新八くんの全力のツッコミが炸裂した。

 

 

って言われてみれば、全員集合してるじゃん。

「…こうなったら、やることはひとつだよね」

「そうですね」

星海坊主さんにも目配せすると意思を汲み取ってくれたようで、神楽ちゃんを抱えて立ち上がった。

銀さんにも目配せすると、ビシッと開いた道を木刀で指しながら、すぅと息を吸い込む。そして。

 

 

 

「全員っ、撤退ーーーー!!!!!」

 

 

 

銀さんの声と同時に全員思い切り走り出す。

そりゃ逃げるよ!もうこんなところ用済みだからね!!

神楽ちゃんも命に別状はなさそうとはいえ、ちゃんと手当てしてあげないといけないし!

 

 

しかし…皆体力すごいな。私最後尾なんですけど。

前を走り行く皆の背をなんとか追いかけていると、足に違和感が走った。

 

「…え」

見たくないけど、目は勝手に足元へと視線を動かす。

 

 

足には、地面を這っていたえいりあんがぐるりと絡み付いていた。

「…うわぁ」

ぞわりと鳥肌が立つ。

なんとか前に進もうと足に力を入れながら、私の前を走っている銀さんに目を向ける。

く…喧嘩別れみたいな感じで万事屋飛び出しちゃったから声掛けづらいけど…背に腹は変えられない!

 

 

 

「ぎ、銀さーーん!!!」

私の声に走っていた足に急ブレーキをかけ、ぐるりとこっちを振り返る。

 

「何だ、どうし…!!」

振り返った銀さんの顔が妙にびっくりしているように見えたけど、私にはそれが何故なのか分からない。

 

 

「ちょっヘルプ!これ、足動かない…!」

 

そう叫んだ瞬間、急に目の前は真っ暗になり、遠くで銀さんが私の名前を呼ぶのが聞こえた。

 

 

 

 

 

あとがき

えいりあんだよ!全員集合!みたいな感じになりました。集合したくないですね。

ちょっとだけ原作の展開を変えてみたり。しかしヒロインの記憶力不思議すぎる。(ぁ

2010/10/24