「おー栗子、ワリィワリィ遅れちまって。待ったァ?」

「いえ、私も今来たところでございまする。全然待ってませんでございまする」

「あ、なんだよ、よかったー。実は電車がさァー…」

 

 

 

第9曲 駄目と思っても外見で判断したくなる

 

 

 

「野郎…ふざけやがって、栗子はなァ、てめーが来るのを一時間も待ってたんだよバカヤロー。

俺が手塩にかけて育てた娘の人生を一時間も無駄にしてくれやがって。残りの人生全てで償ってもらおう」

「待たんかィィィ!!!」

 

 

ただいま、大江戸遊園地の草むらの中。

銃を構えた松平さん、そして私と近藤さんに沖田さん、そして全力でツッコミをいれた土方さんは

松平さんの娘さんの彼氏抹殺…もとい、別れさせる計画を実行しようとしていた。

 

 

 

「お前何ィィィ!?娘のデート邪魔するために俺たち呼んだのか!?つーか何でお前までいるんだ!」

「この間松平さんに頼まれたんですよ。女の子の意見もあった方がいいからーって」

「意見も何も聞く前から抹殺しようとしてんじゃねーか」

土方さんはちらりと目線を松平さんに向ける。

 

「って…、お前とっつあんと知り合いだったんですかィ?」

「うん、私のバイト先の常連だし」

よく娘の相談に来るんだよね、松平さん。

 

 

「で、どうよちゃん。あのチャラ男」

「まあ…確かに見た目からしてもチャラそうですね…」

娘さん、栗子ちゃんの隣を歩くのは簪を挿し、顔にまでピアスをしたちょっと悪ぶっていそうな…チャラそうな人。

人間見た目じゃないとは言うけど…いったいどこに惚れたのか聞きたくなる。

 

 

 

「バカらしい…付き合ってられるか」

呆れたように頭をかいて出口のほうへ歩き出そうとした土方さんの着物の袖をくいと引っ張る。

「土方さん、でも、近藤さんは抹殺する気満々ですよ」

「は?」

 

私が指差した先にいる近藤さんはサングラスをかけ、松平さんが持ってきていた予備の銃を構えていた。

「殺し屋ゴリラ13、栗子ちゃんを護るため出動する!」

「よく言った、行くぞ!」

がさがさっと草むらから駆け出していく近藤さんと松平さん。

 

 

「ちょっ、オイ!やべーなアイツらホントにやりかねねーぞ。総悟、止めにいくぞ」

「誰が総悟でィ…俺は殺し屋ソウゴ13、面白そうだからいってきやーす」

「おいいィィィ!!」

 

目にも留まらぬ速さで二人を追って走っていった沖田さんの背中を呆然と見つめる土方さん。

「じゃ、私たちも追いますか」

その声に返ってきた返事は、盛大なため息だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに今日の皆の服はいつもの隊服ではなく私服の着物。

だからまあ、遊園地にとけこめないこともない…はずなんだけど。

 

「さすがにこんなに男ばっかりでメリーゴーランド乗ってたら浮きますよね」

「まったくだ」

くるくる回るメリーゴーランドの馬車席に座った私と土方さんは、目の前で上下に揺れる男三人を見ていた。

 

 

「オイいつになったらコレ奴等に追いつけるんだ?距離が一向に縮まらねーぞ」

「縮まるかァァァ!この土台ごと一緒に回ってんだよ!永遠に回り続けろバーカ!」

子供よりも親の視線を浴びていることに対してもイライラが募っているのか、土方さんのツッコミには容赦が無い。

 

 

「要はあの二人の仲引き裂けばいいんだろ?他に方法はいくらでもあるだろ」

「なんだよおめーら仲間に入りてーのか?殺し屋同盟に入りたいのか?」

土方さんの提案に、松平さんはこっちを振り向かず銃の標準を合わせながら問いかける。

 

 

、今なら特別に俺の部下にしてやりますぜィ」

「こき使われそうなんでご遠慮します」

沖田さんのお誘いは、丁重に却下した。

 

 

 

 

 

場所は変わって、コーヒーカップに乗りながら私たちは監視を続ける。

「とにかく、俺はあんたらみてーに外見だけであの男の人間性まで否定する気にはなれねーよ」

「どー見ても悪い男だろ!だって穴だらけだよ!人間って元々穴だらけなのに自ら穴を開ける意味がわからん!」

「お前が言ってる意味もわかんねーよ」

 

確かに、栗子ちゃんの彼氏はパッと見ピアスだらけの痛そうな…じゃなくて、悪い人っぽい。

けど、こうやって眺めてると、やっぱり内面はいい人なのかもしれないな、と思えてくる。

 

 

「ああいう年頃の娘はちょいと悪そうなカブキ者にコロッといっちまうもんでさァ」

沖田さんは既に目が回っているように見える近藤さんを無視してぐるぐるとテーブルを回しながら言う。

「そいでちょいとヤケドして大人になっていくんですよ」

 

「総悟、お前年いくつ?」

「っていうか…経験豊富だったりします?」

やけに詳しい気がするんだけど、と私と土方さんは目配せする。

 

 

「気になるんですかィ、?」

「いえ、別に」

なんだか沖田さんの笑顔から嫌な予感しかしなかったので、お断りした。

 

 

 

「…ところで、、お前いつまで回すつもりだ」

「え?あ、駄目でした?私的にはもうちょっとブンブン回転させようかと思ってたんですけど」

喋りながら、私もテーブルを回す。

けれど、「別に、大丈夫だ」と言った土方さんの顔が若干青ざめてきていたのでそれ以上回すのはやめておいた。

 

 

「…まァ愛だの恋だのは幻想ってことさ。そいつが壊れりゃ、あんたの娘も夢から覚めるだろ」

コーヒーカップから降りて、土方さんはそう呟いた。

その目はどこか遠くを見ていて、ほんの少しだけ切なくなった。

 

 

「…でも、もしそれが幻想じゃなくて本気だったら…応援してあげたい、です」

栗子ちゃんが本気で選んだ相手なら、きっと今の私たちじゃわからない良さがあるのだろう。

 

「だから、その時は…松平さんも、応援してあげてください」

「…まァ俺以上に栗子を守っていけるようなら、応援してやってもいいか」

「それってもう蚊一匹すら近づけないくらいの勢いで守らなきゃですよね」

…前途多難だ。

 

 

でも、本当に娘さんのことを大切に思っているんだなと思う。

私の親は、今どうしているんだろう。

こんなに過保護にはしてもらってないけど…やっぱり心配、してるのかな。

 

 

、ターゲットが移動しやすぜ。さっさと追いかけやしょう」

「あ、了解!」

沖田さんの声と共に、皆栗子ちゃんたちを追ってこそこそと移動する。

次の乗り物は、ジェットコースターだ。

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

皆でワイワイ遊園地です。真選組メンバーとの絡みも書きたいので!

個人的にピアスの話は、私はよく分かります。なんで穴あけるの痛いじゃない…!(ぁ

2010/12/13