「ですよねー!私もそう思います!」
「そうっスよね!もうほんと晋助様のかっこよさったら…!」
「自分の決めた道を突き進んでる、ブレないとことか素敵ですよねー」
「お前結構話が分かるっスね!」
第3曲 じっとしてちゃ始まらない
あれから気づいたら、船の中の一室にいた。
後ろ手に縄で縛られてはいるが、拘束されているのはそれだけ。
そして見張りに来ていた彼女、また子ちゃんと打ち解けることに成功した。
「ところで、この船に桂さんって乗ってません?」
「桂なら似蔵が斬ったって言ってたっスよ。まったく…勝手な行動ばかりしやがって」
晋助様の邪魔なんスよ、と言ってまた子ちゃんは舌打ちをする。
桂さんは生きてるはずだけど…実際どこにいるんだろう。
結構目立ちそうな人なんだけどなあ。
伊達に今まで幕府から逃げてきたわけじゃない、ってことか。
「っと、そろそろもう一人の人質を見てこなきゃいけないんで失礼するっス」
「あんまり手荒な真似しないであげてくださいねー」
「どっちかといえば、されてそうな気がするんスけどね…」
同感だ。
ため息をひとつついて部屋を出て行ったまた子ちゃんを見送る。
そし勢いをつけて、よっと立ち上がる。
私もこのまま捕まってるわけにはいかない。皆に会うために戻ってきたんだから。
「とりあえずは、脱出か…」
しかし手が使えないっていうのは不便だ。戸を開けることもできないわけだから。
まあ、足使えばいいんだけど。それをうっかり見られたら、確実に脱走しようとしたことがバレる。
「…あのー、すいませーん」
戸の向こうへ声をかける。
襖のような感じの戸なので、多分声は聞こえているはず。
「なんだ。いくら晋助様の知人だといっても、ここから出すわけにはいかない」
ほんの少しの隙間を開けて、見張りの人が顔を覗かせた。
「いえ、逃げようとか思ってるわけじゃないんですけど、ちょっと船酔いを…うっ!」
「はぁ?」
ぐっと体を曲げて、なるべく苦しそうな声を出す。
「ううっ、駄目です…気持ち悪い…!吐きそう…!あの、すいません厠ってどっちですか…!?」
「え、あ、そこの廊下を右に曲がった先だ」
「すいません、ちょっと行ってきます!!」
ばんっと戸に体当たりするような形で廊下を駆け出す。
その瞬間に見えた、少し心配そうな顔をしている見張りさんに申し訳なく思いながら。
「ふう…脱出成功!」
こそこそと人に見つからないように柱や部屋に隠れながら移動する。
しかし…さすがにこんな船の内部なんてどうなってるか知らないからなあ。
どこに行けばいいのやら。
それにしても、人が少ない。
ここの廊下も普通に歩いていたって誰にも何も言われないのだ。
「どうして…」
ぽつりと呟いて足を踏み出した瞬間、ドオンッと爆発音が響き船体が揺れた。
「なっ、何事ッ!?」
足がもつれて壁に倒れ掛かるようにぶつかる。
遠くで人の声が聞こえる。おそらく、甲板から。
危ないだろうけれど、ここで立ち止まってるわけにもいかない。
ぐっと歯を噛み締めて体を起こした時だった。
「本当に、お前はじっとしてられねーんだな」
後ろからかかった低い声。
「た、高杉、さん…」
何事も無かったかのようにそこに立つ高杉さん。
ただ、纏っている空気がいつもと違うような気がして、久しぶりにこの人を、怖い、と感じてしまった。
「ククッ。お前のそんな目、久々に見たぜ、」
甲板が砲撃された頃。
人質として磔にされていた神楽を助け出した新八は傾く船の上を必死に走っていた。
「落ちる!神楽ちゃん、助けに来といてなんだけど助けてェェェェ!!!」
「そりゃねーぜぱっつあん」
神楽を抱えて傾く船の上を走る新八の息は上がっていくばかり。
「新八」
「な、なに!?っていうかほんと助けて!」
少しだけ言いよどむようにして、神楽は口を開く。
「ヅラ捜しにきたけど、みつからなかったネ。でも…がいたアル」
「…えっ?」
新八の驚いた声は、またも船体に撃ち込まれた砲撃音によってかき消された。
あとがき
なかなか話が進まず、申し訳ないです…!
そして高杉さんの出没率の高さに私もびっくり。(ぁ
2011/04/12