いまだ道の真ん中に座り込んでいる私と、大絶叫した銀髪の人。
叫びすぎた所為で、道行く人から物凄く怪しい目でみられています。
…わお、超恥ずかしい!!
第2曲 優しさと嬉しさと
「…ちっ、とりあえずこっち来い!」
「え、ええ!?」
ぐいっと手を引っ張って強制的に立たされ、手を引かれる。
あぁもう、頭がついていけない。どうなってんの。
だって、連れて行かれる先は、スナックお登勢。
現状についていけず、頭がぐるぐると回っている気がする。
いやだって、どうなってんのよこれ。
…詰問?
「何であんなとこに落ちてたんだよ。なんか思わず連れてきちまったし…」
「いやぁ、それは私にもさっぱりで…」
カウンターの席に座らされて、そう聞かれても。
むしろ私が聞きたい。
「大丈夫なのかィ、あんた。落ちてたって、なにかあったんじゃ…」
「あはは、大丈夫です」
…多分。
っていうか2人とも落ちてたって表現は酷くない?
倒れてた、くらいにしてほしい。
黙っていても怪しいだけなので、とりあえず何か言おうと口を開く。
「えーっと、実は…」
…なんて言おう。
私の予想では、これってトリップってやつだよね。異世界トリップ。
うわぁ、流石にそこまで信じてなかったけど…できちゃうもんなんだ。
でも、トリップしてきたんです!なんて言ったら確実に頭おかしい子だと思われるだろうし…。
っていうか絶対信じてもらえない。
やばい、視線が、いたい。
何か、何か言うしかない!…くそう、こうなったらいちかばちか…、いきます!
「…じっ、実は…天人に異国に売り飛ばされそうになって、それで逃げてきたんです!!」
「何ィィィ!!マジでか!!!」
さっきまでだるそうにしていた、多分銀さん…らしき人はガタンと音を立ててイスから立ち上がる。
…いける!
「仕事を探していたら、急に声を掛けられて…それで、港に連れて行かれて…」
少し俯いて、怖くて、逃げてきたんです、と呟く。
「大変だったねェ…」
そう言ってくれるお登勢さんは、心配そうな顔をしている。
「…銀時、この子かくまってあげたらどうだィ」
「……は!?え、無理!」
うわお。銀時って言ったよね今。
…どどどどうしよう!私さっき手握られちゃったよ!うわわわ、嬉しい!
って違う、そうじゃなくて!
「この子、見たところ身寄りなさそうじゃないか」
「けどその天人とかに怨み買われるのは冗談じゃねぇし!」
まぁ、そりゃそうだよね、と内心銀さんに同感する。
けど、実際この世界じゃ身寄りは無い。
…あれ、私結構ピンチじゃね?
「おいっ、お前家は!?」
「え、っと家は…」
…家、ないよね。…ここには。
「…ない、んです。その…父の体が悪くて、治療費のために売り払っちゃって…」
きゅ、と膝の上で両手を握る。
「父のことは母に任せて、田舎に行ってもらってるんです。
私一人くらいなら、ここで仕事見つけて仕送りしてやっていこうと…」
我ながらなんて子!!とっさになんつー嘘を…!
俯いていた顔を少しあげてみると、カタカタと両手をふるわせる銀さんがいて。
そしていきなり、ガシッと肩をつかまれた。
「お前…苦労してきたんだな…!」
「このご時世に珍しいいい子じゃないかィ…」
ぐすん、と鼻をすする銀さんと、優しく微笑んでくれるお登勢さん。
…やべェ大事になってきちゃった。
も、もうちょい押さえた嘘にしておけばよかったかも…。
「しょうがねぇ、金溜まるまで、うちで働け!」
「…え、マジですか!?」
「おう。住み込みでいいぞ。ちなみにこの上の万事屋な」
そう言って、私の肩から手を離す。
「俺は坂田銀時。まぁ、銀さんって呼んでくれよな」
「私のことはお登勢って呼びな」
にっこりと、そう言ってくれる2人。
「わ…私は、です、!!よろしくお願いします、銀さん、お登勢さんっ!!」
いすから立ち上がり、精一杯頭を下げて2人にお辞儀をする。
…わたし、この世界で生きていけそうです!
あとがき
やっと名前が判明ですねー。
さて次回は万事屋の方々と対面です。くそう、なかなか進まない!(ぁ
2008/1/29