カンカンと音を立てながら万事屋への階段を、銀さんの後ろについて登っていく。
うわわ、今更ながらドキドキしてきた…!銀さん背中広いなぁー。…飛びつきたい…。
って違う!!そうじゃない、おちつけ私!!
第3曲 我慢にも限界があるんです
「ここが俺の家、兼職場。万事屋銀ちゃんっつーんだ」
玄関の戸に手をかけながら銀さんはそう説明をしてくれる。
そして、ガラガラッと玄関の戸が開く。
「おーい、新八ィー、神楽ァー、帰ったぞー」
戸をあけるなりそう叫びながらどしどしと中へ入ってく銀さん。
えええ、まって私まだ心の準備が…!っていうかもう2人ともいるんですかオイ!
「どうした。ほれ、こっちこっち」
なかなか動き出さない、っていうか動けなかった私に向かって手招きをする銀さん。
「あ、は、ハイィ!!」
「銀さん!まーた仕事サボって…どこ行ってたんですかもう!」
「どうせまたパチンコヨ。そんな金あるなら酢こんぶくらい買って来いヨ」
「うるっせーんだよお前らは!!そんなことより、ちょっと話がある」
やばい、もうなんか緊張とか感動とかいろんなもので私の心臓は凄い音を立てている。
そんな私に銀さんはまた手招きをする。
来いってか。そこへ来いってか!うおお、落ち着け、平常心でいくのよ私…!
「今日から万事屋メンバーが4人になりまーす」
「え?」
「ん?」
突然のことにびっくりしている2人の前に出て、私は精一杯挨拶をする。
「あの、今日からここで働くことになりました、です!よろしく、お願いします!!」
ぺこっと勢いよく頭を下げる。
「…ええぇぇぇええ!?ま、マジですか!?」
「やめといた方がいいヨ!ここ給料でなもがっ」
「はーいはいはい、黙れ神楽」
じたばたと暴れるチャイナ服の女の子の口をふさぐ銀さん。
「………可愛い…」
「は?」
ぽろっと零れた呟きに反応したのは銀さん。
それでも私の口は止まらなかった。
「かっわいいーーー!!!あぁもう、だめ!我慢できない!!」
ベシッと銀さんをどけてピンクの髪の女の子に抱きつく。
そうすると、一瞬びっくりした顔をしたその子も、ぎゅっと抱きつき返してくれた。
「気に入ったヨ!給料でないけど、ずっとここにいるヨロシ!」
ぎゅうぎゅうと抱きつきながらそう言って笑う。
「私、神楽言うネ。よろしくアルっ!」
「うん!よろしくね神楽ちゃん!!」
「あ、あの、僕志村新八です。よろしくお願いします、さん」
おずおずと私の横から、そう声をかけてくる。
「うん、よろしくね!新八くん!」
本当は握手とかしたいけれど、今は神楽ちゃんが抱きついているので身動きが取れない。
っていうか、ちょっと、その、痛い。
「ってちょ、さん絞まってません!?」
「あははは、どう、なんだろうねー」
「確実に絞まってますって!ちょっと神楽ちゃん手加減手加減!!!」
「えぇえー」
えぇー、じゃないから!と言って神楽ちゃんを私から引き離す新八君。
あ、ちょっと息しやすくなったかも。
「…元気でたみてーだな」
「え?」
ふぅー、と息をついていた私に銀さんが呟くように言った。
「自分じゃわかってねーんだろうけど、すげぇ心細そうな顔してたぞお前」
「………」
視線は、暴れる神楽ちゃんをおさえる新八君に向けたまま、そう呟く。
私も目線は同じ。前を向いたまま。
心細かったのか、それともこの現状に頭がついてこれていなかっただけなのか。
それはわからないけれど、今は少し、心も軽く、すっきりした気分になっている。
ただひっかかるのは、私が、いつ、どうやってここへ来たのかがさっぱりわからないっていうこと。
…どうせ考えたって答えはでないんだろうけど。
なんとなく、そんな気がするんだよね。だから、もう気にしないでいいや。
それよりも…今が大切だもん。折角仲良くなれそうなんだもん。ここで、楽しくやっていかなきゃ。
「…うん…大丈夫。大丈夫、です。元気でました、から!」
にこりと笑って、銀さんを見る。
「ならいいさ。あー、あと敬語やめろよな。なんつーか、苦手なんだよ」
ぼりぼりと頭をかきながら、そこでやっと私のほうを向く銀さん。
「うん、ありがとう、ありがとうね銀さん!」
「あいつらにも気ィ使ったりしなくていいからな」
にっこり、というよりもにまっ、っていうほうが合っている笑顔で銀さんは言う。
「ありがとう!」
今日からここで、私の生活が始まる。
きっと色々大変なことになるんだろうけど、皆と一緒ならきっと、大丈夫だよね。
「っていうか銀さん、心細そうな顔してるって思っておきながら最初私のこと見捨てたんだ」
「さーてとー、仕事でもするかなー!!」
「……」
あとがき
万事屋に居候決定。ここから原作へ沿わせます。
ここらへんからヒロインさんは、はっちゃけていくと思います。お気をつけて!(ぇ
2008/2/22