「俺が以前から買いだめていた大量のチョコが姿を消した」
居間でまったりとしていた私たちに低い声で銀さんは言った。
「食べたやつは正直に手ェ挙げろ。今なら四分の三殺しで許してやる」
「四分の三ってほとんど死んでんじゃないスか。あ、さんお茶どうぞ」
「っていうか糖尿になるよー、お茶ありがとう新八くん」
ほかほかと湯気の立つ湯飲みを受け取って口をつける。あぁ、おいしい。
「またも狙われた大使館、連続爆破テロ強行続く…」
だらだらと鼻から赤い液体を流しながら新聞を朗読する神楽ちゃん。
…なんとなく、これから起こることがわかったきがします。
第4曲 ときめきのリスクは大きいものです
「世の中物騒アルなー、私恐いヨー」
そう言ってぎゅうっと私の腕に抱きついてくる神楽ちゃん。あああ可愛い!!
「恐いのはおめーだよ幸せそうに鼻血たらしやがって。に鼻血つけんじゃねーぞコラ」
ぐいっと神楽ちゃんの首根っこを掴んで私から引き離す銀さん。
「…で、うまかったか俺のチョコは?」
「チョコ食べて鼻血なんてそんなベタなー」
神楽ちゃんのほっぺを掴んでぎゃーぎゃーと言い争う銀さんたち。
…そろそろ、だよね。
「新八くん、そのお茶はやく飲んだほうがいいよ」
「え?」
「零れるから」
「は、はあ」
にっこりと笑ってそう言って、私と新八くんはお茶をぐいっと飲み干した、瞬間。
ドカンッという音が、小さな地震のような揺れと共に下から聞こえて来た。
「くらあああああ!!!人の店に何してくれとんじゃアアア!!!」
…うわお。予想以上に大変なことになってる。
「あああお登勢さんっ!」
新八くんは倒れてる飛脚のおっちゃんを殴り飛ばそうとしているお登勢さんを止めに走っていった。
それに続いて私たちも飛脚のおっちゃんに近づく。
「…こりゃひどいや、神楽ちゃん救急車呼んで」
「救急車ァアァァアア!!!」
「誰がそんな原始的な呼び方しろっつったよ。っつーことで頼んだ」
「…え!?わ、私?え、えーと……救急車ァァアアアアアー!!!!」
「お前もかよ」
突然ふられればそうもなるわよ、と心の中で呟く。
だって携帯電話も通じないし…っていうか持ってきてないし。
なんて思ってると飛脚のおっちゃんが、うう、とうめいてうっすらと目を開けた。
「…こ…これを…俺の代わりに届けてください……お願いします」
かたかたと震える手でひとつの小包を私たちに差し出す。
「なんか大事な届け物らしくて…届け損なったら俺…クビになっちゃうかも…お願いしま、」
「おいっ!!」
そこまで言って飛脚のおっちゃんはかくり、と意識を失った。
そして銀さんの手には、差し出された小包が。
…っていうか、あれって確か演技なんだよね?凄いんですけど。役者になりなよ、おっちゃん。
手渡された荷物を持って、やってきました大使館!
「うおわー、すごーい、おおきいー!」
「観光にきたんじゃねーからな」
「で、でも、私こういう建物見るのほぼ初めてで!」
昔修学旅行でこういう感じの政府の議事堂へ行ったけど、この光景はすごすぎる。
だって時代は江戸だよ。ここだけ妙に洋風なんですけど!
「こんなところで何やってんだてめーら。食われてぇのか、ああ?」
頭の上からそんな声が降ってきて、横を見るとでっかい犬っぽい天人が立っていた。
…ってかでっか!!!
「いや…僕ら届け物頼まれただけで」
「オラ神楽、早く渡…」
「チッチッチ、おいでわんちゃん酢昆布あげるヨ」
そう言った瞬間、スパンッっといい音が響いた。
「届けものが来るなんて話きいてねーな」
「まぁまぁ。ドッグフードかもしんねーぞ、もらっとけって」
ひょい、と小包を犬の天人に渡す。
「そんなもん食うか」
ペシッっと小包を叩き落とす、はずが大きく円を書いて小包は大使館の門の中に、そして。
ドッカアアアアン!!!
と、物凄い音と共に、大使館の門やら柱やら色んなものが吹き飛んだ。
「「「「「……………」」」」」
そりゃ、声もでませんよ。
目の前でおこるのと、紙面で見るのとでは、ものすごい差が…。
呆然とする私たちの中で一番最初に口を開いたのは銀さん。
「…なんかよくわかんねーけど、するべきことはよくわかる」
こくり、と頷いて回れ右。
「逃げろォォォーーー!!!」
だっ、と走り出す私たち。だけど現実はそう甘くない。
「待てェェテロリストォォ!!」
「うわっ」
犬の天人はがしっと多分新八くんの手を掴んだ。
それに続いて新八くんが銀さんの手を、銀さんが私の手を、私が神楽ちゃんの手を掴む。
「新八ィィ!!てめっ、どういうつもりだ!離しやがれ!!」
「嫌だ!ひとりで捕まるのは嫌だ!」
そう後ろへ叫びながらぎゅうぎゅうと私の手を掴んでくる銀さん。
「ちょちょちょちょっとまって私これ両手に花じゃね!?」
「そんなこと言ってる場合じゃねぇだろうが!」
でも内心ちょっと嬉しかったりするんだよ!
「くそ、新八!俺のことは構わず行け…とかいえねーのかお前は!」
「いえるか!」
ぎゃんぎゃんと言いあってると今度は前からぐい、と手を引かれる。
「私に構わず逝ってヨ銀ちゃん新八ィ!私と駆け落ちするヨ!」
「ふっざけんなぁぁあああー!!お前らも道連れだ!」
さっきよりも強い力でぐいっと手を引っ張られる。
「痛い痛い痛い!!両方から引っ張らないで腕が!腕がとれる!!」
前後からぐいぐいと物凄い力で引っ張られる。
あ、やばい、なんかもう涙目になってる気がする。痛すぎて。
「ぬわあああワン公いっぱいきたぁぁあーー!!」
後ろで新八くんの叫び声が聞こえる。
私の方もいっぱいいっぱいです!腕が!腕がぁぁあ!!
「手間のかかる奴だ」
この場にふさわしくない、透き通った声が響く。
そして天人たちの、ぐえっとかうげぇっとかいう呻き声と共に、1人の男の人が私たちの前に現れた。
「逃げるぞ、銀時」
あとがき
あれ、あんまり進んでない…!そしてヒロインさんがはっちゃけてる(おい
とりあえず色んな人たちの出てくる大使館話…乞うご期待を。
2008/3/2