「おまっ…ヅラ小太郎か!?」
「ヅラじゃない桂だァァァ!!!」
ゴッ、という低くとっても痛そうな音が、その場に響いた。
第5曲 意外と広いんだねホテル池田屋
「てっ…てめっ久しぶりに会ったのにアッパーカットはないんじゃないの?」
「そのニックネームで呼ぶのは止めろと何度もいったはずだ!」
殴られた顎をさすりながら言う銀さんと、さっきかっこいい登場をした…ヅラは言い合いをしてます。
神楽ちゃんと新八くんはポカーンとしてます。
私?…私は、にやけそうになる顔をおさえてます。だって、その、しょうがないじゃん!
そんな一瞬の時も許されぬというように、後ろからは天人の大群が復活して追いかけてくる。
「話は後だ銀時!行くぞ!」
「チッ」
ヅラの声を合図に、また走り出す私たち。
そろそろ、息がきれてきたんですけどぉぉ!!
猛ダッシュを続けて、私たちはホテル池田屋へと非難した。
「はぁ、ああ…つ…つか、れた…」
「大丈夫か、すっげぇ辛そうだぞ」
「あたりまえでしょうが…!普通にしてる銀さんたちがおかしいよ!」
ぜぇぜぇと息を切らす私と新八君の横でけろりとしている銀さんたち。ど、どんな体力してんの!?
「大丈夫か?」
そう言って、その人は俯いている私を覗き込んでくる。
「だ…大丈夫ですよ、えーと…ヅラさん」
「ヅラじゃない桂だ」
大分息も落ち着いてきたところで、皆で自己紹介タイム。
ヅラって呼ぶと不機嫌そうな顔をするので、とりあえず桂さんって呼ぶことに決定。
桂さんが部屋を出て行ってから、神楽ちゃんがぽちっ、とテレビのスイッチを入れた。
『今回卑劣なテロに狙われた戌威星大使館…』
テレビから流れるニュースには、私たちの姿がばっちり映ってた。
「…どーしよ、姉上に殺される」
「テレビ出演。実家に電話しなきゃ」
「っていうかよく監視カメラ爆破されなかったよね」
「なんで2人ともそんなのんきなの!」
新八くんのツッコミもはいりつつ、私たちはテレビに見入っていた。
それにしても、私スカートなのによくあれだけ走ったよね!すごいよ自分!
私、着物の着方がよくわからないからずーっと制服でいるんだよね。
「何かの陰謀ですかね、こりゃ。なんで僕らがこんな目に」
「桂さんにあえてよかったよね」
「ほんとですよ」
ほんと、あえてよかった…!これから先、かっこいい桂さんってあんまり見られそうにないしね!
「銀さん知り合いなんですよね。どういう人なんです?」
「んー…テロリスト」
「はィ?」
超くつろぎ体制になっていた銀さんがそう答えると新八くんは顔をひきつらせていった。
「そんな言い方はよせ。この国を汚す害虫、天人を討ち払い、もう一度侍の国を立て直す」
ふすまの開く音と同時に、桂さんの落ち着いた声が響く。
「我々が行うは国を護るがための攘夷だ。卑劣なテロなどと一緒にするな」
ずらりと桂さんの後ろには攘夷志士の方々が並んでいる。
「攘夷志士?なんじゃそらヨ」
「攘夷志士、っていうのはね…」
ばりばりと机においてあったおせんべいを食べる神楽ちゃんに説明を始める新八くん。
その間に銀さんはゆっくりと起き上がって、私の横に座っていた。
そして、ずらりと並んだ攘夷志士の方々の中から、まだ記憶に新しい見覚えのある人をみつける。
「どうやら俺達ァ踊らされたらしいな」
「大怪我じゃなくてよかったですねー飛脚のおっちゃん」
「ほんとネ!あのゲジゲジ眉デジャヴ!」
神楽ちゃんがびしっと指をさすと、飛脚のおっちゃんは居心地悪そうに視線をそらす。
「全部てめーの仕業か、桂。最近世を騒がすテロも、今回のことも」
静かに銀さんが立ち上がって言うと同時に私も立ち上がる。
「たとえ汚い手を使おうとも手に入れたいものがあったのさ」
桂さんの握った刀がチャカ、と音をたてる。
「…銀時、この腐った世界を立て直すため再び俺と共に剣をとらんか」
静まった部屋に、桂さんの声だけが響く。
「白夜叉と恐れられたお前の力、再び貸してくれ」
「俺ァ派手な喧嘩は好きだが、テロだのなんだの陰気くせーのは嫌いなの」
ぼりぼりと頭をかきながら言う銀さんの表情は、私からはちょうど銀さんの腕で見えない。
「俺達の戦はもう終わったんだよ。それをいつまでもネチネチネチネチ。京都の女かお前は!」
「バカか貴様は!そういう全てを含めて包み込む度量が無いから貴様はもてないんだ」
…さっきまでのシリアスさはどこへいったんだろうか。
「バカヤロー俺がもし天然パーマじゃなかったらモテモテだぞ、なぁ」
「…えっ?」
突然そんなこと言われても。あれか、私がちょうど銀さんの真横にいたからか。
「何でも天然パーマのせいにして自己を保っているのか哀しい男だ。な、」
「はい?」
今度は桂さんにそういわれる。いやだから、そんなこと聞かれても。
「…え、えーと、私は銀さんはかっこいいと、思ってる、よ」
控えめに、そういうと銀さんはにかっと笑って私の肩を引き寄せて言う。
「ほーらみろほらみろ。はちゃんと俺のよさをわかってるんだよ」
「無理しなくていいんだぞ、心にもないこと言う必要はないからな」
続いて桂さんにべしっと銀さんの手が振り払われて、今度はがしっと肩をつかまれてそういわれる。
「…ってあんたら何の話してんの!さん困ってるだろうが!!」
新八くんのツッコミで、元の話題を思い出したのだろう桂さんがごほん、と咳払いをひとつする。
「俺たちの戦はまだ終わってなどいない。既に我等に加担したお前に断る道はないぞ」
「……」
「迷うことはなかろう。元々お前の居場所はここだったはずだ」
きっぱりと、そう言い切る桂さんの目は少しも揺らぎがないように見える。
私は、黙っているしかない、よね。
「銀さん…」
どうするんですか、と続くような声で新八くんがそういった瞬間。
バンッと大きな音をたてて、私たちのいる部屋のふすまが蹴り倒された。
「御用改めである、神妙にしろテロリストども!!」
あとがき
ヅ…桂さん登場!(ぁ
そして少しだけシリアスチック。次回は多分ギャグ…になるはずです。
2008/3/7