「しっ…真選組だァっ!!」

「いかん、逃げろォ!!」

 

桂さんたちがそう叫んだとき、私は、やっべぇかっこいいよ真選組…!とか思っていました。

 

 

 

第6曲 逃げるときは全力で

 

 

 

「1人残らず討ち取れェェ!!」

第一線で私たちのいる部屋に入り込んできた人がそう叫ぶと同時に、真選組の人が走ってくる。

…刀を構えて。

 

 

ッ!こっちこい!」

「え、銀さ…!」

呆然としていると、銀さんに腕をひっぱられて引きずられるようにして部屋から出た。

 

 

 

「きょ、今日走ってばっかりなんだけど!」

「まったくだな。で、厄介なのに掴まったな…どうしますボス?」

「だーれがボスだ!!お前が一番厄介なんだよ!」

 

「ヅラ、ボスなら私にまかせるヨロシ。善行でも悪行でもやるからには大将やるのが私のモットーよ」

「おめーは黙ってろ!!何その戦国大名みてーなモットー!」

 

この人たち走りながらなんでこんなに騒いでいられるんだろう、なんて思いながら、走ってます。

 

 

「オイ」

 

「っ!」

 

逃げてる途中、低い声が聞こえた瞬間、銀さんがドンッっと私を突き飛ばした。

そして銀さんの頭上の壁に刀が突き刺さる。

 

 

「ぎっ…銀さん!」

「逃げろッ!!」

 

 

私は、ここにいても力にはなれないだろう。

それに、私はこの後の展開を知ってるんだ。…銀さんは、大丈夫。

だから私はぎゅっと手を握り締めて銀さんのいるところから回れ右をして走り出した。

 

 

 

 

 

それでもやっぱり後ろが気になる。けれど、スピードは緩めないで走っていた。

だが、突然目の前に現れた人によって私の足は止まる。

「う、うわわわっ!!」

足は止まろうとするけれど、勢いがついているせいで、前に倒れそうになる。

 

 

「大人しく掴まっておきなせェ、なぁねーちゃん?」

「あはは…はい

倒れかけた私を受け止めてくれたその人は、とんでもなくおっそろしい笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、どこ行くんですか」

「お前のいたところに黒髪の目つき悪ィヤツがいただろィ。そいつぶっ殺しに行くんですぜ」

「マジですか」

 

 

広い廊下を歩く私たち。

ただ、その、私の手は横を歩くお兄さんに握られてるわけで。

逃げないようにだとか何とか。お兄さんが言うには「手錠、屯所に忘れてきやした」だそうです。

 

 

しばらく歩いているうちに、刀の音と、2人分の声が聞こえてきた。

「よっしゃ見つけた。土方さん、危ないですぜ」

私の手から、お兄さんの手が離れた瞬間、ものすごい爆音と共に、目の前の壁が吹っ飛んだ。

「うおわあああ!!」

そんな叫び声が聞こえたと思ったら、また手をぐいっと引っ張られる。

忙しいなもう!

 

 

 

 

「生きてやすか土方さん」

「バカヤロー!おっ死ぬところだったぜ」

「まったく、しょうがねぇ人ですねィ」

「え、さっき殺しに行くってむぐっ

「なんですかィ?」

「ひゅいまへん」

片手で両方のほっぺを挟み込まれる。

 

 

痛い痛い!と抗議しているうちに他の真選組の人が一室のふすまにバズーカを向けている。

あぁ、あそこに銀さんたちが…。

…しまった!これじゃ髪の毛爆発してる銀さんが見えない!!

 

 

「ちょ、離してください。ちょっと私、見なきゃならないものが!」

「みなきゃ…あ。土方さん、夕方のドラマの再放送ビデオ予約しやしたか」

「やべェ忘れてた」

「違う!ドラマじゃなくて!」

 

 

さっきまでは片方の手は自由だったのに、今は片方を…多分沖田さん、もう片方を土方さんに握られている。

嬉しいよ。嬉しいけど、状況的にこれ、捕らえられた宇宙人なんだよ!!だから離してほしいんだよ!!

 

 

 

ぶんぶんと手を振って抵抗してみるものの、痛いほどに握られた手はほどけなくて。

そんなことをしているうちに、ふすまの奥でガタガタと暴れる音が聞こえてきた。

あ、じゃあもしかして。

 

 

 

「…あの、お二方」

「何ですかィ」

「ちょっと非難しましょうよ。もうちょっと…えーと、あの辺に」

手が動かせないのでくいっと顎でふすまから離れた壁際を指す。

「何でだよ」

「…なんとなく、危ない予感がするから、です」

 

 

 

自分でも苦しい言い訳だと思ったけど、2人は私を引きずるようにして壁際に移動した。

…やばいって、マジでこれ捕らえられた宇宙人だよ。わ、私地球人ですからァァー!!

 

 

 

心の中でツッコミをしていると、突然バンッっとふすまを蹴破って銀さんが飛び出してきた。

「銀さんっ!…髪の毛凄ッ!!

ほっとけェェ!っていうか何してんだそんなとこで…ってそれどころじゃねぇ!!」

私の前を走り去っていく銀さんたち。手には、おそらく時限爆弾。

 

 

 

「頑張れ銀さーん!」

「無理無理無理!!爆弾処理班とかいねぇの!?」

ぎゃあぎゃあと騒ぐ真選組隊士の人の声に負けず、叫ぶ銀さん。

 

 

 

そして騒ぎ声よりも少し高い声が響く。

「銀ちゃんっ!歯ァくいしばるネ」

「っ!」

「ほあちゃああああ!!!」

バキィィ!!と、とっても痛そうな音と共に、銀さんが窓の外へと吹っ飛ぶ。

 

 

 

 

そして、ひときわ大きな爆音と共に空で爆発が起こった。

「ぎっ…銀さーん!!」

「銀ちゃんさよーならー!!」

窓のガラスが割れたところから空を見上げて叫ぶ二人。

 

 

漫画で読んだ時よりも、実際の衝撃は大きかった。

だから心配になって私も窓際まで行こうとしたけれど、それは許されなかった。

 

 

 

「…ちょ、離してくださいって!」

「駄目ですぜィ」

「何で」

「今から屯所行って取調べ」

 

 

 

 

「……え、マジですか」

「「マジ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

真選組屯所へ取調べという名の拉致(ぇ

くぅぅ…原作に沿わせるのも難しいです…!

2008/3/25