「おい、ありゃあ万事屋のトコのチャイナ娘と…ちゃんじゃないのか?」

「ん?近藤さんアイツとそんなに仲良かったんですかィ?」

「おお!スナックでお世話になっててなー」

「スナック…ですかィ…?」

「おう!…っていうか、何故姫と」

「さぁ」

 

 

 

第14曲 大切な、おともだち

 

 

 

 

 

 

神楽ちゃんと私は、そよちゃんを引っ張って逃亡中です。

っていうか、神楽ちゃんが私とそよちゃんを引っ張ってる感じが否めないんだけど。

 

 

 

なんとか屋根の上へ逃げて、給水タンクの裏側へ隠れた私たち。

下からは、真選組の人たちの声が聞こえる。

 

 

 

 

 

 

「ちょっとォ!総悟君!何やってんの物騒なモン出して!」

「あの娘には借りがあるもんで。あとにも聞くことできやしたんで」

 

「待て!姫に当たったらどーするつもりだァ!」

「そんなヘマしねーや。俺は昔スナイパーというアダ名で呼ばれていたらいいのになー

「オイぃぃぃ!ただの願望じゃねーか!!」

 

 

 

 

 

聞こえてくる声は、近藤さんと沖田さんだろう。

 

「どうしよう、下で物騒な会議中だよ。私ら撃ち殺されるよコレ」

「そんなもん、全部私が防いでやるヨ」

…かっこいいよ神楽ちゃん。

 

 

そんなことを言ってると、土方さんの声が聞こえてきた。

 

「万事屋の女ども!お前らがどうやってそよ様と知り合ったかはしらんが、そのお方はこの国の大切な人だ」

私たちは話すのをやめて、静かに声を聞く。

 

「これ以上俺たちの邪魔をするならお前らもしょっぴくぞ!聞いてるか!!」

なんで拡声器も使わずそんな大きい声が出るんですか、と心の中でたずねていると、そよちゃんがぽつりと呟いた。

 

 

「…女王サン、サン、もういいです、私帰ります」

「えっ…な、何で?」

「そうヨ。私たち、自由にしてあげるヨ」

そう聞くと、そよちゃんはぎゅっと胸元で両手を握り合わせて言った。

 

 

「自由にはなりたいけれど…これ以上女王サンとサンに迷惑は…」

 

「迷惑なんかじゃないよ!」

「約束したアル、今日一日友達だって」

 

 

給水タンクにもたれかかり、私たちは言う。

「友達だもん、困ってたら助けるよ」

「それが江戸っ子の心意気アル」

 

 

目を丸くして驚いているそよちゃん。

見上げた空は、まだ綺麗な青色をしている。

 

 

「今日はまだ終わってないんだから」

「まだまだ一杯、楽しいこと教えてあげるヨ」

 

 

 

 

 

 

 

「そう、私たち友達です」

優しい声で言いいながら、そよちゃんは立ち上がる。

「でも、だからこそ迷惑かけたくないんです」

 

 

そよちゃんは私たちの前にたって、静かに頭を下げる。

「ホントにありがとうございました、女王サン、サン」

そう言って頭をあげたそよちゃんは普通の女の子の笑顔で続ける。

 

「たった半日だったけれど、普通の女の子になれたみたいでとても楽しかった」

 

綺麗な、いや、可愛い笑顔でそう言ってからくるりと私たちに背を向けて歩き出す。

 

「それじゃ…さようなら」

 

 

ここで別れたら、もう会えないんだろうか。

…私たちとは身分が違うから。もう、きっと会えないんだろう。

 

 

 

「待つネ!ズルイヨ!」

私が「いかないで」と叫ぶ前に、神楽ちゃんの声が響いた。

 

「自分から約束しといて勝手に破るアルか!私もっと遊びたいヨ!」

「…そうだよ、私も、もっとそよちゃんと仲良くなりたい!!」

 

叫ぶように言うと、そよちゃんはぴたりと足を止めて振り返らずに言った。

 

「そーです、私ズルイんです。だから最後にもういっこズルさせてください」

小さな声でそう言って、そよちゃんは私たちの方を振り返って言った。

 

 

 

 

「一日なんて言ったけど、ずっと友達でいてね」

 

 

 

 

 

少しだけ涙ぐんで、そう、言った。

敬語じゃない、普通の友達が交わすような言い方で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ざわざわと響く真選組の人たちの声や、町の野次馬の人たちの声が消えた頃。

空が夕焼けに染まる頃に、私たちは帰り道を歩いていた。

 

 

、もうそよちゃんと会えないアルか」

「…難しいだろうねー…」

 

私たちとじゃ、住む世界が違うもの。

 

「…でも、もしかしたら、会えるかもしれないよ。だから、ほら元気だしてー!」

「うん、そうアルな。今度は3人で遊園地行くアル!」

「わあ、楽しみ!」

 

会える、だろうか。私たちから会いに行く方法もわからないのに。

 

 

 

…あれ、これって、今の私と、同じ?

 

 

 

世界が違う。そう、私はこの世界の人じゃない。

会いに行く方法。向こうへ戻る方法も、向こうから来る方法もわからない。

 

それに、いつ別れがくるか、わからない。

 

 

 

「…、?どーしたアルか?」

「え、あ…なんでもないよ」

へらりと笑うと神楽ちゃんも笑い返してくれる。

 

「じゃ、私今日は姉御の家に泊まる約束してるネ。だからここでお別れアル」

「そっか、気をつけてね。じゃ、また明日!」

も気をつけるアル!じゃあバイバイヨー!」

 

 

たったっと軽快な足取りで神楽ちゃんは町の闇に消えていった。

 

ふぅ、とひとつ息をついて、私も万事屋へ向かって歩き出す。

ぐるぐると頭の中で回るのは…不安、なんだろうか。

 

 

頭の中を巡る記憶を振り切るように、私は万事屋への道を強く踏みしめて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

あ、あれ、最後シリアスですよねコレ。

ま、でも、着々と物語進行中です。ヒロインの心のもやもやはどうなる!(何そのアオリ文句

2008/07/05