今は6時間目。そして銀八先生の国語の授業。

お昼後でお腹も一杯、ついでに頭がぼーっとしてくる時間です。

神楽ちゃんは毎時間お腹減ってるらしいけどね!

 

 

 

銀八先生の声がすーっと耳から抜けていく。その代わりに眠気がくる。まだ授業が始まって5分くらいなのに。

あぁ…先生みたいないい声の人が国語やっちゃだめだよ、なんて思いながらぼーっと何も書いて無い黒板を見る。

けど、次に先生が発した声だけは、物凄くよく聞こえた。

 

 

「じゃあ今から漢字テストすっぞー」

 

 

 

あぁ、先生が鬼に見える。

 

 

 

当然他の生徒からもブーイングがくる。

「何でですか先生!ちゃんと連絡してくださいよ!」

「そうでさァ。責任とって死ねィ土方

何で俺だァァァ!!お前が死ね沖田!

「うるせーんだよお前ら!!俺は授業したくねーんだよ!寝たいんだよ!」

「私も寝たいアル!いつもみたいに自習でいいネ!」

「そうしたいけど、テストやるの忘れてたんだよ!ホントは先週までにやらなきゃいけなかったんだよ!」

「何で忘れてんだァァ!!」

「しょうがねーだろ!えぇいうるさい!さっさと回せェェ!!

 

 

先週までにやらなきゃいけなかったテストなんて今更やってどうするんだろう。

なんて心の中で思いながら回ってくる(っていうか銀八先生が飛ばしてくる)テスト用紙を受け取る。

 

 

 

「あーめんどくさっ」

「ホントでさァ。期限過ぎてるならやってもやらなくても似たようなモンですぜィ」

ぼそっと呟いただけなのに隣の席の沖田から返事が来る。

沖田はシャーペンをくるくる回して、思いついたら答えを書いてるみたい。

あたしの答案用紙はもう1回使えるよね、ってくらい白紙だ。

いや、頑張れあたし。とにかく書くだけ書いておかなきゃ…。

うーん…こんな感じの字だったような……あ、思い出した!違う違う、これじゃなくて…。

「消しゴム消しゴ…ム…」

 

 

あれ。

 

 

「…そんなはずない」

 

 

ない。

 

 

あたしの消しゴムが、ない!!

 

 

 

ちょ、ちょっと待て!!大丈夫、5時間目まであった!っていうか使ってた!!

理科室で、神楽ちゃんと机に落書きして……あ。

 

 

 

や ば い そ の ま ま 放 置 し て き ち ゃ っ た ! !

 

 

 

「…お、沖田ー」

「何でィ。答えなら教えねーぜ」

あれ、いつの間にか解き終わってるよこの人!あ、あたしがあんなに迷ってたのに!

「違う、答えじゃなくて…その、消しゴム貸してくれない?」

「…嫌でィ」

 

こ、このやろォォォ!!鼻で笑いながら言いやがった!

「いいじゃん、消しゴムくらい!減るもんじゃないし!」

「減るだろうが」

「ちょっとじゃん!ほんのちょっとじゃん!」

一応テスト中なので小声で抗争を続ける。

といっても流石3Z、テスト中であろうと静まり返ってはいない。誰かしら喋ってる。

 

 

「ねぇ、ほんと消しゴム!あぁもう!折角思い出したのに忘れそう!」

「忘れろー忘れろー」

「お前ホント嫌なやつだな!」

わざわざあたしから消しゴムを遠ざけて笑う沖田。くそっ、こいつ…!

「貸してほしかったら明日購買で3000円分奢りなせィ」

高ッ!!っていうかそれ購買買い占めれちゃうから!!」

3000円てお前!消しゴム1回使用料3000円ってことでしょ!?

そんなワケにはいかない。あたしのお小遣いがなくなる。

 

 

予備の消しゴムなんて入れた覚えは無いけどごそごそと筆箱を探る。やっぱり、無い。

反対側の席の土方君はテストが終わったのか放棄したのか、もう寝てる。

前はいない。後ろ…はさすがに振り向けない。

やっぱり、こいつしかいない。

 

「ね、ねぇ…何か他にお金かからないことならするから…!」

「へぇ。他に…じゃあ…体で」

「却下」

ピシッと言い捨てる。沖田なら冗談で済まされない、気がする。

「何でィ、キスくらいいいじゃねーか」

「よくないよ!!くらいじゃないし!」

キスは好きな人と!って昔から決めてるんだから、ね!

「大分妥協してからキス、ですぜィ」

「何であたしから!? アンタの脳内はどうなってるんだ!」

「本当ならを屋上まで引っ張ってって、それから無理やり「もういい聞きたくない」

駄目だ、頭の中もSなんだ。苛めることしか考えて無いんだ。

 

「何でィ、屋上でってゆーのは俺なりの配慮ですぜィ?本当なら教室で…」

「ぎゃあああ!やめて!それ以上言うな!」

もう口塞いでやろうかと思ったとき、上から声がした。

 

「そうだよ。お前ら一番前で何いやんな会話しちゃってるんですかー」

 

ぴたっ、と動きも口も止まる。

 

「まったくよー。先生眠いんだって。そんな会話してられると寝るにも寝れねーんだよ」

教卓に体を預け、前のめりになって言う銀八先生。

このさい”先生の睡眠妨害”文句についてはスルーしとこう。本来教師は試験監督でしょ。(寝ちゃ駄目でしょ)

「ったく、沖田も消しゴムくらい素直に貸してやれっつーの」

「でも苛めるの楽しいんでさァ」

素敵に先生がフォローしてくれてんのにそれをドS発言で汚すなサド王子め。

 

 

「しょがねぇなァ…ほら」

ひょい、っと机に転がる消しゴム。

「あ…ありがとう。最初っから素直に貸してくれればいいのにー」

ごしごしと回答を消して、もう一度書き直す。

「誰が素直に貸す、なんて言いやしたかィ」

あぁ、幻聴であってください。

チャリ登校だろ?」

「う、うん。それが?」

まさか町内10周してこいとか?もしくは自転車よこせ!とか?…ぎゃあ!あたしの愛車が…!

そんな心配をして頭を抱えていたら、沖田はあたしの腕をベシンと叩いて言う。

「今日の帰り、家まで乗せてってくだせェ」

 

は?

 

「…え、あ、それでいいの?」

「もちろんが漕ぐんですぜィ」

「……はーい」

まぁそこらへんは妥協しよう。まぁ、いいよね。購買3000円とかよりはマシだよね。

沖田の家は学校から近い。普段歩きだったり、土方君の自転車に乗って来るくらいだし。

 

 

 

 

あぁ、明日は消しゴム忘れないようにしよう。

…その前に理科室に置き去りにしてしまった消しゴムを取りに行かなきゃ。

 

 

 

 

消しゴム忘れた


(沖田の家に直行しようと思ったら商店街や色んなところ連れ回されました。きっと明日は筋肉痛だ!)

 

 

 

 

 

あとがき

誰オチにするかをあみだくじで決めました。(←

沖田のSっぷりがイマイチ発揮されなくて何か微妙!キィィ!

っていうか名前変換少なくてすみません…!

2007/08/22