金曜日。
今は体育の時間。
「あーくっそめんどくせーなー」
何で銀八先生がいるのでしょうか。
「えーっと、今日は体育のセンセーが休みなんで、暇…じゃないけど時間空いてた俺が
担当することになりましたー」
ブツブツと文句を言う先生。体育なのに白衣なのはもうスルーしておこう。
「まぁ授業見るのめんどくさいんで…3年Z組総員鬼ごっこ大会にしまーす!!」
わ、わけわかんねぇーー!!!
それ結局適当に皆1時間走ってろコノヤローってことでしょ!?
「ちょ、そんなの疲れ…」
「鬼ごっこアルか!楽しそうネ!」
うわぁ、目キラキラしてるよ神楽ちゃん。
「うふふふ、闇討ちにはもってこいね」
笑顔でとっても怖いことを言ってる妙ちゃん。マジで怖い。
「範囲はこのグラウンドと校舎外。中には入るなよー。遊んでるのバレるから。
んじゃ、鬼きめるぞ。ほら集まれー!」
じゃんけんの結果、鬼は近藤君、沖田、ヘドロ君。
なんていうか、掴まるなら…近藤君がいいな。でないと死にそうじゃない?このメンバー。
あ、いやでも意外とヘドロ君は優しいトコある…けど追いかけられたら相当怖いだろうなぁ。
「気をつけるネ。あのサディスティック野郎、こういう追い詰めるゲームは強そうネ」
「そうだね。…そうだね…!」
沖田はすごい笑顔してるもの。追い詰めた時の恐怖に怯える顔が好きらしいし。
「何人の顔見てるんでィ」
「うわっ、いや、いい笑顔してるなーと…」
「そりゃそうでさァ…。くくっ…」
怖い。なんとしても一時間逃げ切らねば。
「あぁ、そうだ。勝負しやせんかィ」
「勝負?」
「俺がをつかまえられたら、ジュース奢ってくだせぇ」
「…ジュースでいいんだ?…おっけー!乗った!掴まらなかったら沖田が奢ってね」
沖田にしては軽い。普段ならもっと強烈なこと言ってくるのに。
「あ、ここから3キロ先の自販機のフルーツミックス100%ジュース、昼放課の間に買ってきてもらいまさぁ」
軽くなかった。
「無理!!3キロっておま…!購買でいいじゃん!」
「罰ゲームなんだからそれくらいしてくだせェ」
うがぁぁぁ!!負けられない!絶対負けられない!
「じゃ、10数えたらスタートなー」
そう言った瞬間、あたしを含め、逃げる側の皆は一気に走り出す。
さぁて、ゲームスタート。…とりあえずどこかに隠れなきゃね。
「って…1時間って長いよね…」
「そうだな」
「!?」
吃驚して横を向くと桂君がいた。あとエリザベス…だっけ。
「な、なにしてんの桂君!?」
「隠れているに決まっておろう。フン、あいつらには負けてやらん」
うわぁすごい燃えてるよ。すごいオーラでてるよ。絶対見つかるよこれ!
こっそりと隠れ続けて…結構時間がたった気がしたそのとき。
「あ、やばっ近藤君が近づいてっ…」
逃げなきゃ!と思ってると横の桂君に手を引っ張られた。
「こっちだ」
「…は?」
くいくいと手を引っ張られ、グラウンドから校舎裏へ向かう。
けど、そう簡単にはいかなかった。
「みーつけたっ!」
やばいっ、と思ったけど近藤君が指をさしてるのは、あたしたちの方向じゃなくて、エリザベス。
…そりゃあれだけ大きい図体してれば見つかるよね!!
「エリザベスッ…!くっ、仕方ない…、お前は先に行け!」
「え、は、はいっ!」
何だろう、この戦場みたいな空気。
と、とりあえず逃げよう!掴まるわけにはいかないしね…!
こそこそと木を避けて校舎裏へまわる。
「…ふう、大丈夫かな桂君とエリザベス」
まぁあの2人は逃げたり隠れたりが上手いらしいから…きっと大丈夫、だろう。
他のみんなは大丈夫かな。…掴まってないといいんだけど…。
ってなんであたしまで戦場風な考え方してんだろ。これ鬼ごっこだよ。
「にしても…みんなどこに隠れてるんだろ…」
がさっ、と植え込みを避けて壁に背をつけてグランウンドを見る。
「半分くらいはもう掴まってますぜ」
「そっか…やっぱあの3人が鬼じゃ強敵だよね…」
うわ、ヘドロ君がダッシュしてるのが見えちゃった。怖い怖い。
「あと何分くらい残ってるんだろ…」
「20分ですぜィ」
「そっか…。…………。」
…ちょっと、あの、さっきからあたし誰と喋ってるワケ?
なんか普通に会話してるけど、あれ、凄い嫌な予感がするなぁ。
意を決して振り向く。多分、あたしの予想は外れない。
「……おっ沖田!ぎゃあむぐぅっ!!」
叫ぶ前に手で口をふさがれる。っていうか鼻も押さえてる!苦しいって!
「いい顔してるねィ…?」
にやりと楽しそうに笑うのは沖田。
あたしの口を押さえていた手を壁について、逃げられないようにする。
やべぇ、近い近い近い!!
「ふ…なんでィ、怖いですかィ?」
「っていうか近っ…」
「……ちょっと、黙りなせェ…」
ぐいぐいと沖田の肩を押して距離をとる。
でも、あたしの力じゃ押し戻すことはできなくて。
沖田の顔が、すっ、と近づいて。 思わずぎゅっと目を瞑る。
目を閉じてすぐに、ガスン!と鈍い音がして目を開ける。
「おーい、鬼ごっことはいえど、襲えとは言ってねーぞ」
左手をふらふらと揺らしながら銀八先生は言った。
たぶんさっきの音は、沖田の頭にチョップを食らわせた音だろう。
「何しやがるんでィ。暴力反対でさァ」
「体育の時間は暴力にはいりませーん。大丈夫だったか」
「あ、はい…っていうか先生なんでここに?」
グラウンドにいないと思ったら校舎裏にいたとは。
「…別にタバコじゃないから。ジャンプ読んでただけだから」
どっちにせよ授業放棄してんじゃん!…と、心の中でつっこんでおいた。…新八君の変わりに。
「ま、もうすぐ授業終わるから…さっさとグラウンド行くぞー」
それだけ言ってスタスタと歩いていく。
「あぁそうだ。、このあと頑張ってくだせェ」
「は?何を?」
「罰ゲームですぜィ」
…あ。
「え、あの、マジで?マジで購買じゃだめなの?」
「行ってきてくだせェよ、」
ポン、と肩に手を置かれる。
あたしの負けは、確定したわけで。
さぁて、自転車を飛ばして昼放課の間に罰ゲームをしなくては。
今日も神楽ちゃんと妙ちゃんとお昼食べるはずだったのに。
買ってきたジュース顔に向かって投げてやろうかな。 あーくそう、沖田のばかやろー!!
じゃあ勝ったらジュースおごって
(チッ、銀八のヤロー邪魔しやがって。…まぁいいや。今は疲労たっぷりで帰ってくるだろうを待ちましょうかィ)
あとがき
長っ。これ短編じゃないですよね。最後無理やり終わらせた感たっぷりですし。
ちょっとだけズラに出番を作ってみました。オチは沖田なのにね!
2007/09/02