一週間が終わる一日前。そんな本日土曜日は。

 

 

 

「いくよー退くーん!!」

「負けないよ、ちゃん…!」

 

 

スパーン、という軽快な音と共に、あたしの元からシャトルが飛ぶ。

 

…そう、あたしたち、ただいま公園にてミントンしてます!

 

 

 

「うー、やっぱり強いよ、退くん…!手加減してよねー!」

「これでも手加減してる方だよー」

にこにこ笑ってる退くんは、学校で見るときよりもいきいきしている気がする。

 

 

そもそも、あたしがこうやって付き合っている…っていうかつき合わされてるのには理由があるわけで。

 

 

 

 

 

 

『退くん退くん!!英語の予習、やってきた!?』

『え?あ、うん。やってあるよ』

『!!!みみみ見せてほしいんだけど…駄目かな?』

『いいけど…ひとつ、頼みごと聞いてくれる?』

『あたしにできることなら!』

 

 

 

 

 

 

という、昨日のやりとりの結果なのだ。

…まぁ予習忘れたあたしがいけないんだけどさぁ!

 

 

 

あたしが木陰で休憩してるときも、退くんは素振りの練習をしている。…あたしの横で。

いつかラケット当たるんじゃないかとちょっと心配だったりするけど…

やっぱりいつも1人で練習してるみたいだから、こうやって誰かとやるの、楽しいんだろうなぁ。

 

 

 

うーん、もう少し頑張るかな!負けっぱなしも悔しいし!

 

 

 

 

「退くん、もうひと勝負しよっか!」

「うん!」

 

 

 

 

照りつける太陽の下、公園でこうやって遊ぶのも、たまにはいいのかも、ね。

 

 

 

なんて思ってると、聞き覚えのある叫び声、というか怒鳴り声が聞こえてきた。

 

やーまーざーきィィィ!!!テメェ今日風紀委員会やるっつっただろうがァァア!!!」

 

「え、そうでしたっゴフッ!!!

 

物凄い勢いで走ってきた土方くんのとび蹴りが見事退くんにヒット!

…凄く痛そうだけど、素敵に決まりすぎててちょっと気分がスッキリした気がする。

だって負けっぱなしだったもん!なんか退くんに負けるの悔しいんだもん!

 

 

 

 

 

 

 

「い、ったたたた…風紀委員会…?聞いてません、けど…」

「総悟に皆に伝えておくようにって言っといたんだが…」

 

すこし悩んでから、顔を引きつらせた土方くんは低い声で呟いた。

「…そーだよな。総悟が言うわけねーよなー…」

 

蹴り飛ばされたときにぶつけたのであろう頭をさすりながら退くんは一歩土方くんから離れる。

「あ、あの、連絡きてなかったの俺だけ、ですか?」

「…いや、今日来てたのは…近藤さんだけだな」

「じゃあ今学校に近藤くん1人でいるの?」

「ああ」

 

 

 

 

…さ、寂しいだろうなぁ近藤くん…。

まぁあの人のことだから、皆まだかなーとか思ってるんだろうなぁ。うん、いい人だなぁ…。

 

 

 

 

 

「チッ、予定変更だな。風紀委員会は明日の朝9時からだ。遅れるなよ」

「は、はいい!」

ビシッと姿勢よく立って返事をする退くん。

 

 

「そんで、お前は今から総悟探して学校まで連れて来い」

「……え!?い、今から…ですか?」

ぎゅ、とラケットを握る退くん。

…そんなにミントンしたいんか。

 

………。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁー!!そういえばー!!」

ちょっと大げさに声を出して言う。

 

「土方くん!!今日、オオエドスーパーでお一人様3本限りのマヨネーズ安売りやってるんだよ、しってた!?」

「マジでか!くっ…俺としたことが…」

すごいや。本気で悔しそうな顔してる。

反対に退くんは唖然としてるみたいで、ぽかーん、ってなってる。

 

 

 

 

 

「それと、お1人様2本限りの醤油の安売りもしてるから、もしかしたら沖田もいるかもよ!」

「なるほど。可能性はあるな。最近ほぼ毎日俺ン家に醤油借りに来るからな…」

顎に手を当てて、頷く土方くん。

 

 

…適当に醤油って言っちゃったけど結果オーライ!

 

 

 

 

 

「数に限りアリだから、早めに行ったほうがいいかもよ!」

「やっべ!んじゃ今から行ってくる!情報ありがとうな!」

土方くんはさっきと違う、優しい笑顔で笑って、回れ右をして走っていった。

「がんばれー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、楽勝!」

こういう時の土方くんはとっても扱いやすい。

「じゃ、続きしよっか、退くん」

 

 

 

そう言って振り向くと、退くんは笑ってて、こう言った。

「すごいね、ちゃん。…ありがとう、助かったよ」

 

 

 

 

……えっと、少しだけ最期の方の笑顔が黒かった気がするんだけど。

まさか計算済み?いや、そんなことないよね。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ続きだよね。俺は負けないよ、ちゃん」

…計算してるわけ、ないよね。

うん、あたしの思い違いだよね!

 

 

「ま、負けないよー!!絶対勝つんだから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今日は夕方まで、公園からパーン、スパーン、というシャトルの音が響いていた。

 

後でふと思った事。…土方くん、近藤くんのこと忘れてないといいんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

餌付け


(あのときのちゃん、すごかったなー。俺の予想以上だったなぁ。…ふふ、あー楽しかった!)


 

 

 

 

 

 

 

あとがき

餌付けってどう書いたらいいんですか!?難しいんですけどォォ!!

慣れてない人をなつかせる、みたいな感じの意味だと思うんですけど…。

3Zはみんな最初から仲良しなんで。…お題に添えてなくてすみません…!

2007/12/18