空が夕焼け色にそまっていくころ、あたしは教室で日直日誌を書いていた。

…っていうか書くことがなくてずーっとにらめっこしてるんだよね!

適当でいいと思うんだけど、それすらも思い浮かばない。

うーん…どうしよう。なんて考えてたらガラッと教室の扉が開いた。

 

 

「何してんの

「…日直日誌とにらめっこ合戦してます」

 

 

 

 

 

「そーかそーか」

「そうですよ。そして一言書かなきゃいけないのに何も思いつかないんですよ」

くるくるとシャーペンをまわすあたしの横の席に座る銀八先生。

 

 

「っつーか今日の日直って新八じゃなかったか?」

「…ええ、まあ、そうなんですけど…。

新八君は商店街のスーパーのタイムサービスに行かなきゃいけないらしくって」

そしてあたしは授業後の話を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーああー…どうしよう!なんで今日日直!?っていうか毎日日直だよね僕!」

「どーしたの新八君」

「ついにノリツッコミアルか」

「あぁちゃん神楽ちゃん…いやその、今日は重要な用事があって早く帰らないと…」

チラチラと時計を見つつ日直日誌を書く新八君。

 

 

「用事って?」

「…タイムバーゲンがあるんですよ」

それのどこらへんが重要なんだ、という目を向けるあたしと神楽ちゃん。

 

「いや、そんな目で見ないでくれる!?早く買い物して帰って夕飯作らないと大変なんだよ!

姉上が夕飯作ってしまう…!っていうか兵器が完成するぅぅー…!!

頭を抱える新八君。

まじでか。やばいネ。新八ィ、さっさと帰って夕飯作るヨロシ!」

まぁ確かに妙ちゃんのあの料理はいろんな意味でまずいもんなぁ…。

 

 

 

 

「うーん、じゃあ日直かわってあげようか?」

「…えっ、ええ!?いいのちゃん!?」

!こんな眼鏡に優しくしてやらなくても大丈夫ヨ!」

「神楽ちゃんは何がしたいの!?眼鏡バカにすんなよ!」

 

「もう日誌も書き終るでしょ?あとは提出だけだし。やっておいてあげるよ」

ひょいっと新八君の机から日誌を持ち上げる。

ふーん、あと書くところは今日の一言だけか。

「…ちゃん…ありがとう!今度ちゃんとお礼するからっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っということで、この日誌の一言のために結構悩まされてるわけです」

「お前なぁ…そんなモン適当でいいんだよ」

あきれた顔で言う先生。

「でもその一言がないんですってば。今日の出来事…っていうのかな。それがイマイチみつからなくて」

 

 

 

イスの背にもたれて窓から外を見る。

「出来事…か。んじゃー今からなんかしますか」

「は?」

ふむ、と言いながら顎に手を当てて考える先生。

…今から、ってもう学校終わったんだけど。

 

 

 

「あー…よし、んじゃーさ、

ガタッといすから立ち上がってあたしの机に手をつく。

「せ、先生?」

……なんか、嫌な予感。

 

 

 

そのまま先生は、すっとあたしの顎をすくうように掴んで顔をぐっと近づけて言う。

 

 

 

 

「生徒と教師の禁断の恋でもしてみるか?」

 

 

 

 

 

「は、はぁぁああああ!?い、いやですよ!

思わず全力で否定すると先生は後ろにわざとらしくよろめいた。

「折角一言ネタを提供してやろうと思ったのにー!傷ついたー!先生すっげー傷ついたー!!」

「あたしは物凄くびっくりしたわァァ!!っていうかそれ一言で終わらないですから!長文ネタになりますから!」

 

 

がたんがたんとあたしも音を立ててイスから立ち上がる。

ちゃんひどい!」

「なんでそんなあたしが悪いことしたみたいになってるんですか。

先生が変な冗談言うからいけないんじゃないですか。むしろセクハラですよ!」

 

 

「セクハラじゃないですー嫌がらせじゃねーもん」

つーん、と明後日の方向を向く先生。

ちくしょー、こんな時だけちゃんと正当否定するんだもんなぁ。

 

…まあ一言これでいいや。先生にセクハラされたって書いとこ。

 

 

 

 

 

 

「先生、日誌書けたんで。はい」

1人でぶーぶー言ってる先生に日直日誌を突き出す。

「あれ、いつの間に?」

「先生が何かぶーぶー言ってる間にです」

 

 

 

 

 

鞄を持って教室を出て、それから昇降口へ。

もう空は夕焼け色から夜の青色に変わりかけていた。

 

 

 

 

「うーん、結構暗くなっちゃったなー…」

「んじゃ優しーい先生が送ってってやろーか?」

「いや、あたし自転車あるし」

というか今駐輪場にいるんですけど。

 

 

 

 

「っていうか俺ん家知らねーんだよな。だから送るついでに教えてくれよ」

原チャリを引っ張りながら言う先生。

「うーん…でも先生って学校の近くのアパートに住んでますよね。うち、結構遠いですよ?」

「いーのいーの。そのうち夜這いとか行くかもしんねーから下見と下準備に」

セクハラァァ!今度こそセクハラ発言ですよ今の!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…えーと、ここがあたしの家でーす」

「へー。なるほど。……ふーん…」

 

…来ちゃった。

っていうか先生が「お前は俺が嫌いなのか!」とか言い出して駄々こねるから、その、しょうがなく。

先生と家の前で喋ってたら玄関のドアが軽快に開いた。

 

 

「あらー!、おかえりなさい。そちらは?」

「ただいまお母さん…えーと、その」

「初めまして、さんの担任の坂田銀八です」

 

 

!?

 

ピシッと姿勢よく立ってあいさつをする先生。……って何この変わり具合!?さんって…!!

「まぁ!そうなんですか!あ、もしかしてを送ってくださったんですか?」

「えぇ、夜道は危険なので」

 

 

…うん、なにこれ、気持ち悪い。

先生は何がしたいの。学校ではモロセクハラ発言してたのに。

 

 

「ありがとうございます、先生。あ、もしよかったら夕飯食べて行きませんか?」

「おわあああちょっとお母さん!?」

「いいんですか?それじゃお言葉に甘えて」

にこっ、と笑う銀八先生。…普段の先生を知ってると嘘くさい笑顔に見える。

「…!じゃあどうぞ上がってください、先生」

…お母さんには、ヒットだったようで。

 

 

 

「やった!夕飯ー!」

お母さんが家に戻ったとたん、普段の先生に戻る。

「…いや、あの、なに…」

くるっとあたしの方を振り返っていつものようなにんまり笑顔で言う。

 

「言っただろ、下見と下準備って。これで臨時家庭教師もしてやれるぜ?」

 

そう言って白衣を翻し、先生はあたしの家に入っていった。

……やっぱり連れてこなきゃよかった…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生、それはセクハラです


(夕飯を食べて、それではまた、なんて言って先生は帰りました。…今日から戸締りを強化しようかと思います。)


 

 

 

 

 

 

 

あとがき

先生ーー!!好感度!好感度さがってますよ!(ぁ

そんな訳で何を考えてるのかわからないセクハラ銀八先生でした。

まぁこれで土日も先生登場できるのでこれからもう少し出番が増える……かもね!(おい

2007/10/14