「「個人面談んんんーーー!?」」

 

 

ここ、3年Z組からは、生徒全員からのそんな絶叫が上がっていた。

「そんなことのために俺ら学校来たのかよ!」

「今日土曜日ネ!私定春と遊びにいく予定だったアル!!」

 

そう、今日は土曜日。

かくいうあたしも、今日は朝まで寝る予定だったのに…!

 

 

 

「あーあー、お前らうるさい。わかってんの?俺が一番めんどくせーんだよ?俺が一番やりたくねーんだよ?」

「じゃあやめちまいましょう。やったことにしなせェ」

すかさず沖田が銀八に言う。

 

 

「そうなんだけどよォ、一応お前ら3年だろ。進路なんたらーって紙書かなきゃいけねーんだよ」

「一応ってなんですか先生。っていうかなんでこんな急になんですか!」

新八くんのツッコミはもっともだ。

だって、個人面談、今からやるって言い出したんだから。

 

 

 

「とにかく、さっさと終わらせるからな!んじゃそっちから順番に…えーと、からな」

「何でですか先生。あたしの横に土方くんいるの見えてないんですか」

 

こういうとき、何故か一番最初、というものは緊張する。

相手は銀八先生なわけだから、緊張する必要も無いけれど、何故か緊張するものなんだよ、最初って。

 

 

 

「あー…土方はアレだろ、マヨネーズ製作工場へ就職

「「そんな適当な!!」」

 

…ってつっこんだのはあたしと、新八くん。

あれ、土方くんは?と思って横を見ると、なんだか「それもいいかも」的な顔をしていた。

 

 

 

「え、ちょ、なんでそんな満更でもないみたいな顔してるの土方くん!!」

「いや、まぁ…一日中マヨネーズに囲まれてるっていうのもいいかと」

「よくない!!よくないから考え直して!!」

 

 

何があったのか、頭のネジが飛んでる土方くんは「じゃあが面談してるうちに考えておく」とか言い出した。

あれ、それって結局あたしが一番にやるってことになってるよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…失礼しますー」

がらがら、とゆっくり面談用の空き部屋の戸をあける。

 

 

「心底嫌そうな顔してるね、ちゃん」

「嫌ですからね」

「なに、先生と2人っきりがそんなに嫌なのかー?」

「……………そんなことないですよ」

何だその間は。先生ガラスのハートだから気をつけてくれないと困っちゃうんだけどなー」

「わかりましたから、さっさと終わらせましょうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

先生は、乱雑に机に散らばった紙束から、おそらくあたしの成績表とかを選んで手に取る。

「んーと、は…成績良いのと悪いのの差が激しいんですけど」

「好きな教科だけはできるんです」

 

 

人の頭は不思議なものだ。

好きなことなら、比較的短時間ですぐ覚えられる。

 

 

「じゃあ何だ、国語は嫌いなのかコノヤロー」

「国語は先生が授業ちゃんとしないからテスト勉強できないんですって」

 

っていうか、授業が脱線するのは主に沖田が土方くんに攻撃をしかけけたりしてるのが問題なんじゃないかと思うけど。

…いや、でもそこに乗っかって一緒にぎゃーぎゃーやってるよね、先生。

 

「…ちゃんと授業しないから給料カットされるんですよ」

「!!」

ぼへーっと紙を見ていた先生が、突然イスを回転させてこっちを見る。

あまりの勢いと、予想外に見開かれていた目に一瞬びくっと体が震える。

 

 

するとすぐにいつもの死んだ魚の目に戻って言う。

「はーい、今のでの国語の評定がひとつ下がりまーす。あーあー、進学どころか留年だなこりゃ」

「え、ちょっと、なにそれぇぇぇ!!」

 

 

とんでもない理不尽な言葉に思わず立ち上がって叫ぶ。

「先生はそれくらいできちゃうんだよー」

「酷ッ…!そんなの職権乱用ですよ!却下却下!!」

 

 

たかが一言で留年になんてされてたまるものか!

…でも、まぁ、たまには授業してるし…ちょっといいすぎたかな…。

 

 

 

 

「…しょーがねぇな、特別には今の発言見逃してやるから…もう給料とか言うな

「はい」

 

…地雷はそれですか、先生。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一度いすに座りなおして、面談再開。

 

「んで。お前結局どーすんだよ、進学か、就職か」

普通のことを銀八先生から聞いても、いまいち頭にピンとこない。

 

 

「うーん…とりあえず…進学、でしょうね」

「別に銀八先生のお嫁さん!とかでもいいんだぞ」

「全力で遠慮します」

 

にこやかに、スパッと言い返す。

そんな収入のあやふやな人と結婚したら大変なことになるでしょう。

…っていうのは、黙っておいた。

 

あたしの、成績のために。

 

 

 

「へーいへい。そーですか。わかりましたよー」

「そうですそうです。だから、もう終わりましょうよー。次まだやる人たくさんいるんですよー」

少し拗ねたような口調で話す先生にそう言って、あたしは足をばたばたと動かす。

 

 

 

「んじゃ最後」

イスを回転させて、あたしと目線を合わせて言う。

 

「学校…っつーか、クラスは楽しいか?」

 

「……クラス…?」

 

 

毎日、両隣の席…沖田と土方くんの乱闘に巻き込まれたり、お妙ちゃんと近藤君の乱闘で机がとんだり。

そういうことはあるものの、つまらないなんて思ったことは、ない。

 

 

「…楽しいですよ。なんだかんだいって、あたしは、あのクラス好きですから」

そう言うと、先生は少しだけ笑った。

 

 

「そっか。心配するこたァ無かったわけかー」

「心配?」

「ああ。さ、たまーに悩んでる感じの顔してるだろ。あと無理に笑ってたり」

 

 

「…それ…多分戻ってきたテストの成績が悪かったとか、宿題やってないとかでへこんでる時です

…そんだけェェェ!?なんだよお前、俺それで結構心配しちゃってたんだぞ」

「すみませーん」

 

 

でも、びっくりした。

友達でも気付いてなかったのに。いや、気付かせないようにしてたのに。

 

 

 

「なんで…知ってたんですか、そんなこと」

「俺はのことはちゃんと見てるからねー。もう授業中もバッチリ」

へらへらと笑いながら、あたしの資料をファイルにしまう。

 

 

「…セクハラで訴えますよ」

「生徒のことをよく見ておくっていうのは、先生の仕事ですぅー」

 

 

 

 

クラスが楽しい理由は、銀八先生が担任だったから、っていうのも追加しておこうかな、なんて思った。

そして、あたしの個人面談は終わった。

…さて、次の土方くん呼びに行かなきゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

職権乱用


(後で神楽ちゃんに聞いたところ、最後の質問をされたのはあたしだけみたい。…今度はあたしが先生を見ていようかな)


 

 

 

 

 

 

あとがき

勢いでががーーっと書いたので色々矛盾があるかもですが…。

とりあえず、先生はヒロインさん(だけ)ちゃんと見てるよ、っていうお話でした(どんな終わり方

2008/06/14