毎週…というほどではないものの、土日になるとたいてい出されるのが宿題。
そしてそれに悩まされるのも、ほとんど毎回。
…うう、1人じゃ終わらない…!!
一番身近な頼れるお隣さんは、今は外出中みたい。部屋のカーテンは閉ざされたまま動きはしない。
「…どーしよ」
ごろりとベットに横になって、傍にあった携帯電話を手に取る。
このまま1人でいたら、やる気も出ないし、わからないしで明日になって慌てることになるだろうなぁ。
そんな考えに行き着いたあたしは、電話帳を開いて目を閉じる。
そして、目を閉じたままボタンを押して適当に1人を選び出して、メールを送った。
明日までの英語の宿題、終わってる?終わってたら教えてくれませんか?
その一言に返って来た返事は「今やってるとこだけど、うちで一緒にやる?」。
あたしは英語の課題と、筆記用具を掴んで鞄に入れて、自転車に乗って走り出した。
行き先は、退くんの住むマンションまで!
ピンポーン、と玄関のチャイムを押す。
来てから気付いたけど、思いっきり休みの格好で来ちゃったよ…!
うおお、おしゃれとかしてきた方がよかったかな…!?
ぐるぐると頭の中で回る後悔を一刀両断するかのように、ガチャリと目の前の戸が開く。
「い、いらっしゃい、ちゃん」
少しだけ息を切らして戸を開けて、退くんは微笑みながら言った。
「あはは、ごめんね!ちょっと片付けしてて…その、散らかってても気にしないでね!」
初めて上がる退くんの部屋は、本人が言うほど散らかっていなかった。
む、むしろあたしの部屋の方が散らかって…い、いや、そんなことはない!……ない!!
「ちゃん?」
「はいぃぃ!!や、あの、その、散らかってないから気にしなくていいと思うんだよ!」
「そ…そう?ならよかった」
…ちょっと落ち着こう、あたし。
部屋の真ん中に置かれた机に向かい合って座る。
「で、退くん宿題どこらへんまで終わった?」
「とりあえずあと半分かな」
「マジでか」
ちょ、あたしまだ3分の2は残ってるんだけど!
「俺でわかる範囲なら、教えてあげるよ」
そう言ってくれた退くんに、あたしは勢いよく頷いて、英語の課題を取り出した。
それから、お互い教えあって、あと一問で宿題も終わるところまでいった。
…ほとんど退くんがやってたというのは、この際置いておこう。
あたしだって頑張ったもん。答えの一歩手前くらいまでは、なんとかやれたし。
ノートとにらめっこしているのも疲れてきたから、目の前に座る退くんの手元をぼーっと見ていた。
黒鉛が削れていく音と共に、ちょっとだけクセのある字が書き出されていく。
「あ」
退くんが答えを書き込んでるときに、ふとあることに気付いて声が出た。
「どうかした?」
視線をノートから上げて、あたしに向けて尋ねる。
「や、あの、ふと気付いたんだけど、シャーペンおそろいだね」
「へ?あ、ほんとだ」
「これ見た目結構ゴツいから、ちゃんみたいな女の子は使わないかと思ってたんだけど…」
「うん、確かに見た目はゴツいんだよね。でもさ、これ…」
「「書き心地はめちゃくちゃいいんだよね!」」
まったくの同じタイミングでそう言ったあたしたしは、顔を見合わせて思わず笑ってしまった。
「ぶっ、あははは、やっぱ退くんもそうなんだ!」
「はは、そうそう!書き心地がいいと、それだけでちょっとは勉強もする気になるしね」
なんとか笑いを止めようとするけど、止めようとするたび余計に笑えてしまう。
退くんも口元に手をあてて、なんとか息を整えようとしてる。
「ふ、ははっ、俺はちゃんのそういうとこ好きだよ」
「あはははっ…え?す、き?」
あまりにも自然にさらりと言われた言葉に少し遅れて反応すると、退くんは少しはにかんで言った。
「うん。今日もさ、急にだったから…その、俺もちゃんと準備とかできてなくて服とかヨレヨレでしょ」
そういえば、今日の退くんの格好は普通のシャツにジーパンというラフな格好だ。
や、あたしも似たようなもんだけど。
「それなのにちゃんがちゃんとした格好で来たら、俺すごい恥ずかしいなーって思ってたんだよ」
なんとか部屋は片付けたんだけどね、と言って退くんはまた笑う。
わあ、結果オーライじゃん。
そのまま家を飛び出してきてよかった、なんて思いながらあたしも一緒に笑った。
ところで、さっき一瞬感じた気持ちは、なんだったんだろう。
そんな考えは、退くんの一言によってかき消される。
「じゃ、あと一問終わらせよっか。これが一番難しそうだし」
「……あとは頼んだ、退くん!」
「いや一緒に考えてね、ちゃん」
おそろいの
(「でもさ、なんか今日のあたしたち似てるね」「あはは、そうだね。(勢いだったけど、家に呼んでよかった)」)
あとがき
退とお勉強会ですー。そしておそろいなのはシャーペンだけじゃなくて、今日の待遇も似てるね、ってお話です。
色々とヒロインとシンクロさせてみました。
それより吃驚なのは、普通に男友達の家へ走っていくヒロインさんの鈍感さですね!(書いたのお前やん
2008/10/05