「私これから定春の散歩があるのヨ」
「あたし明日提出の課題やらなきゃいけないんだよねー」
「俺もまだ課題やってねぇからやらねーとな」
「俺ァ今から駄菓子屋行かねーといけないんでさァ」
「「「お前が一番暇人じゃねーか」」」
ただいまあたしたちは、教室の掃除を終えて、ゴミ袋を真ん中に、話し合い中です。
何のって…そりゃ、誰がごみ捨てに行くかだよ!
「あんた超暇人じゃん!行ってきてよ!」
「駄菓子屋ばかにすんじゃねーやィ」
「だって今この中で一番暇じゃん!」
ぎゃんぎゃんと言い合うあたしと沖田。
「じゃあここは公平にジャンケンできめやしょう」
「望むところヨ!絶対勝つネ!」
ぐっと手を握り締めて言う神楽ちゃん。
「ま、総悟にしちゃ普通の案出してきたからな…ノッてやるか」
「むー…負けないからね!」
土方くんとあたしも、ぎゅっと手を握り締める。
「じゃあいきやすぜ。さーいしょーはグーっ!!じゃんけんぽんっ!!」
神楽ちゃんがチョキ。
沖田がチョキ。
土方くんがパー。
あたしがパー。
「よっしゃ。じゃ、俺ァ帰りますんで。後は任せやした土方さん、」
「ごめんヨ!」
「「……マジでか」」
ゴミ袋を片手に、廊下を歩く。
隣を歩く土方君は両手にゴミ袋。
「くそー、何か総悟に負けると腹立つな…」
「そういえばあたしの友達が、ジャンケンは音頭とった人が勝つってジンクスがあるって言ってたんだよねー」
「おま、それ早く言えよ!」
「今思い出したんだもん。しょうがないじゃん」
あたしら3年Z組の教室からは、意外と遠くにあるゴミ捨て場へと歩く。
「はぁあー、今日はさっさと帰って課題やるつもりだったのにー」
「しょうがねぇさ。それより、さっさと終わらせるぞ」
「あーい…」
気の抜けた返事をしながら喋っているうちにゴミ捨て場に着いた。
「よいしょっと。終わり終わりーっと…あ、かばん教室に置いたままだ」
「…な、。お前課題学校持ってきてるか?」
ぱんぱんっ、と手を払いながら言う土方くん。
「ん?うん、一応持ってるけど?」
「ならよ、今からやらねーか?」
「もちろんっ!いいよいいよ!寧ろ私の分もやって!」
「調子に乗るんじゃねーよ」
ぺしっと軽く頭をはたかれる。
帰り道は、手ぶらな所為かちょっとだけ早く教室へたどり着いた。
「土方くーん。問4がわかりませーん」
ずらりと並んだ英語の文章。
「問4…って英訳の問題か。単語の意味調べてけばわかるだろ」
「いや、意味調べても繋がらないんだよ、文章が」
何通りか単語をつなげてみたけど、なんだか違和感たっぷりなんだよね。
くそう…難しいなぁ。
「お前ここの接続詞訳してねーだろ」
「え?どれ?」
「これ」
向かい側に座る土方くんがシャーペンでポンッ、と英英単語をつつく。
「あー、ああー!そっか!おお、じゃあできるかも!」
「頑張れよ」
「うんっ、ありがとう!」
かりかりと、プリントに日本語を書き連ねる。
「土方くーん、問7もわかんない」
「今度は何だ…並べ替えじゃねーか」
「うん。でもさ、なんか…余るんだよね!」
「余るわけねーだろ!!」
土方くんはガタッといすを揺らして言う。
「ってか進むの早くない!?も、もうあと一問でおわりじゃん!みみみ見せてよ!」
「駄目だ。それじゃ力つかねーぞ」
そう言ってさっとプリントを裏返す。
「力がつく前に課題が終わらないよー…!」
べちょーっと机に突っ伏して呟く。
「しょーがねぇな…これ終わったら教えてやるから。ほら、顔上げろ」
「うん!よろしくお願いしまーす!」
「とりあえず、これとこれを結びつけると1つの熟語になるだろ」
「そうなの?」
「お前な…」
はー、とため息をついて土方くんは鞄から紙を引っ張り出す。
そしてがたがたとイスをあたしの横へ持ってきて、言う。
「いいか?この単語と、この単語組み合わせると…」
出してきた紙にさらさらと熟語を書いていく。
「字上手いね土方くん!」
「何をみてんだテメーは。さっさとやらねーと先帰るぞ」
「ぎゃああごめんなさい!が、頑張るから!見捨てないでー!」
そして数分後。
「あ、あと一問っ…!」
「もうちょいだ、頑張れよー」
「ううー…えーと…あ、この単語とこの前置詞ってくっつくよね?」
「ああ。わかってきてるじゃねーか」
横からあたしのプリントを覗き込んで、少しだけ笑って言う。
…今更だけどさ、結構近いんだよね。距離が。
ドキドキしてる場合じゃないって自分!いいい今は課題!英語っ!
「え、えーっと…こう、かな?」
思った答えをプリントの解答欄に書き込む。
「ん…あってるかはわかんねーけど、俺と同じ答えだな」
「じゃあきっと大丈夫だよ!うわーい!終わったぁぁー!」
あたしはそう言ってぐいーっと背筋を伸ばす。
「は教えるのも面白いな」
「へ?え、どういうこと?」
ぐいーっと伸びたままの体勢で聞き返す。
「お前は分かるとすっげー嬉しそうな顔すんだよ」
「え、だってわかると嬉しいし。土方くんの教え方もわかりやすかったよー!」
「そりゃよかった」
土方くんフッ、と薄く笑ってイスと机を元に戻す。
「…ね、土方くん、帰る方向って一緒だよね?」
「ああ」
自転車置き場で、土方くんは自分の自転車を探して返事した。
「じゃあさ、途中まで一緒に帰ろうよ」
「ああ……は!?」
ガチャガチャと鍵をさしながら返事をして、土方くんは急に振り返った。
「よ、用事があるならいいよ!どっちでもいいから!」
「いや、別になんにもねーから…いいけど」
「じゃあ、帰ろうよ?」
「…おう」
帰り道、いろいろな話をしながら自転車をこぐ。
そろそろ日が落ちてくる頃。
「あ、あたしこっちだから!」
「気をつけろよ、」
「土方くんもね。じゃ、また明日ー!」
片手をハンドルから離して手を振る。
「ああ、また明日。遅刻すんじゃねーぞー」
そう言って土方くんも小さく手を振り返す。
「わ、わかってるよー!!」
ごみ捨てじゃんけん
(あー、くそっ。こんなことで動揺してんじゃねーよ。…くそ、顔が暑い…。)
あとがき
土方さんヘタレ!沖田さんとかだったら2人の時点でがっつりなのにね!(←
それにしてもお題とズレすぎててすいません…!
2008/5/4